特定技能制度には「1号」と「2号」の2区分が存在します。一見似た名称ですが、在留期間・対象分野・家族帯同の可否・求められる技能水準など、実務上の違いは非常に大きい。特に2023年の制度改正で2号の対象分野が2分野から11分野に大幅拡大されたことで、長期就労を視野に入れた人材戦略が現実的な選択肢になりました。本記事では、1号と2号の違いを比較表付きで体系的に解説し、受入企業・登録支援機関が押さえるべき実務上の判断ポイントを整理します。

特定技能1号と2号の違い【比較表】

まずは主要な違いを一覧表で確認しましょう。

項目 特定技能1号 特定技能2号
在留期間 通算5年(上限あり) 上限なし(更新可能)
家族帯同 原則不可 可能(配偶者・子)
対象分野数 16分野 11分野
技能水準 相当程度の知識・経験 熟練した技能
日本語能力要件 日常会話レベル(N4相当) 特定の要件なし(分野による)
登録支援機関 委託義務あり(自社対応も可) 委託義務なし(任意)
転籍 転職は原則同一分野内 同一分野内で自由度高い

在留期間(通算5年 vs 無期限更新)

特定技能1号の在留期間は、特定の受入企業での勤務に関係なく特定技能1号としての通算在留期間が5年を超えることはできません。途中で転職した場合も通算でカウントされます。

一方、特定技能2号には在留期間の通算上限がありません。1回の在留期間は3年・1年・6ヶ月のいずれかですが、更新回数に制限がなく、要件を満たし続ける限り日本に在留し続けることができます。事実上の永続就労が可能であり、永住権申請への道も開かれています。

対象分野(16分野 vs 11分野)

特定技能1号の対象分野は現在16分野です。介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、鉄道、自動車運送業が対象です。

特定技能2号の対象分野は11分野です。2023年の拡大前は建設と造船・舶用工業の2分野のみでしたが、9分野が追加されました。1号の16分野すべてに2号があるわけではなく、介護分野については2号設定がない点に注意が必要です。

家族帯同(不可 vs 可能)

特定技能1号では、家族(配偶者・子)の帯同は原則として認められていません。ただし、別の在留資格(定住者・家族滞在など)を持つ家族が日本にいる場合は別途在留が可能です。

特定技能2号では、在留資格「特定技能2号」を持つ本人の配偶者および子の帯同が認められています。家族帯同の可否は、外国人材が長期就労・定住を決意する上での重要な判断要素であり、2号取得が定着促進に大きく寄与します。

日本語能力要件の違い

特定技能1号では、原則として日本語能力試験(JLPT)N4相当または日本語基礎テスト(JFT-Basic)への合格が必要です。ただし、技能実習2号または3号を修了した外国人はこの試験が免除されます。

特定技能2号には、現時点では日本語能力に関する全国統一の試験要件は設けられていません。ただし、各分野の技能評価試験に合格することが求められており、試験は実質的に高度な日本語運用能力を前提とした内容になっています。

技能水準の要件(試験内容の違い)

特定技能1号は「相当程度の知識または経験を必要とする技能」が求められます。各分野で設定された技能評価試験に合格することで証明されます。試験は分野ごとに実施機関・内容・頻度が異なります。

特定技能2号は「熟練した技能」が求められます。1号よりも高度な技能試験への合格が必要であり、試験内容は管理・監督的な業務への理解を問う問題が含まれることが多いです。分野によっては一定期間以上の実務経験も要件となっています。

特定技能2号の対象分野拡大【2023年→2026年】

2023年の拡大で11分野に(従来2→11)

2023年6月、政府は特定技能2号の対象分野を従来の2分野(建設・造船舶用工業)から9分野追加し、11分野に拡大することを閣議決定しました。追加された9分野は以下のとおりです。

  • ビルクリーニング
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

この拡大により、日本での長期就労・定住が事実上可能な在留資格の選択肢が大幅に広がりました。受入企業にとっては、1号で採用した外国人材を2号に移行させることで人材の長期定着を図る戦略が現実的になっています。

分野別の2号移行状況

2023年の分野拡大から数年が経過した現在(2026年4月時点)、各分野の2号移行状況には大きなばらつきがあります。建設・造船分野は2019年の制度開始当初から2号が設定されていたこともあり移行実績が先行しています。一方、2023年に追加された分野では、試験実施体制の整備が進みつつあるものの、実際の2号取得者数はまだ限定的な状況です。

各分野の技能評価試験の実施状況は分野所管省庁・業界団体のウェブサイトで最新情報を確認することを推奨します。試験の実施頻度・場所・費用は分野によって大きく異なります。

今後追加が見込まれる分野

現状、特定技能1号には存在するが2号が設定されていない分野として介護が残っています。介護分野については、別途「介護」の在留資格が設けられているという事情があり、特定技能2号の設定については引き続き検討が行われています。

また、2024年以降に特定技能1号の対象分野として追加された林業・木材産業・鉄道・自動車運送業についても、将来的な2号設定の可能性があります。制度の動向は定期的に確認が必要です。

1号から2号への移行ルート

移行に必要な試験と実務経験

特定技能1号から2号へ移行するためには、主に以下の要件を満たす必要があります。

  • 技能評価試験(2号試験)への合格: 各分野で設定された2号水準の試験に合格すること。1号試験よりも高度な内容で、管理・監督者としての知識が問われることが多い
  • 一定の実務経験: 分野によっては、特定の業務に従事した実務経験年数が要件となることがある
  • 在留資格変更申請: 現在の「特定技能1号」から「特定技能2号」への在留資格変更許可申請を出入国在留管理庁に提出する

なお、特定技能2号は技能実習制度からの直接移行はできません。原則として特定技能1号を経由することが必要です(育成就労からの移行ルートは2027年以降の整備状況次第)。

分野ごとの移行難易度

2号への移行難易度は分野によって大きく異なります。一般的に難易度を左右する要因は以下のとおりです。

要因 難易度が上がる条件 難易度が下がる条件
試験実施頻度 年1〜2回のみ 年複数回・随時実施
試験会場 都市部のみ・海外未実施 全国複数会場・海外でも受験可
実務経験要件 3年以上の特定業務経験必須 試験合格のみで可
試験内容 管理・監督レベルの専門知識 熟練技能の実技中心

受入企業は採用した外国人材が将来2号移行を目指す場合、入社後早い段階から試験スケジュールを確認し、OJTで必要なスキルを計画的に習得できる環境を整えることが重要です。

移行を支援する企業・機関の役割

特定技能2号への移行は、外国人材個人の努力だけでなく、受入企業・登録支援機関のサポートが大きく影響します。具体的には以下のような支援が効果的です。

  • 試験情報の定期的な共有(実施日・会場・申込方法)
  • 業務の割り当て調整(試験に必要な経験を積める業務への配置)
  • 学習費用の補助(受験料・教材費の一部負担)
  • 試験前の模擬試験・勉強会の実施
  • 在留資格変更申請の手続き支援(行政書士との連携含む)
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受入機関が知っておくべき実務上の違い

登録支援機関の関与(1号は義務、2号は任意)

特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、10項目の義務的支援を自社または登録支援機関に委託して実施する義務があります。支援計画を作成し、支援実施状況を3ヶ月ごとに出入国在留管理庁に報告することも求められます。

一方、特定技能2号の場合は義務的支援の実施義務がありません。支援計画の作成も不要であり、登録支援機関への委託も任意です。これは、2号外国人が日本社会への適応を自立して行える熟練者であるという前提に基づいています。

登録支援機関にとっては、担当する外国人材が2号に移行した場合に委託関係が終了するリスクがあります。2号移行後も自発的に関与し続けるためのサービス設計(任意の継続支援プラン等)を検討することが、顧客との長期関係維持につながります。

受入企業の支援計画の作成要否

特定技能1号では、受入企業は支援計画を作成し、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の際に提出する必要があります。支援計画には10項目の支援内容それぞれについて具体的な実施方法を記載します。

特定技能2号では支援計画の作成・提出は不要です。受入企業の事務負担は1号と比べて大幅に軽減されます。ただし、在留期間更新申請は引き続き必要であり、更新ごとに雇用契約内容の確認が行われます。

転職の自由度の違い

特定技能1号・2号ともに転職(転籍)は同一分野内であれば認められています。技能実習制度とは異なり、受入企業への「縛り」は法制度上ありません。ただし、在留資格変更が必要になる場合があり、申請から許可まで時間を要します。

実際の転職市場では、特定技能2号の取得者は希少かつ熟練度が高いため、引き合いが強くなる傾向があります。受入企業が長期的に確保するためには、処遇・キャリアパス・職場環境の継続的な改善が不可欠です。

特定技能と育成就労の接続

育成就労→特定技能1号→2号のキャリアパス

2027年4月に育成就労制度が施行されると、外国人材のキャリアパスはより明確な段階構造を持つようになります。

  • 育成就労(1〜3年): 入国し、受入企業・監理支援機関のサポートのもと特定技能1号水準の技能を習得
  • 特定技能1号(最長5年): 育成就労修了後、技能評価試験・日本語試験を経て移行。即戦力として幅広い業務に従事
  • 特定技能2号(無期限): 熟練技能の習得・2号試験合格で移行。管理・監督レベルの業務、家族帯同、永住への道

育成就労制度では、育成就労を修了した外国人が特定技能1号試験を免除される措置(技能実習2号修了者と同様の扱い)が設けられる見通しです。入口(育成就労)から出口(2号・永住)まで一貫したキャリアパスを企業が提示できるかどうかが、採用競争力を大きく左右します。

外国人材の長期定着を実現するFRMの考え方

育成就労から特定技能2号まで、外国人材との関係は最短でも8〜10年に及びます。この長期にわたる関係を「管理」ではなく「資産」として捉えるのがFRM(Foreigner Relationship Management)の考え方です。

外国人材の在留状況・技能習得の進捗・生活状況・キャリア希望——これらを継続的に把握し、適切なタイミングで次のステップ(試験申込・在留更新・2号移行申請)をサポートすることが、外国人材の長期定着と企業の人材力強化につながります。

FRMプラットフォームは、こうした制度横断・長期にわたる外国人材管理を効率化するために設計されています。在留期限アラート・定期面談の記録・試験スケジュール管理・書類の自動生成まで、担当者の負担を最小化しながら外国人材との関係を深める仕組みを提供します。

特定技能1号と2号の違いを改めてまとめます。

  • 在留期間: 1号は通算5年上限、2号は更新無期限
  • 家族帯同: 1号は原則不可、2号は可能
  • 対象分野: 1号16分野・2号11分野(介護は2号なし)
  • 登録支援機関の関与: 1号は義務的支援の実施義務あり、2号は任意
  • 2023年の2号拡大で長期就労・定着への道が現実的になった
  • 育成就労施行(2027年)で育成就労→1号→2号のキャリアパスが制度的に確立

受入企業・登録支援機関・監理支援機関のいずれの立場でも、外国人材を「1号で終わり」とするのではなく、2号移行・長期定着を見据えた関与が今後の差別化につながります。

FRM
Author
FRM Journal 編集部
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