「3年間で全員をN4と技能試験に合格させる」——育成就労制度が技能実習制度と根本的に異なるのは、この義務の重さです。技能実習では試験免除の道があり、合格しなくても在留延長ができるケースがありました。しかし育成就労では、3年間でこの2つの試験に合格しなければ特定技能への移行ができず、実質的に帰国するしかない状況になります。この変化に対応するための進捗管理の仕組み・月次チェック体制・管理ツールの選び方を、実務担当者の視点で詳しく解説します。

育成就労の根本的な変更点を理解する

技能実習との最大の違い:試験免除がなくなる

技能実習制度には「優良監理団体」「優良実習実施者」として認定を受けた場合に、試験を免除して特定技能1号へ移行できる特例措置が存在していました。これにより、実際には多くの実習生が試験なしで特定技能に移行していた実態があります。

育成就労制度では、この試験免除特例が廃止されます。「優良認定があるから試験は不要」という対応は、育成就労では通用しません。全ての育成就労外国人が3年間で以下の2つの試験に合格することが必要です。

「3年間でN4+技能試験の両方に合格」しないと特定技能に移行不可

特定技能1号への移行条件は以下の2つです。どちらか一方でも未達であれば移行できません。

  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2以上
  • 分野別技能試験(特定技能評価試験):農業・食品製造・外食・建設・介護等、受入分野ごとの試験

不合格の場合:更新不可・帰国しかない(深刻なリスク)

育成就労の在留期間(最大3年間)が終了した時点で、上記2試験のいずれかが未合格の場合、育成就労の更新は認められず、在留期間の延長も困難です。実質的には帰国するしかない状況となります。

受入企業が入国・生活支援・日本語教育に投じた費用(1名あたり数十万〜100万円以上)が、3年後の帰国によって全て無駄になるリスクがあります。このリスクを最小化するための進捗管理が、監理支援機関の最重要業務のひとつとなります。

合格しないとどうなるか(企業・監理支援機関のリスク)

育成した人材が帰国→採用コスト・教育コストの損失

3年間で育成就労外国人に投じるコストは相当なものになります。

コスト項目 1名あたりの概算
採用・送出手数料 30〜50万円
入国後研修・生活支援費 20〜30万円
日本語教育費(100時間以上) 10〜20万円
OJT・技能習得コスト(機会損失含む) 50〜100万円
合計 110〜200万円

これだけの投資をした人材が、試験不合格で3年後に帰国すれば、投資が全て回収できなくなります。10名不合格になれば、1,100万〜2,000万円の損失です。

受入企業との信頼関係の損失

「全員特定技能に移行させます」と提案して受け入れた実習生が、試験不合格で帰国することになれば、受入企業からの信頼は地に落ちます。「あの監理支援機関に任せると人材が帰国してしまう」という評判が広まれば、新規受注への悪影響は甚大です。

監理支援機関の評判・優良認定への影響

外国人育成就労機構(OTIT後継機関)は、監理支援機関の「特定技能移行率」を評価指標として注視しています。移行率が低い機関は、優良認定の取得・維持が困難になる可能性があります。優良認定は受任できる外国人数の上限に関わるため、事業規模の拡大にも直結します。

個人別進捗管理が必須になる理由

全員が同じペースで進むわけではない

入国時の日本語レベル・技能習得の速度・試験への積極性は、実習生によって大きく異なります。同時入国した5名でも、1年後には「N4試験合格済みの人」と「まだN5水準にも達していない人」が混在することがあります。

「クラス全体で授業をしていれば大丈夫」という管理では、遅れている個人を早期に発見できません。個人単位での進捗把握が、早期介入・集中対策を可能にします。

試験日程の個人差(N5→N4のステップ)

JLPTは年2回(7月・12月)実施されます。入国から3年間で受験できる機会は最大6回です。しかし、入国直後からN4を受験できるレベルの人は少なく、多くの実習生はN5→N4というステップを踏む必要があります。

入国時のレベルに応じて「いつN5を受験するか」「いつN4を受験するか」という個人別スケジュールを設計することが、合格率を高める最重要アクションです。

技能試験の種類・日程・受検タイミング

技能試験(特定技能評価試験)は分野によって試験の実施頻度・会場・難易度が異なります。

分野 試験名 実施頻度(目安) 難易度
介護 介護技能評価試験 随時(CBT方式) 中程度
農業 農業技能評価試験 年数回 中程度
食品製造 食品産業特定技能協議会試験 年数回 比較的易
建設 建設分野特定技能1号評価試験 随時(CBT方式) 高め
外食 外食業技能測定試験 随時(CBT方式) 比較的易

分野ごとに試験のスケジュール・申込方法が異なるため、担当者が各試験の情報を把握し、個人ごとの受験計画を立てることが必要です。

管理すべき5つの項目

①日本語レベル(N5→N4の進捗・模擬試験スコア)

月次または四半期ごとに模擬試験(プレテスト)を実施し、現在のレベルを数値で把握します。模擬試験のスコアをもとに「次の試験でN4合格圏内か」を判断し、集中対策の要否を決定します。

②日本語教育受講時間(100時間のうち何時間完了)

育成就労の義務(100時間の日本語教育)の進捗を個人別に管理します。100時間のうち何時間を受講済みか・残り何時間が必要かを常に把握し、計画通りに進んでいるかを確認します。

③受検スケジュール(試験日・申込期限)

JLPTは申込締切が試験の2〜3ヶ月前のため、申込期限の管理が重要です。個人ごとの受験予定試験・申込期限・受験済み結果を一元管理し、「申込み忘れ」を防ぐ仕組みが必要です。

④技能検定の種類・受検状況・合否

技能試験は分野・職種によって試験の種類が異なります。各実習生の受入れ分野・対象試験・受験予定日・合否結果を管理します。不合格の場合は再受験の計画も合わせて管理します。

⑤在留期限と試験スケジュールの整合性

在留期限の3ヶ月前までには2試験ともに合格していることが望ましいです。在留期限と試験スケジュールを照合し、「間に合わないリスクがある個人」を早期に発見することが重要です。

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