特定技能制度は、2019年4月に施行された在留資格です。深刻な人手不足が続く特定産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるために創設されました。2026年3月末時点で在留外国人数は約34万人に達し、前年比33.5%増と急拡大を続けています。

本記事では、受入企業・登録支援機関・監理団体の実務担当者が知っておくべき特定技能の全体像を、1号・2号の違い、対象16分野、受入機関の義務、申請フロー、育成就労との接続まで体系的に解説します。

特定技能とは|制度の目的と背景

2019年に創設された背景(深刻な人手不足)

特定技能は、日本の深刻な労働力不足に対応するために、入管法改正によって2019年4月に新設されました。従来の技能実習制度は「国際貢献」を名目とした制度であり、就労を主目的とした受入れを正面から認めるものではありませんでした。しかし現実には、多くの産業が外国人労働者の存在なしに成立しない状況に陥っており、政府として「即戦力の外国人材を受け入れる」制度を明示的に設ける必要が生じました。

特定技能の最大の特徴は、「人手不足を補うための就労目的の在留資格」として正面から位置付けられている点です。技能実習のように「技術移転・国際貢献」という建前は存在せず、国内の労働市場補完を制度目的として明記しています。

技能実習との根本的な違い(目的が異なる)

技能実習と特定技能は、しばしば混同されますが、制度の設計思想がまったく異なります。

比較軸 技能実習 特定技能
制度目的 技術移転・国際貢献 人手不足の補完(即戦力就労)
転籍・転職 原則不可(監理団体内も困難) 同一業務区分内で自由に可能
家族帯同 不可 1号:不可、2号:可能
在留期間 最大5年(技1号〜技3号通算) 1号:最大5年、2号:更新無制限
監督機関 監理団体(義務) 登録支援機関(委託可能)

特定技能では外国人材が同一業務区分内で自由に転職できるため、受入企業は「人材を育て、定着させる」経営努力が求められます。技能実習とは異なり、外国人材側にも選択の自由があります。

特定技能の在留外国人数の推移(約34万人、前年比+33.5%)

出入国在留管理庁の統計によると、2025年末時点で特定技能在留者数は約34万人を超え、前年同期比で33.5%増という急激な伸びを示しています。2019年の制度開始当初は数千人規模だったことを考えると、わずか6年で爆発的に普及した計算になります。

特に伸びが大きいのは飲食料品製造業、農業、介護、建設などの分野です。政府は2024年の閣議決定で、今後5年間(2025〜2029年度)の受入見込み数を最大82万人と設定しており、制度の拡大は今後も続く見通しです。

特定技能1号と2号の違い【早見表】

在留期間・家族帯同・対象分野の比較

特定技能には1号と2号の2種類があります。両者の最大の違いは「永続性」です。1号は最長5年で更新が上限に達しますが、2号は更新回数に制限がなく、実質的に長期在留・定住への道が開かれています。

比較軸 特定技能1号 特定技能2号
在留期間 1年・6ヶ月・4ヶ月(通算5年上限) 3年・1年・6ヶ月(更新無制限)
家族帯同 不可 可能(配偶者・子)
対象分野数 16分野 11分野(拡大予定)
技能水準 相当程度の知識・経験 熟練した技能(試験または技能検定1級等)
日本語要件 N4相当(試験合格) 不問(ただし実務上は高水準が必要)
支援計画 必要(10項目の義務的支援) 不要

2号は当初2分野のみを対象としていましたが、2023年の制度改正で大幅に拡大され、現在は11分野が対象となっています。今後さらなる拡大が検討されています。

詳細比較記事への案内

特定技能1号から2号への移行には、技能検定1級または技能実習3号修了等の要件を満たす必要があります。また、2号対象分野の拡大動向も実務上重要な情報です。詳細は特定技能2号の対象分野拡大に関する記事を参照してください。

対象16分野一覧と受入状況

分野別の受入人数ランキング(上位5分野)

特定技能の対象分野は現在16分野あります。2026年4月時点の対象分野は以下の通りです。

順位 分野 所管省庁 受入状況(概況)
1位 飲食料品製造業 農林水産省 最大規模。食品工場・加工場での需要が高い
2位 農業 農林水産省 季節労働の需要が高く、通年雇用への転換も
3位 介護 厚生労働省 N4要件あり。施設・訪問介護で急速に普及
4位 建設 国土交通省 建設特定技能受入計画の認定が必要
5位 外食業 農林水産省 飲食店・ファストフード等での受入が増加

上位5分野以外にも、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、宿泊、ビルクリーニング、造船・舶用工業、自動車整備、航空、漁業、林業の各分野が対象となっています。

2026年以降の受入枠拡大(123万人の閣議決定)

2024年3月の閣議決定では、2025〜2029年度の5年間における特定技能の受入見込み数として最大82万人(一部報道では最大123万人ともされる)という数値が設定されました。これは従来の計画を大幅に上回る水準です。

この拡大方針の背景には、少子高齢化による国内労働力の急速な縮小があります。政府は「外国人材との共生」を国家戦略として明確に位置付け、特定技能制度を中核的な受入ルートとして整備する方向性を打ち出しています。受入企業・支援機関にとっては、今後数年間で市場規模が大幅に拡大するビジネス環境が訪れることを意味します。

新規追加分野の動向

特定技能の対象分野は、産業界からの要望を受けて順次拡大されてきました。自動車運送業・鉄道・林業・木材産業が追加され、現在の16分野体制となっています。2026年以降も追加分野の検討が続いており、国内の人手不足状況に応じて柔軟に拡張される見通しです。受入機関・支援機関は分野別協議会の動向を定期的に確認することが求められます。

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受入機関(企業)の義務

特定技能所属機関としての届出義務

特定技能外国人を雇用する企業は「特定技能所属機関」として、出入国在留管理庁への届出が義務付けられています。雇用開始時の届出に加え、定期的な届出(四半期ごと)が必要です。

主な届出内容は以下の通りです。

  • 受入れに関する届出(受け入れ開始・終了時)
  • 定期届出(四半期ごと。ただし2026年4月以降は年1回に変更予定)
  • 特定技能外国人の行方不明に関する届出(14日以内)
  • 活動状況に係る届出(業務内容・報酬の変更等)

届出を怠ると、改善命令・許可取消・5年間の受入停止といった行政処分の対象となります。受入機関は届出管理のスケジュールを組織として把握しておく必要があります。

1号特定技能外国人への支援計画の作成

特定技能1号の外国人を受け入れる場合、受入機関は10項目の義務的支援を含む支援計画を作成・実施しなければなりません。これらの支援は自社で実施することも、登録支援機関に委託することも可能です。

10項目の義務的支援は以下の通りです。

  1. 事前ガイダンスの提供(入国前・入国後)
  2. 出入国する際の送迎
  3. 住居確保・生活に必要な契約の支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 日本語習得の機会の提供
  6. 相談・苦情への対応
  7. 日本人との交流促進に係る支援
  8. 外国人の責めに帰すべき事由によらない非自発的離職時の転職支援
  9. 定期的な面談の実施・行政機関への通報

報酬の同等以上要件と労働条件

特定技能外国人の報酬は、同等の業務に従事する日本人と同等以上でなければなりません。これは最低賃金を守るだけでは不十分で、同じ職場・業務・経験年数の日本人と比較して同等以上の報酬水準が求められるということです。

給与の低さを理由に外国人材を採用しようとする場合、この要件を満たせず受入れができないケースがあります。受入機関は採用計画の段階で、既存の日本人従業員の給与実態との整合性を確認する必要があります。

受入困難時の届出と転職支援義務

業績悪化等により特定技能外国人の雇用を継続できなくなった場合、受入機関は転職支援を行う義務があります。具体的には、求職活動に必要な書類の作成支援、関係機関への情報提供・相談、求人企業の紹介などが含まれます。

転職支援が不十分だと判断された場合、改善命令の対象となることがあります。「辞めさせて終わり」ではなく、次の就職先が見つかるまでの支援責任があることを理解しておく必要があります。

登録支援機関の役割

義務的支援10項目の概要

登録支援機関は、受入機関から委託を受けて特定技能1号外国人への支援を代行します。受入機関が自社内で10項目の支援を完結できない場合、登録支援機関への全部委託が選択肢となります。

登録支援機関に全部委託した場合、受入機関は在留資格上の直接的な支援実施義務を免れますが、責任は引き続き受入機関にある点に注意が必要です。委託先の支援が不十分であっても、最終的な行政上の責任は受入機関が負います。

委託と自社支援の選択

受入機関が支援を内製化するか、登録支援機関に委託するかは、受入人数・体制・コストなどを総合的に判断して決めます。一般的に、受入人数が少ない(5名以下程度)の企業は登録支援機関への委託が効率的です。一方、100名以上を受け入れる大企業では内製化の方がコスト優位になるケースもあります。

近年は登録支援機関が多様なサービスを展開しており、多言語対応・相談対応・書類作成の代行まで一括で提供する機関も増えています。

登録支援機関とはの記事への案内

登録支援機関の選び方・費用相場・委託契約の注意点については、登録支援機関とは?の詳細解説記事をご参照ください。また、特定技能と監理団体の関係性については特定技能と監理団体の関係解説記事も参考になります。

在留資格「特定技能」の申請フロー

海外から呼び寄せる場合(在留資格認定証明書)

海外在住の外国人を特定技能として受け入れる場合、日本の入管(地方出入国在留管理局)に在留資格認定証明書の交付を申請します。申請は受入機関または代理人(行政書士等)が行い、外国人本人は本国にいたまま手続きを進めます。

主な流れは以下の通りです。

  1. 技能試験・日本語試験への合格(または技能実習2号修了)
  2. 雇用契約の締結
  3. 支援計画の作成(または登録支援機関との委託契約締結)
  4. 在留資格認定証明書の申請(出入国在留管理庁へ)
  5. 認定証明書の受領・外国人への郵送
  6. 査証(ビザ)の申請(現地日本大使館等)
  7. 来日・上陸許可

審査期間は申請から1〜3ヶ月程度が目安ですが、書類不備があると大幅に延びることがあります。事前に必要書類を漏れなく準備することが重要です。

国内で変更する場合(技能実習→特定技能)

技能実習を修了した外国人が引き続き同一企業または別企業で就労する場合、在留資格を「特定技能」に変更することができます。技能実習2号を良好に修了した場合、技能試験・日本語試験が免除されるため、移行手続きが簡略化されます。

在留資格変更許可申請の主な必要書類は次の通りです。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 特定技能雇用契約書の写し
  • 特定技能外国人の支援計画書
  • 技能実習修了証明書(免除の場合)
  • 受入機関・登録支援機関の各種証明書類
  • 住民票、パスポート等身分証明書類

必要書類と審査期間の目安

審査期間は申請の混雑状況によって異なりますが、在留資格変更許可申請の場合は2週間〜2ヶ月程度が目安です。技能実習からの移行の場合、既存の実習修了という実績があるため比較的スムーズに進むことが多いです。

なお、申請はオンラインで行う「在留申請オンラインシステム」の利用も可能になっており、書類を窓口に持参する手間が省けます。ただし、オンライン申請には利用登録が必要です。

特定技能の今後——育成就労との接続

育成就労→特定技能1号→2号の接続設計

2027年4月に施行される育成就労制度は、技能実習に代わる新たな在留資格です。育成就労は特定技能1号への移行を前提とした設計になっており、最長3年間の育成就労を経て特定技能1号に移行し、さらに2号へとステップアップするというキャリアパスが想定されています。

この3段階の接続設計により、外国人材が日本で長期的に活躍するためのキャリアルートが制度的に整備されることになります。受入企業・支援機関にとっては、「3年間で帰国させる」ではなく「10年・15年と長期雇用する」前提での人材戦略が問われる時代が到来します。

「使い捨て」から「育てて定着」へのパラダイムシフト

技能実習時代の「安価な労働力として3年間使って送り返す」という発想は、育成就労・特定技能の時代には通用しなくなります。外国人材が転籍・転職の自由を持ち、育成就労から特定技能、さらに永住権取得まで見通せる環境が整備されることで、企業間で外国人材の「争奪戦」が起きることが予想されます。

この変化に対応するためには、外国人材との長期的な関係を「資産」として管理・育成するFRM(Foreigner Relationship Management)の視点が不可欠です。特定技能制度を理解することは、こうした新しい人材戦略の出発点となります。

FRM
Author
FRM Journal 編集部
外国人材マネジメントの専門家チーム
監理団体・登録支援機関・特定技能・育成就労の実務を専門とする編集チームです。外国人材マネジメント(FRM)の視点で、経営者・担当者がすぐに使える情報を発信しています。
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