【2026年6月時点】この記事の前提

  • 育成就労制度の施行日は令和9年(2027年)4月1日で正式決定しています。技能実習制度はこれに伴い廃止されます。
  • 本記事は、外国人材の受け入れを検討する企業(受入機関)の視点で、育成就労のメリットとデメリットを技能実習と比較しながら整理したものです。
  • 制度の細部(分野別の転籍制限期間や手数料上限など)は、政省令・分野別運用方針で順次具体化されています。本記事では2026年6月時点で確定している情報を中心に扱い、未確定の運用細目についてはその旨を明記します。

出典:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度の概要」等の公表資料

「育成就労になると、結局うちの会社にとって得なのか損なのか」——外国人材の受け入れを検討する企業の担当者が、まず知りたいのはこの一点ではないでしょうか。2027年4月に施行される育成就労制度は、技能実習制度を置き換える新しい仕組みです。人材確保や定着の面で大きなメリットがある一方、転籍リスクや教育負担といった留意点も伴います。本記事では、受け入れを検討する企業の判断材料として、育成就労のメリット・デメリットを技能実習との比較で整理します。

育成就労制度の位置づけ|技能実習からの転換を企業目線で理解する

育成就労制度とは、外国人材の育成と日本の労働力確保を両立させることを目的とした、新しい在留資格制度です。2027年4月1日に施行され、現行の技能実習制度を全面的に置き換えます。

これまでの技能実習制度は、建前として「技術移転・国際貢献」を掲げていました。しかし実態は人手不足を補う労働力として機能しており、その乖離が長年問題視されてきました。育成就労は、「人材の育成」と「労働力の確保」を正面から目的として認めた制度であり、外国人材を権利主体として扱う法的な土台が整います。

企業にとって重要なのは、育成就労が「特定技能1号への移行を前提としたステップアップ型」に設計されている点です。育成就労(原則3年)で基礎を育て、試験合格を経て特定技能へ移行すれば、長期にわたって戦力として働いてもらえる道が開けます。一方で、技能実習にはなかった「本人の意向による転籍」が一定要件のもとで認められるため、定着への取り組みがこれまで以上に重要になります。

制度の全体像をまず押さえたい方は、育成就労制度とは?技能実習との違い・対象分野・施行スケジュールを、3制度の関係を整理したい方は技能実習・特定技能・育成就労の違いを、あわせてご覧ください。

育成就労を活用する5つのメリット

育成就労は、技能実習が抱えていた構造的な問題を是正しつつ、企業が中長期で人材を育てやすい設計になっています。受け入れ企業の視点で主なメリットを5つに整理します。

メリット1: 人手不足分野で計画的に人材を確保できる

育成就労の対象は、特定技能制度と原則一致する分野に設定されています。介護・建設・農業・飲食料品製造業・工業製品製造業など、深刻な人手不足に直面する分野が中心です。これらの分野では国内の採用が難しいケースが多く、育成就労は計画的に外国人材を確保する有力な選択肢になります。新卒・中途の採用が思うように進まない企業にとって、安定した人材供給ルートを持てる意義は大きいといえます。

メリット2: 3年間かけて長期的に育成・定着を図れる

育成就労は、入国後の講習を含めて段階的に技能と日本語能力を伸ばす設計です。企業は3年という期間をかけて、自社の業務に合わせた育成計画を立てられます。即戦力の確保だけでなく、自社の現場で一から育てた人材が長く働いてくれることは、現場の安定や技術の継承につながります。技能実習でも育成は行われていましたが、育成就労では「育成」が制度の正面の目的となるため、計画的な人材育成がより明確に位置づけられます。

メリット3: 特定技能への移行でキャリアパスを提示できる

育成就労の最大の特徴は、特定技能1号への移行を前提としている点です。育成就労の修了と所定の試験合格を経て特定技能1号へ移行すれば、さらに最長5年の就労が可能になり、分野によっては特定技能2号への道も開けます。企業は採用時に「育成就労から特定技能へ、長く活躍できるキャリアパス」を提示でき、これは外国人材にとって大きな魅力となります。明確な将来像を示せることは、後述する定着(転籍防止)にも直結します。詳しくは育成就労で外国人を受け入れるには|企業向け始め方ガイドで解説しています。

メリット4: 分野が特定技能と整合し、受け入れ計画が立てやすい

技能実習では約90職種・約170作業に細分化されており、自社の業務がどの職種に当たるか判断が難しい面がありました。育成就労では特定技能と連動した分野単位に整理されるため、育成就労から特定技能まで一貫した受け入れ計画を立てやすくなります。分野が共通していることで、移行時の手続きや教育の連続性も確保しやすくなります。

メリット5: 制度の透明性が高く、適正運用しやすい

育成就労では、送出機関の手数料に上限規制を設けるなど、外国人材の過度な負担を防ぐ仕組みが導入されます。監理を担う機関の許可要件も厳格化され、外部監査人の関与も強化される方向です。これらは企業にとって一見ハードルにも見えますが、制度全体の透明性が高まることで、適正に運用する企業ほど評価されやすい環境が整います。トラブルやコンプライアンス上のリスクを抑えやすくなる点は、長期的に見て企業のメリットといえます。

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育成就労の5つのデメリット・留意点

メリットの一方で、育成就労には技能実習にはなかった新しい負担やリスクも伴います。受け入れを判断する前に、次の5点を必ず押さえておきましょう。

デメリット1: 転籍による人材流出リスク

育成就労で企業が最も気にする点が、転籍(本人の意向による転職)の解禁です。技能実習では原則として転籍が認められていなかったのに対し、育成就労では一定の要件を満たせば、本人の意向で同一分野内の他社へ移ることが可能になります。せっかく時間と費用をかけて育てた人材が、より条件の良い企業へ移ってしまうリスクが生じます。

ただし、転籍は無条件ではありません。同一の受入機関で分野ごとに定める一定期間(1年以上2年以下の範囲で設定)を超えて就労していること、技能・日本語能力が一定水準に達していること、転籍先が同一の業務区分内であることなどが条件です。とはいえ、賃金や職場環境で他社に見劣りすれば流出につながるため、定着のための取り組みが欠かせません。要件の詳細は育成就労の転籍ルール完全ガイドをご参照ください。

デメリット2: 日本語要件への対応と教育負担

育成就労では、就労開始前までにN5相当以上の日本語能力(日本語能力試験N5など)を試験合格または相当する講習で満たすことが求められ、さらに入国後の講習で100時間以上の日本語教育を受けることが必要とされています。技能実習では介護など一部を除き制度横断の日本語要件が限定的だったため、企業にとっては新たな対応事項です。教育時間の確保や費用の負担、教材・講師の手配など、受け入れ前から準備すべきことが増えます。

デメリット3: 受け入れにかかるコストの増加

日本語教育の義務化に加え、生活支援や定着のための取り組みなど、技能実習と比べて受け入れにかかる総コストは増える傾向にあります。送出機関の手数料に上限が設けられる分、入国費用の一部を企業側が負担するよう求められるケースも想定されます。コストの内訳は分野や送出国、監理を担う機関によって幅がありますが、採用単価だけでなく、教育・生活支援を含めた総額で見積もることが重要です。費用の考え方は育成就労の受け入れ費用|企業の総負担額を内訳で解説で整理しています。

デメリット4: 制度移行期の不確実性

育成就労は2027年4月施行の新制度であり、分野別の転籍制限期間や手数料の上限、各種運用の細部は政省令・分野別運用方針で順次具体化されている段階です。施行直後は実務の運用が固まりきっていない部分も残ると見込まれます。最新の公表情報を継続的に確認し、確定した事項に沿って準備を進める姿勢が求められます。本記事を含め、未確定の事項を「決まったこと」として扱わないよう注意してください。

デメリット5: 受け入れ体制の整備負担

育成就労を適正に運用するには、育成計画の作成、在留期限の管理、定期的な面談や相談対応、日本語教育や生活支援の体制づくりなど、社内の受け入れ体制を整える負担が生じます。担当者の確保や記録管理の仕組みが不十分だと、更新漏れや支援不足といったトラブルにつながりかねません。特に初めて外国人材を受け入れる企業は、監理を担う機関と連携しながら、無理のない体制を段階的に整えることが大切です。

技能実習と比べた変化の一覧|メリットとデメリットの対比

育成就労が技能実習からどう変わるのかを、企業にとってのメリット・デメリットの両面から一覧で整理します。同じ変化でも、見方によって利点にも留意点にもなり得る点に注目してください。

項目 技能実習 育成就労 企業から見た位置づけ
制度の目的 技術移転・国際貢献(建前) 人材育成と労働力確保(明記) メリット:実態に合い適正運用しやすい
転籍 原則不可 条件付きで可能(本人の意向) デメリット:人材流出リスク
在留・就労の見通し 最長5年で帰国が基本 特定技能へ移行し長期就労へ メリット:キャリアパスを提示できる
対象分野 約90職種・約170作業 特定技能と連動した17分野 メリット:受け入れ計画を立てやすい
日本語要件 限定的(一部職種を除く) 就労開始前にN5相当+入国後講習100時間以上 デメリット:教育の負担とコスト増
受け入れ体制 監理団体に依存しやすい 育成計画・支援体制の整備が必要 デメリット:社内体制の整備負担
費用の透明性 送出手数料の規制なし 手数料に上限規制を導入 メリット:トラブルを抑えやすい

こうして並べると、育成就労のメリットとデメリットは「外国人材を権利主体として扱い、長く育てて定着させる」という制度の方向性から表裏一体で生じていることがわかります。制度の課題やリスクをより深く知りたい方は、育成就労制度の課題と問題点もあわせてご覧ください。

デメリットへの備え方|3つの考え方

育成就労のデメリットは、事前の備えによって相当程度コントロールできます。ここでは「転籍」「教育負担」「コスト」の3つの留意点に対する基本的な考え方を示します。具体的な金額や手法は分野・地域によって異なるため、考え方のベースとして参考にしてください。

転籍対策は「選ばれ続ける職場づくり」で考える

転籍リスクへの最も本質的な対策は、外国人材から「ここで働き続けたい」と思われる職場をつくることです。賃金水準を同業他社と比べて見劣りしない範囲に保つ、キャリアパスを明確に提示する、生活面の不安に寄り添う相談体制を整える——こうした取り組みが定着率を高め、結果として転籍を抑えます。転籍は「防ぐもの」というより「選ばれ続けることで起きにくくするもの」と捉えると、対策の方向性が見えてきます。

教育負担は「仕組み化と外部活用」で軽くする

日本語教育や生活支援を担当者の個人的な努力に任せると、負担が一部の人に偏り、品質も安定しません。オンライン日本語学習サービスの活用、監理を担う機関が提供する集合型教育の利用、教育記録のデジタル管理など、仕組みとして整えることで負担を平準化できます。自社だけで抱え込まず、外部の支援を組み合わせる発想が、持続的な受け入れの鍵になります。

コストは「総額での適正管理」で見える化する

育成就労のコストは、採用単価だけでなく、教育費・生活支援費・在留管理にかかる手間まで含めて総額で把握することが出発点です。費用の内訳を見える化すれば、どこに無駄があり、どこに投資すべきかが判断できます。安さだけで送出機関や支援先を選ぶのではなく、定着率や支援の質まで含めた総合的なコストパフォーマンスで考えることが、長期的な負担の軽減につながります。受け入れ費用の内訳は育成就労の受け入れ費用で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

育成就労は技能実習より企業にとって不利になるのですか?

一概に不利とはいえません。転籍が認められる点は人材流出のリスクですが、その分「選ばれる職場づくり」を進めれば定着率の高い受け入れが可能になります。また特定技能への移行を前提とした長期就労の道が開け、計画的な人材確保・育成がしやすくなる点はメリットです。デメリットを備えで抑え、メリットを活かせるかどうかが、有利・不利の分かれ目になります。

転籍で人材が流出しないか心配です。何ができますか?

転籍は要件を満たした場合に本人の意向で可能になりますが、無条件ではありません。企業ができる対策は、競争力のある賃金水準、明確なキャリアパスの提示、日本語教育や生活支援の充実、定期的な面談による不安の解消です。これらは定着率を高め、結果的に転籍を起こりにくくします。詳しくは育成就労の転籍ルールをご覧ください。

日本語教育はどの程度の負担になりますか?

育成就労では、就労開始前までにN5相当以上の日本語能力と、入国後の講習で100時間以上の日本語教育が求められます。費用や手間の規模は、オンラインサービスの活用か通学支援か社内講師かなど、方法によって幅があります。自社だけで抱えず、監理を担う機関や外部サービスを組み合わせて仕組み化することで、負担を平準化できます。

初めて外国人材を受け入れる中小企業でも対応できますか?

可能です。ただし育成計画の作成や在留期限の管理、支援体制の整備など、準備すべき事項は技能実習より増えます。監理を担う機関と連携し、自社の体制を段階的に整えることが現実的です。受け入れの流れや条件は育成就労で外国人を受け入れるには|企業向け始め方ガイドで全体像を確認できます。

いつから準備を始めるべきですか?

育成就労の施行は2027年4月ですが、2026年のうちに情報収集と体制づくりを始めることが適切です。受け入れ分野が育成就労の対象に含まれるかの確認、日本語教育や生活支援の方針づくり、社内の担当体制の整備などは、施行を待たずに着手できます。早く準備するほど、施行時にスムーズに動けます。

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FRM Journal 編集部
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