【はじめに】本記事の費用はすべて「目安」です
- 育成就労制度は2027年(令和9年)4月1日施行です。受け入れに伴う費用の実額は、制度の運用が本格化するなかで明確になっていく項目が多く、本記事の金額は技能実習制度での実績や公表されている相場観をもとにした目安です。
- 費用は監理支援機関・受入分野・送出国・地域・人数・住居条件などによって大きく変動します。確定額は、契約する監理支援機関や送出機関の見積りでご確認ください。
- 送出機関に外国人材が支払う費用には、二国間取決めによる上限規制が導入されます。具体的な上限額や運用の詳細は、各国との取決め・分野別の運用に従って定まります。
出典:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度」関連の公表資料、OTIT(外国人技能実習機構)公表資料を基に編集部が整理。
「育成就労で外国人を受け入れたいが、結局いくらかかるのか分からない」——これは受入企業の担当者から最も多く寄せられる疑問です。費用というと監理団体に払う「監理費(育成就労では監理支援費)」だけを思い浮かべがちですが、実際に企業が負担する金額はそれだけではありません。送出機関への費用、渡航費、住居の準備、日本語教育、在留手続き、そして毎月の給与・社会保険まで、複数の項目が積み重なって「受け入れの総コスト」になります。
本記事では、育成就労で外国人材を1人受け入れたときに企業が負担する費用の全体像を、「初期費用」と「毎月の費用」に分けて内訳で整理します。監理支援費そのものの原価構造(何にいくらかかっているのか)の深掘りは、別記事の技能実習の監理費はいくらが適正?原価構造と料金設定の考え方に譲り、本記事は受入企業が払う総額に焦点を当てます。なお、金額はすべて税抜の概算目安であり、確定額ではありません(税込・税抜の別や最終的な金額は、各機関の見積条件によって異なります)。
育成就労の受け入れ費用は「初期費用」と「毎月の費用」に分かれる
受け入れにかかるお金は、大きく2種類に分けて考えると整理しやすくなります。1つは受け入れ開始時に一度だけ発生する「初期費用」、もう1つは就労が続くあいだ毎月発生する「ランニング費用」です。さらに、給与のように「外国人材本人に支払う人件費」と、監理支援費や住居費のように「受け入れ体制を維持するための費用」も区別すると、自社の負担構造が見えやすくなります。
まず全体像を表で確認しましょう。下表の金額は1人あたりの目安(幅)であり、団体・分野・送出国・地域によって変動します。
| 区分 | 主な費用項目 | 1人あたりの目安 |
|---|---|---|
| 初期費用 (受け入れ開始時) |
送出機関費用・入国前後の手続き・渡航費・在留手続き | 20万〜60万円程度 |
| 住居の初期費用・入国後講習・日本語教育の立ち上げ など | 10万〜40万円程度 | |
| 毎月の費用 (ランニング) |
監理支援費(監理支援機関への支払い) | 月3万〜5万円程度 |
| 給与・社会保険・住居・生活支援・通訳支援 など | 給与は地域別最低賃金以上+諸費用 |
※上表は技能実習制度での実績や一般に公表されている相場観をもとにした目安です。育成就労では日本語教育・転籍対応など増える業務があるため、項目によっては上振れする可能性があります。実額は監理支援機関・送出機関の見積りでご確認ください。
ポイントは、初期費用は「採用の入口で一度かかる投資」、毎月の費用は「雇用が続く限り続く固定費」という性質の違いです。初期費用は1人あたり数十万円規模になりますが、毎月の費用は長期にわたって積み上がるため、総額で見ると後者の影響が大きくなります。以下、それぞれの内訳を見ていきます。
初期費用の内訳
初期費用は、外国人材が母国で選考・教育を受けてから日本で就労を始めるまでの「準備フェーズ」に発生する費用です。主に、送出機関への費用、入国前後の手続き、渡航、住居の立ち上げ、入国後の日本語教育に分かれます。
送出機関費用・入国前後の手続き
外国人材は、母国の送出機関を通じて日本での就労にエントリーします。この送出機関に対する費用(募集・選考・出国前教育・各種手続きの代行など)が、初期費用の中でも大きな割合を占めます。技能実習制度では送出機関への手数料に明確な上限がなく、外国人材本人が多額の借金を背負って来日する問題が長く指摘されてきました。
育成就労では、この点を是正するため二国間取決めによる手数料の上限規制が導入されます。外国人材本人の過剰な負担を防ぐ一方で、これまで本人負担とされていた費用の一部を受入企業側が負担するケースが増えると見込まれています。入国費用をめぐるルールやブローカー対策の論点は育成就労制度の課題と問題点(入国費用リスクを含む)で詳しく解説しています。送出機関費用の目安は1人あたり数万〜数十万円と幅が大きく、送出国・送出機関によって大きく異なります。
あわせて、在留資格認定証明書の交付申請やビザ取得など入国に関わる手続き費用が発生します。行政書士などに手続きを依頼する場合は、その報酬も加算されます。手続き費用は1人あたり数万円程度が目安です。
渡航費・住居の初期費用
来日にかかる渡航費(航空券など)は、送出国や時期によって変動しますが、片道で数万〜十数万円程度が目安です。受入企業と外国人材のどちらが負担するか、あるいは折半とするかは契約条件によって異なります。
住居については、外国人材の生活拠点を用意する必要があります。社員寮を活用する場合と、賃貸住宅を新たに借り上げる場合とで初期費用は変わります。賃貸を借り上げる場合は、敷金・礼金・仲介手数料・初期の家具家電(寝具・冷蔵庫・洗濯機など)がまとめて発生します。住居の初期費用は1人あたり10万〜30万円程度が目安ですが、複数名を1部屋でシェアするか個室にするか、地域の家賃水準がどうかによって大きく変わります。
入国後講習・日本語教育の初期費用
育成就労では、就労開始前までにN5相当以上の日本語能力(試験合格または相当する講習の受講)を満たすことが求められ、さらに入国後の講習で100時間以上の日本語教育を受けることが求められます。技能実習でも入国後講習はありましたが、育成就労では日本語要件が制度として明確に強化される点が大きな違いです。
入国後講習・日本語教育の初期費用は、自社で行うか外部委託するか、オンラインを活用するかで大きく変わります。一般的な目安は以下のとおりです。
| 日本語教育の方法 | 1人あたりの費用目安 |
|---|---|
| オンライン日本語学習サービスの活用 | 3万〜10万円程度 |
| 語学学校・外部講習機関への委託 | 10万〜30万円程度 |
| 社内に専任講師を確保(複数名で按分) | 体制により変動(固定費) |
※費用は提供形態・時間数・人数によって変動します。日本語要件の詳細は育成就労の日本語要件をご参照ください。複数名をまとめて教育する場合、1人あたりの単価は下がる傾向があります。
毎月かかる費用の内訳
就労が始まると、毎月のランニング費用が発生します。中心は外国人材本人に支払う給与と、受け入れ体制を維持するための監理支援費、そして住居・生活支援などの諸費用です。
監理支援費(監理支援機関への支払い)
育成就労では、現行の「監理団体」が「監理支援機関」へ移行し、企業が支払う費用も「監理支援費」と呼ばれます。育成就労はまだ実績相場が形成されていないため、技能実習の監理費相場や現行の支援費用を参考にすると、外国人材1人あたり月3万〜5万円程度(税抜)を目安に置くケースがあります。実際の金額は分野・地域・支援内容によって変動します。育成就労では外部監査人の費用や転籍対応など増える業務があり、料金体系が見直される可能性があります。
監理支援費には、定期的な巡回・面談、行政への報告、相談対応、各種手続きの支援などが含まれます。育成就労では監理支援費について実費原則や料金表の公表が求められる方向にあり、「何にいくらかかっているか」の透明性が高まるのが特徴です。監理支援費そのものの中身や相場の考え方は、監理支援費とは?技能実習の監理費との違いで詳しく整理しています。
給与・社会保険
最も大きな毎月の費用は、外国人材本人に支払う給与です。育成就労では、日本人と同等以上の報酬が求められ、当然ながら勤務地の地域別最低賃金以上を支払う必要があります。給与水準は職種・地域・経験によって異なります。
給与に加えて、企業は社会保険料(健康保険・厚生年金)・労働保険料の事業主負担分を負担します。これは日本人従業員と同じ扱いで、給与額に応じて発生します。給与と社会保険は外国人材の生活と定着に直結する費用であり、「コスト」というより「適正な雇用条件への投資」と捉えるのが実態に近いといえます。
住居・生活支援・通訳支援
住居を企業が借り上げて提供する場合、毎月の家賃が発生します。家賃の一部を外国人材本人が負担する形にするか、企業が福利厚生として補助するかは運用によって異なります。
このほか、生活オリエンテーション、行政手続きの同行、母国語での相談対応など生活支援・通訳支援にも費用がかかります。これらは監理支援費に含まれる場合と、別途実費が発生する場合があります。トラブル時の通訳対応や、転籍に関する相談など、育成就労では支援の重要性が増すため、「見えにくいが確実に発生する費用」として見込んでおくことが大切です。
技能実習と比べて費用はどう変わるか
「技能実習より高くなるのか」は、受入企業が最も気にする点です。結論から言えば、制度の枠組みが変わることで増える項目・見直される項目があり、トータルでは技能実習よりやや高くなる可能性が指摘されています。ただし、その分だけ外国人材の定着や適正な受け入れにつながる側面もあります。主な変化を整理します。
| 費用項目 | 変化の方向 | 背景 |
|---|---|---|
| 監理支援費 | 見直し・上昇の可能性 | 外部監査人の義務化、転籍対応など監理支援機関の業務が増える |
| 日本語教育費 | 増える | 就労開始前のN5相当+入国後講習100時間以上が制度として強化される |
| 送出機関費用 | 透明化・企業負担化の可能性 | 二国間取決めで本人負担に上限が設けられ、一部が企業負担へ移る |
| 給与 | 適正化(上昇傾向) | 転籍が可能になるため、定着には競争力ある賃金が求められる |
特に注目すべきは転籍制度の影響です。技能実習では原則として転籍ができませんでしたが、育成就労では一定の要件を満たせば本人の意向による転籍が認められます。これは「採用してもすぐ辞めてしまうのでは」という不安にもつながりますが、見方を変えれば賃金や職場環境を適正に保つことが定着の前提になるということです。日本語教育や生活支援を充実させ、長く働きたいと思える環境を整えることが、結果として採用コストの無駄を防ぎます。育成就労と技能実習の違いの全体像は育成就労制度とはで、監理支援機関の役割は監理支援機関とはで解説しています。
費用を適正にコントロールする考え方
費用を「安く抑える」ことだけを目的にすると、外国人材の定着が悪化し、かえって採用コストが膨らむことがあります。ここでは、断定的な節約術ではなく、費用を適正な水準に保つための考え方を紹介します。
複数の見積りを比較する
監理支援費も送出機関費用も、団体・機関によって金額と支援内容に幅があります。1社だけで決めず、複数の監理支援機関から見積りを取り、「金額」と「支援の中身」を並べて比較することが基本です。安いだけで支援が手薄だと、トラブル対応や手続きの遅れで結局コストがかさみます。逆に高くても、巡回・相談・手続き代行が手厚ければ、自社の負担が減る分だけ合理的なこともあります。
監理支援費の「内訳」を確認する
育成就労では監理支援費の実費原則・料金表公表が求められる方向にあるため、「何にいくらかかっているか」を確認しやすくなります。提示された監理支援費が、どの業務(巡回・面談・報告・相談・手続き)に対応するものなのかを確認し、自社にとって必要な支援かどうかを見極めましょう。原価構造の読み解き方は監理費の原価構造の解説記事が参考になります。
管理業務のデジタル化でコストを抑える
受け入れ費用には、見積書に載らない「自社の管理工数」も含まれます。在留期限の管理、面談記録、日本語教育の進捗、各種手続きの期限管理などをExcelや紙で行うと、担当者の時間が奪われ、更新漏れのリスクも生じます。これらを一元管理できる仕組みを導入することで、管理にかかる人件費と漏れによる手戻りを減らせます。費用の総額を考えるときは、目に見える支払額だけでなく、こうした社内の管理コストもあわせて見直すことが、適正なコントロールにつながります。受け入れ全体の進め方は育成就労の企業受け入れガイドもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
育成就労の受け入れ費用は総額でいくらかかりますか?
初期費用が1人あたり30万〜100万円程度、毎月の費用として監理支援費が月3万〜5万円程度に加え、給与・社会保険・住居などが発生する、というのが一般的な目安です。ただし、これは技能実習での実績や相場観に基づく目安であり、分野・送出国・地域・住居条件・人数によって大きく変動します。確定額は契約する監理支援機関・送出機関の見積りでご確認ください。本記事の金額は確定事実ではなく、あくまで概算の参考値です。
技能実習より費用は高くなりますか?
育成就労では、日本語教育の強化(入国後講習100時間以上など)、外部監査人の義務化に伴う監理支援機関の業務増、転籍を前提とした賃金の適正化などにより、項目によっては費用が上振れする可能性が指摘されています。一方で、送出機関費用の透明化や定着率の改善といったプラスの側面もあります。「単純に高くなる」というより、適正な受け入れに必要なコストが見える化されると捉えるのが実態に近いといえます。
受け入れ費用に使える補助金はありますか?
外国人材の受け入れや人材育成に関しては、国や自治体が時期によって各種の助成・補助制度を設けている場合があります。ただし、育成就労制度に特化した補助金の有無や内容は時期・自治体・要件によって異なり、本記事執筆時点で一律にご案内できるものではありません。最新の情報は、厚生労働省・各自治体・所管の窓口でご確認ください。補助金ありきで受け入れ計画を立てるのは避け、補助は「使えれば加算」程度に見ておくことをおすすめします。
送出機関への費用は誰が負担しますか?
従来は外国人材本人の負担が中心でしたが、育成就労では二国間取決めにより本人負担に上限規制が導入されます。その結果、これまで本人が負担していた費用の一部を受入企業側が負担するケースが増えると見込まれています。負担の割合は送出国・送出機関・契約条件によって異なるため、採用コスト全体を早めに把握しておくことが重要です。詳しくは育成就労制度の課題と問題点(入国費用リスクを含む)をご参照ください。
監理支援費を安く抑えるにはどうすればよいですか?
複数の監理支援機関から見積りを取り、金額だけでなく支援の中身(巡回・面談・報告・手続き代行など)を比較することが基本です。安さだけで選ぶと支援が手薄になり、トラブル対応や手続きの遅れで結局コストがかさむことがあります。あわせて、在留期限管理や記録業務をデジタル化して自社の管理工数を減らすことも、総コストを抑える有効なアプローチです。
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