2027年4月に施行が予定されている育成就労制度では、監理団体が徴収してきた「監理費」に代わり、監理支援機関が徴収する「監理支援費」の枠組みが適用されます。費目の構成は技能実習の監理費をほぼ踏襲する一方、料金表のインターネット公表義務化など、料金体系の設計に直結する変更点が含まれています。

本記事では、育成就労制度運用要領 第5章第5節などの一次情報に基づいて監理支援費のルールを整理した上で、監理団体・監理支援機関の運営者が自団体の料金体系をどう再設計するか、その論点を解説します。なお、本記事は執筆時点で公表されている情報に基づいており、未公表・未確定の事項は断定せず「公表され次第更新」と明記しています。

監理支援費の法的位置づけ──「手数料・報酬の受領禁止」の例外

出発点は育成就労法第28条です。第1項は、監理支援機関が監理支援事業に関して、監理型育成就労実施者等や監理型育成就労外国人等その他の関係者から、いかなる名義でも手数料または報酬を受けてはならないと定めています。

その例外が第2項の「監理支援費」です。主務省令で定める適正な種類および額の監理支援費に限り、用途および金額をあらかじめ明示した上で、監理型育成就労実施者等から徴収することができます。ここで重要なのは次の2点です。

  • 徴収できる相手方は受入企業(監理型育成就労実施者等)側のみです。育成就労外国人への負担転嫁は、直接・間接を問わず禁止されています。
  • さらに、「監理支援費として徴収される費用を直接または間接に育成就労外国人に負担させないこと」は、受入企業側の育成就労計画認定の待遇要件(監理型)にも組み込まれています。料金設計の誤りが、自団体だけでなく傘下企業の計画認定にも波及し得る構造です。認定基準の全体像は育成就労計画の認定申請の解説記事をご覧ください。

また、運用要領は法第28条第1項に関連して、送出機関からの送出管理費の不必要な払戻し(いわゆるキックバック)、無償・安価な事業所提供などの金銭以外の便宜、社会通念上相当な範囲を超える供応接待(役職員個人としての受領を含む)も同項違反となり得ると明記しています。送出機関等への金銭等の要求・申込みの承諾も施行規則第67条第7号で禁止されています。収益構造をつくる際、この境界線は最初に押さえておくべきポイントです。

出典: 育成就労制度運用要領 第5章第5節(出入国在留管理庁) / 育成就労制度の関係省令等について(概略図)

監理支援費の4区分と徴収時点──構成は技能実習の監理費と同一

育成就労法施行規則第56条により、監理支援費の種類は「職業紹介費」「講習費」「監査指導費」「その他諸経費」の4区分と定められています。これは技能実習の監理費(技能実習法施行規則第39条)と同一の構成です。いずれも「実費に限る」額を超えない範囲でしか徴収できず、実費原則は育成就労でも維持されます。徴収できる時点も種類ごとに規定されています。

費目主な範囲徴収できる時点
職業紹介費募集・選抜の人件費・交通費、外国の送出機関へ支払う費用(送出管理費等)、入国前講習に該当しない日本語学習・生活指導等の事前講習費用、健康診断費用求人申込みの受理時以降
講習費入国前講習・入国後講習に要する費用入国前・入国後講習の各開始日以降
監査指導費名称のとおり監査・指導に係る実費(具体的な範囲は運用要領をご確認ください)業務従事の開始以降、一定期間ごと
その他諸経費監理支援事業の実施に要するその他の実費費用が必要となった時以降

職業紹介費に関しては、送出管理費の扱いに注意が必要です。運用要領は、送出管理費として徴収した費用は全額を送出機関に支払う必要があり、途中帰国や行方不明を理由とした減額支払いは認められないとしています。また、支払債務が解消された送出管理費に対応する監理支援費を徴収することはできません。送出機関との契約条件と受入企業向け料金表の整合は、設計段階で必ず突き合わせておくべき項目です。

出典: 育成就労制度運用要領 第5章第5節

技能実習の監理費との違い──料金設計に直結する5つの実務差分

費目構成と実費原則は技能実習を踏襲しますが、運用面では料金設計に直接効いてくる差分があります。運用要領から読み取れる主な変更点は次の5つです。

1. 監理支援費表のインターネット公表が義務化

監理支援費表(料金表)は監理支援機関の業務運営規程の別表と位置づけられ、インターネットによる公表が義務とされています。省令の概略図にも「監理支援費(金額はHPで公表)」と明記されており、各機関の価格が誰でも比較できる状態になります。価格戦略の前提が技能実習時代から大きく変わるポイントです。

2. 預託方式の公式容認と、精算・返還の義務

実費の確定前に、監理支援費表に基づいて費用を事前に預託させることは可能と整理されています。ただし、決算等の機会に実費との事後確認を行い、超過分は返還しなければなりません。返還せずに費消した場合、法第28条第1項違反(手数料・報酬の受領)と認められる場合があるとされています。「毎月定額」を運用したい場合は、預託と精算のサイクルを前提にした経理設計が必須になります。

3. 監理支援費管理簿(参考様式第4-8号)の作成・備置き

監理支援費を徴収した場合は、監理支援事業を行う事業所ごとに「監理支援費管理簿」を作成・備置きしなければなりません。会計帳簿の作成をもって省略することはできず、費目区分の明記が必要です。記載は事業報告書の「14 監理支援費徴収実績」と対応します。様式は法務省サイトでWord形式で公開されています。

4. 転籍・途中帰国・行方不明時の費用の事前明示が推奨

育成就労外国人の転籍・途中帰国・行方不明などの際に送出機関へ支払う費用を、引き続き育成就労実施者から徴収するか否かは、監理支援費表や監理支援契約書等であらかじめ明示することが「望まれる」とされています(義務ではなく推奨)。前提として、送出機関との契約においても送出管理費の支払義務への影響を明確化しておくことが望まれるとされています。転籍が制度上組み込まれた育成就労では、この明示の有無が後々のトラブルを左右します。転籍の仕組み自体は転籍ルールの解説記事で整理しています。

5. 施行日前の準備行為経費の徴収ルールが明文化

施行日前の育成就労計画認定申請等の準備行為に要した経費は、監理支援費の規定を踏まえ、施行前でも徴収可能と整理されています。条件は次の4点です。

  • 監理型育成就労外国人になろうとする者に直接・間接に負担させないこと
  • あらかじめ用途・金額を明示すること
  • 実費のみを徴収すること
  • 監理支援費管理簿(参考様式第4-8号)を作成・備置きすること

出典: 育成就労制度運用要領 第5章第5節 / 関係省令等の概略図

監理支援費の「相場」はまだ存在しない──参照できる唯一の公的データ

監理支援費の金額水準について、執筆時点で確認できる公的な調査・統計はありません。制度は未施行であり、各監理支援機関が許可を受けてHPで公表する監理支援費表が、事実上初めての実勢データになるとみられます。相場に関する公的情報が出てき次第、本記事も更新します。

現時点で原価や水準を考える際に参照できる唯一の公的データは、技能実習の監理費に関する外国人技能実習機構(OTIT)のアンケート調査です。令和3年9月9日〜10月4日に1,972団体を対象に実施され、有効回答631団体(回答率約32.0%)の結果として、次の数字が示されています。

項目平均中央値
初期費用341,402円333,800円
定期費用(1人当たり月額・1号)30,551円30,000円
定期費用(同・2号)29,096円30,000円
定期費用(同・3号)23,971円26,000円
不定期費用154,780円145,000円

定期費用の内訳では、監査・訪問指導の費用が約47〜48%、送出機関に支払う費用が約23%を占めています。また、この調査の注記では「その他実習監理に要する費用」の内訳回答例として外部監査費用・技能検定料・計画認定申請関係費用・保険料等が挙げられており、技能実習では外部監査費用が監理費として実習実施者から徴収されている実態が確認できます。

この技能実習の監理費の原価構造と適正水準の考え方は、技能実習の監理費適正額の解説記事で詳しく分解しています。育成就労の料金を考える際の出発点として、まず自団体の現行原価を同記事の枠組みで棚卸ししておくことをおすすめします。

出典: 監理団体が実習実施者から徴収する監理費等に関するアンケート調査(外国人技能実習機構)

料金体系再設計の論点──原価構造はどこが変わるか【経営判断の視点】

ここからは制度の定めではなく、運営者として料金体系を再設計する際の経営上の論点です。金額水準そのものは公的データがないため断定できませんが、原価構造の変化要因は今から整理できます。

論点1: 新たに発生・増加するコストをどの費目に載せるか

育成就労では監理支援機関の体制要件が見直され、外部監査人の設置をはじめとするコスト構造の変化が見込まれます(要件の詳細は監理支援機関の許可要件の解説記事外部監査人の要件の解説記事を参照)。一方、外部監査人の費用が監理支援費のどの費目に整理されるかは、運用要領の監理支援費の節に明示の記載を確認できていません。技能実習ではOTIT調査の注記のとおり外部監査費用が監理費として徴収されている実態がありますが、育成就労での扱いは公的な明示が出され次第、本記事を更新します。現段階では「自団体の原価としていくら発生するか」を先に把握し、費目への計上方法は最新の公表情報・所管への確認を踏まえて確定させる進め方が安全です。

論点2: 日本語教育支援のコストをどう設計するか

運用要領で確認できる範囲では、入国前講習に該当しない日本語学習・生活指導等の事前講習費用は職業紹介費に、入国前・入国後講習の費用は講習費に整理されます。一方、就労開始後の日本語教育に係る費用の扱いは明示を確認できていません。育成就労の日本語要件を踏まえると就労開始後の学習支援は実務上の重要テーマであり、どこまでを監理支援機関のサービスとして担い、その原価をどう回収するかは、各団体が方針を決めるべき設計論点です。

論点3: 転籍対応の工数とリスクを価格に織り込むか

転籍が制度化されることで、転籍時の事務対応・送出機関との精算・受入企業への説明といった工数が新たに発生します。制度上確定しているのは、(1)転籍・途中帰国・行方不明時に送出機関へ支払う費用の徴収継続可否を料金表・契約書で事前明示することが推奨されている点、(2)本人意向転籍の際は、監理支援費とは別枠で、転籍先の実施者が告示で定める額に就労期間に応じた按分率(1年6月未満=6分の5、1年6月以上2年未満=3分の2、2年以上2年6月未満=2分の1、2年6月以上=4分の1)を乗じた金額を転籍元実施者に支払う仕組みがある点です。後者はあくまで実施者間の支払いであり、監理支援機関の転籍対応工数を補填するものではありません。この工数をどの費目・どの水準で見込むかが論点になります。

論点4: 価格が全件公開される市場でどう戦うか

監理支援費表のHP公表義務により、価格は完全に可視化されます。実費原則の下では「安さ」の演出余地は小さく、むしろ用途・金額の説明力と、監査・支援の質の見える化が選ばれる理由になります。価格公開を脅威ではなく、適正なコスト構造を持つ団体が選ばれる機会と捉えられるかどうかは、監理団体の経営課題の記事で扱った収益構造の論点と地続きです。

論点5: 預託方式を採用するか

預託方式は毎月のキャッシュフローを平準化できる一方、決算等での実費精算・超過分返還と管理簿運用が必須です。精算事務の負荷に耐えられる経理体制があるか、返還を前提とした資金管理ができるかを踏まえて採否を判断する必要があります。

なお、本人が送出機関に支払う費用には月給(所定内月額)の2か月分という上限が設けられ、上限超過分は育成就労実施者または監理支援機関が負担するとされています(育成就労制度Q&A・Q74)。送出国・送出機関によってはこの負担が自団体側の原価に影響し得る点も、見積りに含めておきたい要素です。

出典: 育成就労制度運用要領 第5章第5節 / 関係省令等の概略図 / 育成就労制度Q&A(出入国在留管理庁)

いま着手できる準備と、ウォッチすべき公表情報

施行までに料金体系の再設計を終えるために、現時点で進められる作業を挙げます。

  • 現行監理費の原価分解: 費目ごとに「実費としていくらかかっているか」を可視化する。これが監理支援費表の土台になります。
  • 監理支援費表のドラフト作成: 4区分(職業紹介費・講習費・監査指導費・その他諸経費)へのマッピングと、用途・金額の明示方法を整理する。HP公表を前提に、外部に見られて説明が立つ表現にしておく。
  • 転籍・途中帰国・行方不明時の費用条項の整理: 送出機関との契約と受入企業向け契約・料金表の双方で扱いを明確化する。
  • 監理支援費管理簿(参考様式第4-8号)の運用準備: 事業所ごとの作成・備置きと費目区分記載に対応できる経理フローを設計する。
  • 施行日前経費の徴収ルール確認: 準備行為の経費を徴収する場合は、前述の4条件を満たす運用にする。

あわせて、公表情報のウォッチも欠かせません。運用要領は2026年4月6日に一部改正(監理支援機関許可関係の申請添付様式の変更等)が行われており、今後も更新が見込まれます。また、育成就労計画認定の施行日前申請(2026年9月1日受付開始予定)の手続詳細は、執筆時点でまだ公表が確認できていません。公表され次第、本記事および関連記事を更新します。施行までの準備の全体像は育成就労への対応準備ガイドを、制度自体の概要は育成就労制度とはの解説記事をご参照ください。

出典: JITCOニュース(運用要領一部改正) / 外国人技能実習機構 育成就労ページ

よくある質問

監理支援費は誰から徴収できますか?

監理型育成就労実施者等(受入企業側)からのみ徴収できます。育成就労外国人への負担転嫁は直接・間接を問わず禁止されており、負担させないことは受入企業側の育成就労計画認定の待遇要件にも組み込まれています。徴収にあたっては用途・金額の事前明示が必要です。

監理支援費の金額に上限や相場はありますか?

金額は費目ごとに「実費に限る」とされており、定額の上限額が示されているわけではありません。相場についても、制度未施行のため公的な調査・統計は執筆時点で存在しません。各機関がHPで公表する監理支援費表が実勢の手がかりになるとみられ、公的データが出てき次第、本記事を更新します。

毎月定額で徴収する方式は使えますか?

実費確定前に監理支援費表に基づいて事前に預託させることは可能です。ただし決算等の機会に実費と突き合わせ、超過分は返還する必要があります。返還せずに費消した場合は、法第28条第1項違反(手数料・報酬の受領)と認められる場合があるとされています。

転籍が発生した場合、送出機関に支払う費用は受入企業に請求し続けられますか?

徴収を継続するか否かを、監理支援費表や監理支援契約書等であらかじめ明示しておくことが「望まれる」とされています(義務ではなく推奨)。あわせて、送出機関との契約でも送出管理費の支払義務への影響を明確化しておくことが望まれます。事前明示がないまま転籍が発生すると受入企業との調整が難航しやすいため、契約・料金表の段階で決めておくのが実務的です。

施行日前の準備にかかった費用は徴収できますか?

育成就労計画認定申請等の準備行為に要した経費は、施行前でも徴収可能と整理されています。条件は、外国人本人に直接・間接に負担させないこと、用途・金額の事前明示、実費のみの徴収、監理支援費管理簿(参考様式第4-8号)の作成・備置きの4点です。

監理支援費管理簿は会計ソフトの帳簿で代替できますか?

できません。会計帳簿の作成をもって省略することは認められず、監理支援事業を行う事業所ごとに、費目区分を明記した監理支援費管理簿の作成・備置きが必要です。記載内容は事業報告書の「14 監理支援費徴収実績」と対応します。

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FRM Journal 編集部
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