育成就労制度では、監理支援機関の許可基準として外部監査人の設置が求められます。技能実習制度では「外部役員または外部監査人」の選択制でしたが、新制度では全ての監理支援機関に外部監査人が必要になります(出入国在留管理庁 育成就労制度Q&A・Q34)。

施行日前申請は2026年4月15日に受付が始まっており、施行日(2027年4月1日)から事業を開始する場合は2026年9月30日までの申請が推奨されています。外部監査人の選任書面は申請書類の一部であるため、外部監査人の確保は申請準備の最初のボトルネックになります。

本記事では、外国人技能実習機構(機構)が公表する「監理支援機関の許可申請に係るよくあるご質問」(2026年6月4日更新版、以下「機構FAQ」)に基づき、誰に頼めるのか・誰には頼めないのかを、依頼する側である監理団体の事務局目線で整理します。

外部監査人とは|なぜ全機関で設置が義務化されたのか

外部監査人は、監理支援機関の業務が適正に行われているかを外部の立場からチェックする存在です。技能実習制度で課題とされた監理団体の中立性・透明性を強化するため、育成就労制度では選択制が廃止され、外部監査人の設置そのものが許可の基準になりました。

透明性確保の一環として、外部監査人になる方は、氏名(法人の場合は法人名)を機構ホームページで公表することへの同意が必要です(機構FAQ 7-18)。

なれる人の3類型と共通要件

外部監査人になれるのは、次の3類型のいずれかに該当する者です(出入国在留管理庁Q&A・Q36、機構FAQ 7-5・7-10・7-11)。

  • ① 弁護士・社会保険労務士・行政書士(弁護士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人も可)
  • ② 出入国又は労働に関する法令について高度な知識・経験を有する者——出入国・労働法令を研究している大学教授など、客観的に評価できる場合に限られます。技能実習制度で外部監査人を務めた実績があるだけでは該当しません(機構FAQ 7-10)
  • ③ 外部監査人に係る養成講習実施機関として告示されている機関であって相当の実績がある者——「相当の実績」とは直近2事業年度のいずれかの年に講習を20回以上実施していることが求められます(機構FAQ 7-11)

なお、公認会計士・税理士・司法書士は「士業であること」のみでは外部監査人になれません(機構FAQ 7-5)。

3類型のいずれに該当する場合でも、次の共通要件を全て満たす必要があります。

  • 養成講習の修了:申請時点で過去3年以内に、主務大臣が告示で定める外部監査人に対する講習を修了していること。育成就労法の施行前に技能実習制度における監理責任者等講習を受講した者も選任できます(機構FAQ 7-17)
  • 外部性・中立性:監理支援を行う育成就労実施者と密接な関係を有さないこと(出入国在留管理庁Q&A・Q36)
  • 欠格事由に該当しないこと
  • 氏名公表への同意(機構FAQ 7-18)

なれる人・なれない人 判定早見表

「顧問の先生に頼めるのか」「親族や監事ではだめなのか」——実務で迷いやすいケースの可否を、機構FAQの回答に基づき一覧にしました。○の場合も、上記の共通要件への適合と欠格事由非該当が前提です。個別のケースは機構・所管庁にご確認ください。

ケース可否根拠(機構FAQ)
自機関と顧問契約を結んでいる弁護士・社労士・行政書士7-2
構成員(監理支援を行う育成就労実施者)と顧問契約を結んでいる士業×7-3
構成員(育成就労実施者でない)と顧問契約を結んでいる士業7-4
公認会計士・税理士・司法書士(資格のみ)×7-5
複数の監理支援機関(監理団体含む)の外部監査人を兼任7-6
自機関の元役員(退任から5年超)7-7
技能実習制度の指定外部役員(非常勤・監理事業の業務に非関与)(退任5年以内でも可)7-7
他の監理支援機関の役職員×7-8
自機関の構成員、構成員の役員・職員×7-9
代表者の配偶者・二親等以内の親族×7-12
自機関の監事(員外監事・有資格者でも)×7-13
入国後講習の法的保護科目の講師を有償で依頼している社労士7-14
事務所の賃貸人である行政書士7-15

ポイントは、「顧問だからNG」ではないことです。自機関の顧問士業はそのまま候補になり得る一方、役員(監事を含む)・構成員・近い親族は資格の有無にかかわらず選任できません。

外部監査人の業務——同行監査は各事業所につき年1回以上

外部監査人は、監理支援機関が行う育成就労実施者への監査に、監理支援機関の各事業所につき1年に1回以上同行して確認することが求められます。傘下の全ての育成就労実施者に同行する必要はありません(機構FAQ 7-16)。

このほかの監査の頻度・方法の詳細は育成就労制度運用要領で定められています。受嘱する士業側・依頼する団体側の双方で、契約前に運用要領の該当箇所と機構の案内を確認しておくことを推奨します。

選任手続きと申請書類

監理支援機関の許可申請では、外部監査人について就任承諾書及び誓約書並びに概要書(参考様式第2-5号)の提出が必要です。様式は機構の「監理支援機関の許可申請」ページで公表されています。

団体の定款に「外部監査人の選任について」の記載が必要かどうかは、各団体の設立に関する関係法令によって異なるため、所管庁への確認が必要です(機構FAQ 7-1)。

申請全体の流れ・期限・必要書類は監理支援機関とは?許可要件・申請スケジュールで詳しく解説しています。

確保の進め方と費用の目安——申請集中の前に動く

機構は施行日前申請に多くの申請が集中することを見込んでおり、外部監査人の候補確保も同じ時期に重なります。候補者の確認は早めに進めておきたいところです。確保の現実的な順番は次のとおりです。

  • ① 自機関の顧問士業に打診する——顧問契約があっても選任可能です(機構FAQ 7-2)。ただし、その士業が構成員(育成就労実施者)の顧問でもある場合は不可(同7-3)
  • ② 地域の士業会・業界団体に相談する——複数の監理支援機関での兼任が可能なため(同7-6)、近隣団体と同じ外部監査人に依頼し負担を分け合う方法もあります
  • ③ 養成講習の実施機関リストから探す——講習機関は出入国在留管理庁厚生労働省のページで案内されています

報酬は法令で定められておらず、契約によります。監査範囲・事業所数・団体規模によって幅がありますが、業界では月額数万円から、年額では数十万円規模のレンジが目安として語られています(公的な基準額はありません。複数の候補から見積りを取り比較することを推奨します)。

外部監査人の選任は許可申請書類の前提となるため、2026年9月30日の申請推奨期限から逆算すると、夏までに候補を確定させておきたいところです。移行準備全体のスケジュールは育成就労制度の対応準備ガイドを参照してください。

無料ダウンロード

外部監査人 選任判定シート(PDF)

本記事の「なれる人・なれない人 判定早見表13ケース」と3類型・共通要件・確保の進め方を、理事会や候補者への説明にそのまま使える全4ページのPDFにまとめました。外国人技能実習機構FAQ準拠・根拠番号付き。フォーム送信後、すぐにダウンロードできます。営業電話は一切しません。

よくある質問(FAQ)

技能実習制度で外部監査人をお願いしていた人に、そのまま続けてもらえますか?

講習の面では、育成就労法の施行前に技能実習制度における監理責任者等講習を受講した者も選任できます(機構FAQ 7-17)。ただし「技能実習で外部監査人を務めていた実績」だけでは資格類型を満たしません。弁護士・社労士・行政書士のいずれかであるか、出入国・労働法令の高度な知識経験者等に該当することが別途必要です(同7-10)。

顧問の社労士・行政書士にそのまま頼めますか?

自機関との顧問契約があっても、要件に適合し欠格事由に該当しなければ選任できます(機構FAQ 7-2)。ただし、その士業が「監理支援を行う育成就労実施者である構成員」の顧問でもある場合は選任できません(同7-3)。

役員や親族はなぜだめなのですか?

外部性・中立性の要件によるものです。監事を含む役員は資格の有無にかかわらず不可(機構FAQ 7-13)、代表者の配偶者・二親等以内の親族も「役員と社会生活において密接な関係を有する者」として不可です(同7-12)。元役員は退任から5年を超えていれば候補になります(同7-7)。

1人の外部監査人に複数の団体が依頼してもよいですか?

複数の監理支援機関(監理団体を含む)の外部監査人の兼任は、要件に適合し欠格事由に該当しなければ可能です(機構FAQ 7-6)。ただし、既に特定の監理支援機関の役職員になっている者は、他の機関の外部監査人にはなれません(同7-8)。

出典:外国人技能実習機構「監理支援機関の許可申請に係るよくあるご質問」(2026年6月4日更新版)同「監理支援機関の許可申請について」出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」

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FRM Journal 編集部
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