受入企業から「うちは何人まで受け入れられますか」と聞かれたとき、即答できる体制は監理支援機関の信頼に直結します。育成就労制度の受入れ人数枠は、技能実習の「号・年次ごとの枠」とは構造が大きく変わり、優良加算や指定区域(地方)の3倍枠、介護・林業の分野特例など、確認すべき変数が増えました。本記事では、育成就労制度運用要領(令和8年4月6日改訂版)など法務省の一次情報のみに基づき、人数枠の計算方法を監理支援機関の実務目線で整理します。

育成就労の受入れ人数枠とは──法的根拠と技能実習との構造の違い

育成就労の受入れ人数枠の法的根拠は、育成就労法第9条第1項第10号です。同号は「同時に複数の育成就労外国人に育成就労を行わせる場合、その数が主務省令で定める数を超えないこと」を計画認定の基準として定めており、具体的な数は育成就労法施行規則第19条に規定されています。実務上の詳細は、育成就労制度運用要領(本体・令和8年4月6日改訂版、全479ページ)の第4章第11「育成就労外国人の人数枠に関するもの」(4-101〜4-111ページ)に、規則第19条の条文全文と表1〜表5の形で掲載されています。

技能実習との最大の構造的な違いは、枠の数え方です。育成就労では1号・2号・3号という区分が廃止されたため、人数枠は「1年目〜3年目までの育成就労外国人の合計に対する上限」として一本化されました。技能実習のように号・年次ごとに枠を管理する方式ではありません。さらに、法務省Q&A(Q41)では、同一事業年度に枠の上限まで一括で受け入れることも可能とされています。受入企業への説明では、この「3年分合計の単一上限」「初年度一括受入も可」という2点をまず押さえると誤解を防げます。

制度全体の前提から確認したい場合は、育成就労制度の概要解説もあわせてご覧ください。

出典: 育成就労制度運用要領(本体・令和8年4月6日改訂版) / 法務省 育成就労制度Q&A

基本人数枠の早見表(監理型)と常勤職員の数え方

監理型の基本人数枠(規則第19条第2項第1号・運用要領の表2)

監理支援機関の監理支援を受ける「監理型」の基本人数枠は、受入企業(育成就労実施者)の常勤職員総数に応じて次のとおりです。継続安定体制の認定を受けた単独型にも同じ表が適用されます。

常勤職員総数基本人数枠(1〜3年目の合計上限)
301人以上常勤職員総数の20分の3
201〜300人45人
101〜200人30人
51〜100人18人
41〜50人15人
31〜40人12人
3〜30人9人
2人6人
1人3人

常勤職員のカウントルール──ここを間違えると枠計算が狂う

分母となる常勤職員総数の算定には注意点が多く、監理支援機関が代わりに確認すべき実務ポイントです。

  • 除外するもの: 外国にある事業所に所属する常勤職員、育成就労外国人、技能実習生は常勤職員数に含めません。
  • 含めるもの: 特定技能などほかの在留資格の外国人は常勤職員に含めます(法務省の省令概略資料P8注記)。
  • 法人全体で算出: 総数は事業所ごとではなく、本社・支社・事業所を合算した法人全体で算出します(介護分野は例外。後述)。
  • 共同実施の場合: 複数法人が共同で育成就労を実施する場合は、常勤職員数を合算して枠を算出します。

受入企業ヒアリングの際は「常勤職員名簿のうち、技能実習生・育成就労外国人を除き、特定技能外国人は含めた人数」を確認するのが正確です。

出典: 育成就労制度の関係省令等について(法務省・P8) / 育成就労制度運用要領 4-105・4-110

優良実施者は2倍、指定区域×ダブル優良で3倍

優良な育成就労実施者の人数枠(表4)──基本枠の2倍

優良な育成就労実施者と認められた場合、人数枠は基本枠の2倍に拡大します(規則第19条第2項第2号)。

常勤職員総数優良実施者の人数枠
301人以上常勤職員総数の10分の3
201〜300人90人
101〜200人60人
51〜100人36人
41〜50人30人
31〜40人24人
6〜30人18人
5人15人
4人12人
3人10人
2人7人
1人4人

優良×指定区域×優良監理支援機関の人数枠(表5)──基本枠の3倍

さらに、①実施者が優良、②実施者の住所が指定区域(地方)にある、③優良な監理支援機関の監理支援を受ける、の3条件を満たすと、人数枠は基本枠の3倍まで拡大します(規則第19条第2項第3号)。監理型でこの表の適用を受けるには、実施者と監理支援機関の双方が優良であることが必要で、片方のみ優良の場合は2倍(表4)にとどまります。自機関が優良認定を取れるかどうかが、顧客企業の受入可能数を直接左右する仕組みです。

常勤職員総数優良+指定区域+優良監理支援機関の人数枠
301人以上常勤職員総数の20分の9
201〜300人135人
101〜200人90人
51〜100人54人
41〜50人45人
31〜40人36人
9〜30人27人
8人24人
7人21人
6人19人
5人16人
4人13人
3人11人
2人8人
1人5人

指定区域(地方)の範囲と住所の判定

指定区域は主務大臣告示で定められ、東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・京都・大阪・兵庫の8都府県以外の39道県全域に加え、8都府県内の過疎地域(埼玉:秩父市等7市町村、千葉:旭市等13、東京:檜原村等7、神奈川:真鶴町、愛知:新城市等4、京都:福知山市等12、大阪:豊能町等4、兵庫:洲本市等16)が含まれます。住所の判断は、法人は登記簿上の本店所在地、個人は住民票上の住所で行います。共同実施の場合は、全法人の住所が指定区域にあることが必要です。市区町村単位で確定しているため、顧客企業の登記住所がわかれば3倍枠の適否は機械的に判定できます。

優良要件の中身と現時点の留意点

優良要件は、規則第19条第1項第2号イ〜ヘに基づき、①技能および日本語能力の修得に係る実績、②育成就労を行わせる体制、③待遇、④法令違反・行方不明者の発生状況、⑤相談対応等の保護支援体制、⑥地域社会との共生の取組、を総合評価して判断されます(Q&A Q45)。優良認定は計画認定時に通知され、取消し等がない限り一定期間有効です。ただし、適用申請に必要な優良要件適合申告書の参考様式は、運用要領令和8年4月版時点で「追ってお示しします」とされ未公表であり、具体的な点数基準・配点表も人数枠の章には掲載されていません。様式・配点は公表され次第、本記事を更新します。

なお、優良な監理支援機関の認定基準や許可申請の流れは監理支援機関の許可要件・申請スケジュール解説で詳しく扱っています。

出典: 育成就労制度運用要領 4-106〜4-109 / 法務省 育成就労制度Q&A(Q45)

単独型・派遣型の人数枠

単独型は常勤職員20人以上が事実上の参入ライン

監理支援機関を介さない単独型の基本人数枠(表1)は「常勤職員総数の20分の3」で、計算結果が3未満となる場合は0(受入不可)です。つまり一般の単独型は、常勤職員20人以上でなければ受け入れられません。単独型の優良実施者(表3)は「総数の10分の3」(3未満は0、常勤10人以上必要)です。ただし、単独型でも「継続的かつ安定的に育成就労を実施できる体制(継続安定体制)」を出入国在留管理庁長官・厚生労働大臣が認めた場合は、監理型と同じ表2・表4・表5が適用されます。この認定は計画認定申請時に理由書(参考様式第1-1号等)で立証する必要があります。

労働者派遣等監理型の枠は「最小の個別人数枠」

労働者派遣等の形態による監理型育成就労では、派遣単位の人数枠は、派遣元・派遣先ごとに規則第19条で算出した「個別人数枠」のうち最小の数となります(規則第24条)。派遣元で業務に従事しない場合は派遣元の個別人数枠は適用されません。また、各派遣元・派遣先には個別人数枠も別途適用されます。派遣スキームを使う分野の顧客には、関係機関全部の枠を洗い出す必要がある点を案内してください。

出典: 育成就労制度運用要領 4-105・4-107・第15(7)

経過措置と枠外──移行期の計算で間違えやすいポイント

在籍中の技能実習生は「分子」に算入される(経過措置)

規則附則第6条により、施行後も引き続き技能実習を行う1号・2号技能実習生の数は、育成就労外国人の数とみなして枠計算に算入されます(一方で常勤職員数には含めません)。つまり移行期の受入企業では、「在籍中の1号・2号技能実習生+新規の育成就労外国人」の合計が枠に収まる必要があります。3号技能実習生は技能実習法施行規則の人数枠規制のみを受け、育成就労法の枠規制は受けません。技能実習からの移行スケジュール全体は育成就労への対応準備ガイドで時系列に整理しています。

人数枠の枠外となる3類型

規則第19条第4項により、次の者は人数枠の枠外として扱われます。

  • やむを得ない事情による転籍者: 転籍ルールの詳細は育成就労の転籍ルール解説を参照してください。
  • 育成就労期間が延長された者
  • 保護の観点から特別の理由がある者: 妊娠・出産等による中断からの再開、認定取消しを受けた実施者からの受入れ、優良でなくなった場合や常勤職員の減少により枠を超過した既存受入者の継続などが該当します。

注意点として、3つ目の類型で枠超過が容認されている間は新規受入ができません。また、枠外の適用を受けるには認定申請時に説明書の添付が必要です。

転籍の受入割合にも「地方への配慮」がある

人数枠とは別に、転籍者の受入割合の規制にも地方配慮があります。地方の受入機関が転籍者を受け入れられる割合は在籍育成就労外国人総数の3分の1以下に緩和され、地方から大都市圏等への転籍は6分の1(転籍者を含め受入6人未満の小規模機関は3分の1)とされています(法務省Q&A Q54も本人意向転籍の受入上限を3分の1と規定)。

出典: 育成就労制度運用要領 4-104・4-110・4-111 / 育成就労制度の関係省令等について(P14)

分野別の特例(介護・林業)と分野単位の総量上限

人数枠の上乗せ特例があるのは14分野中、介護と林業の2分野のみ

規則第19条第3項は、告示で定める特定の分野について、分野所管行政機関の長が法務大臣・厚生労働大臣と協議の上、分野特有の事情に鑑みて告示で人数枠を定められるとしています。2026年6月12日時点で法務省に掲載されている上乗せ基準告示14分野(介護/ビルクリーニング/リネンサプライ/工業製品製造業/造船・舶用工業/自動車整備/宿泊/鉄道/農業/漁業/飲食料品製造業/外食業/林業/木材産業)の本文を確認した結果、人数枠の別段の定めを置いているのは介護と林業の2分野のみです。他の12分野の告示は育成就労内容や体制の基準のみで、人数枠の特例はありません(今後の告示追加・改正により変わる可能性があります)。対象分野の全体像は育成就労の対象17分野まとめをご覧ください。

介護分野: 事業所単位・常勤介護職員ベースで小規模はより厳しい

介護分野は厚生労働省告示第156号(令和8年3月31日)第4条により、人数枠を「事業所単位」かつ「常勤介護職員(介護等を主たる業務とする常勤職員。育成就労外国人とEPA介護福祉士候補者を除く)」ベースで算定します。監理型・継続安定単独型の基本枠は次のとおりです。

事業所の常勤介護職員総数基本人数枠
301人以上常勤介護職員総数の20分の3
201〜300人45人
101〜200人30人
51〜100人18人
41〜50人15人
31〜40人12人
21〜30人9人
11〜20人6人
10人以下3人

優良実施者は2倍、優良+指定区域+優良監理支援機関は3倍となる点は一般則と同じですが、事業所の育成就労外国人総数は常勤介護職員総数を超えられません。一般則では常勤職員3〜30人で9人受け入れられるのに対し、介護では10人以下の事業所は3人、11〜20人は6人と、小規模事業所で大幅に厳しくなります。介護系の顧客に一般則のテーブルをそのまま案内すると過大計算になるため、必ず分野を確認してから回答してください。

林業分野: 数値は同じだが2つの制限を上乗せ

林業分野は農林水産省告示第623号(令和8年4月23日)第3条により、数値テーブル自体は一般則と同一ですが、①育成就労外国人総数が常勤職員総数を超えないこと、②常勤職員の算定から1号特定技能外国人も除外すること(一般則では特定技能は常勤職員に含まれます)、の2点が上乗せされています。

企業単位の枠とは別に「分野単位の総量上限」がある

分野別運用方針(法第7条の2、2026年1月23日閣議決定)には各分野の人材受入れ見込数が定められ、運用要領3-14は「分野別運用方針において定められる向こう5年の受入れ見込数は、各分野における受入れの上限として運用されます」と明記しています。つまり企業単位の人数枠(規則第19条)と分野単位の総量上限が二重にかかる構造で、企業の枠が空いていても分野全体の受入れ見込数の状況に影響を受ける可能性があります。顧客向けの説明資料には、この総量管理の存在も織り込んでおくことをおすすめします。

出典: 介護分野上乗せ基準告示(厚生労働省告示第156号) / 林業分野上乗せ基準告示(農林水産省告示第623号) / 出入国在留管理庁 制度概要・関係法令ページ

よくある質問

受入企業から「何人まで受け入れられるか」と聞かれたら、何を確認すればよいですか?

確認すべき変数は5つです。①法人全体の常勤職員総数(技能実習生・育成就労外国人を除き、特定技能外国人は含める)、②優良な育成就労実施者に該当し得るか、③登記簿上の本店所在地が指定区域(地方)にあるか、④分野(介護・林業は特例あり)、⑤在籍中の1号・2号技能実習生の数(経過措置で枠に算入)。この5点が揃えば、表2・表4・表5のどれを適用するか判定できます。

技能実習の人数枠と同じ計算で案内してよいですか?

構造が異なるため流用は危険です。育成就労は号区分が廃止され、1〜3年目の合計に対する単一上限で管理されます(技能実習は号・年次ごとの枠管理)。技能実習側の具体的な数値基準は技能実習法施行規則・外国人技能実習機構の運用要領で別途確認してください。両制度が並走する移行期は、在籍技能実習生の扱い(経過措置)を含めて個別に計算する必要があります。

常勤職員に特定技能外国人は含まれますか?

含まれます。法務省の省令概略資料では「常勤職員数に育成就労外国人及び技能実習生の数は含まない。なお、特定技能などほかの在留資格の外国人は含む」とされています。ただし林業分野のみ、告示により1号特定技能外国人も常勤職員の算定から除外される点に注意してください。

人数枠を超えて受け入れられるケースはありますか?

規則第19条第4項の枠外3類型(やむを得ない事情による転籍者/育成就労期間が延長された者/保護の観点から特別の理由がある者)に該当する場合は枠外となります。ただし、枠超過が容認されている間は新規受入ができず、適用には認定申請時の説明書添付が必要です。

優良認定はいつ、どのように受けるのですか?

優良認定は育成就労計画の認定時に通知され、取消し等がない限り一定期間有効とされています。ただし、適用申請に必要な優良要件適合申告書の参考様式は運用要領令和8年4月版時点で未公表であり、配点基準も示されていません。公表され次第、本記事を更新します。最新情報は法務省の育成就労制度運用要領ページでご確認ください。

FRM
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