外国人を雇用するとき、企業が行う手続きは日本人を採用する場合よりも一段階多くなります。在留資格(いわゆる就労ビザ)の確認、雇用契約の締結、ハローワークへの届出、社会保険の加入、そして入社後の生活・日本語支援——どれか一つでも抜け漏れると、本人に不利益が生じるだけでなく、企業側が法令違反に問われることもあります。

とくに気をつけたいのが、在留カードの確認を怠ったまま就労させてしまうケースです。就労が認められていない在留資格の人を働かせてしまうと、企業側も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります(出入国管理及び難民認定法第73条の2)。「知らなかった」では済まされないのが、外国人雇用の難しいところです。

本記事では、外国人雇用の手続きを「採用前」「採用時」「入社後」の3段階に分けて、企業の担当者がやるべきことと必要書類を一覧で整理します。なお、採用そのものの進め方は外国人採用の進め方ガイドでも全体像をまとめています。

外国人雇用の手続きは「採用前」「採用時」「入社後」の3段階

外国人雇用の手続きは、大きく3つのフェーズに分かれます。それぞれで「いつ」「何を」「どこに」対応するのかを、まず全体像として押さえておきましょう。

フェーズ 主にやること 提出先・確認先 タイミングの目安
採用前 在留資格・就労可否の確認、在留カードの真偽確認、資格外活動許可の有無の確認 在留カード/出入国在留管理庁 内定・採用決定の前
採用時 雇用契約の締結、労働条件の明示、在留資格の変更・取得申請(必要な場合) 本人/出入国在留管理庁 就労開始の前まで
入社後 外国人雇用状況の届出、社会保険・労働保険の加入、生活・日本語支援 ハローワーク/年金事務所など 雇入れ後すみやかに

ポイントは、最もリスクが高いのが「採用前」の確認だということです。就労できない人を採用してしまえば、その後の手続きをいくら丁寧に行っても問題は解決しません。逆に、採用前の確認さえ確実に行えば、後続の手続きは定型業務として整理できます。以下、各フェーズを順に見ていきます。

採用前にやること(在留資格・就労資格の確認)

採用前の段階で確認すべきは、「その人が、自社で行う業務に就労できる在留資格を持っているか」という一点に尽きます。日本に在留する外国人は在留資格ごとに就労の可否や範囲が定められており、これを外れて働かせることはできません。

在留資格と就労可否の確認

在留資格は、就労の観点から大きく次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 就労が認められる在留資格:技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能、介護、技能実習、2027年4月運用開始予定の育成就労など。ただし在留資格ごとに従事できる業務の範囲が決まっています。
  • 身分・地位にもとづく在留資格:永住者、日本人の配偶者等、定住者など。就労に制限がなく、原則としてどの業務にも就けます。
  • 原則として就労が認められない在留資格:留学、家族滞在など。後述の資格外活動許可を得た範囲でのみ就労できます。

たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で来日した人を、許可された範囲外の単純労働に就かせることはできません。自社の業務内容と在留資格の範囲が一致しているかを、採用前に必ず照合してください。

在留カードの確認

就労可否を確認する最も確実な方法は、本人の在留カードを直接確認することです。在留カードには次の情報が記載されています。

確認する欄 見るポイント
在留資格 自社の業務に対応する資格かどうか
在留期間(満了日) 期限が切れていないか、更新時期が近くないか
就労制限の有無 「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」などの記載
資格外活動許可欄(裏面) 留学・家族滞在の場合に許可があるか、週28時間以内などの条件

在留カードの偽造を見抜くため、出入国在留管理庁は在留カード等番号の有効性を確認できる照会サイトを公開しています。カードの番号と有効期限を入力して失効していないかを確認できますので、採用前のチェックに活用してください(2026年6月時点)。

資格外活動の有無

留学生や「家族滞在」の在留資格を持つ人をアルバイトなどで雇う場合は、資格外活動許可を得ているかが重要です。許可がある場合でも、就労できる時間は原則として週28時間以内(留学生の長期休業期間中は1日8時間以内)に制限されています。この時間制限を超えて働かせると、本人が在留資格の更新で不利になるだけでなく、企業側も責任を問われかねません。複数の勤務先を掛け持ちしている場合は合算で28時間以内である点にも注意が必要です。

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採用時にやること(雇用契約・在留資格の申請・必要書類)

採用が決まったら、雇用契約を結び、必要に応じて在留資格の手続きを行います。就労を開始する前までに、これらを確実に済ませておく必要があります。

雇用契約・労働条件通知

外国人であっても、労働基準法をはじめとする日本の労働関係法令は等しく適用されます。賃金、労働時間、休日、業務内容などの労働条件を書面で明示する義務があります(労働条件通知書または雇用契約書)。本人が日本語の契約内容を十分に理解できないまま署名すると、後のトラブルの原因になります。厚生労働省は多言語に対応した「モデル労働条件通知書」を公開していますので、本人の母国語または平易な日本語で内容を確認できるようにすると安心です。

在留資格に応じた申請・変更

採用する人の状況によって、必要な在留資格の手続きは次のように分かれます。

採用するケース 必要な手続き 申請先
すでに就労可能な在留資格を持つ人を採用 原則手続き不要(就労資格証明書の交付申請を任意で行うと安心) 出入国在留管理庁
留学生を新卒採用(就労資格へ切替) 在留資格変更許可申請 出入国在留管理庁
海外から新たに招へい 在留資格認定証明書交付申請 → 査証(ビザ)申請 出入国在留管理庁・在外公館

在留資格の審査には数週間から数か月かかることがあります。とくに海外から招へいする場合は、入社予定日から逆算して早めに申請を始めることが重要です。申請手続きは行政書士(申請取次の届出を行った者)に委託することもでき、相場は1件あたり数万円から十数万円程度が目安です(税抜・難易度により変動)。

必要書類一覧

在留資格の申請で求められる書類は資格や審査区分によって異なりますが、代表的なものは次のとおりです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
  • 雇用契約書または労働条件通知書の写し
  • 会社の登記事項証明書、直近の決算文書の写し
  • 本人の履歴書、卒業証明書・職務経歴を示す資料
  • 本人の証明写真、パスポート・在留カードの写し

これらは申請区分によって追加・省略があります。最新の必要書類は出入国在留管理庁の公式案内で必ず確認してください(2026年6月時点)。

入社後にやること(雇用状況届出・社会保険・生活支援)

就労が始まったら、行政への届出と社会保険の手続き、定着のための支援を行います。とくに外国人雇用状況の届出は、すべての事業主に課された法的義務です。

外国人雇用状況の届出(ハローワークへ義務)

事業主は、外国人を雇い入れたとき、および離職したときに、その氏名・在留資格・在留期間などをハローワーク(公共職業安定所)に届け出る義務があります(労働施策総合推進法第28条)。これは特別永住者などを除くすべての外国人労働者が対象で、届出を怠ったり虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象となります。

区分 届出方法 届出期限
雇用保険の被保険者 雇用保険の資格取得届・喪失届の所定欄に記入(兼ねられる) 雇入れ:翌月10日まで/離職:翌日から10日以内
雇用保険の被保険者でない(短時間など) 外国人雇用状況届出書を提出 雇入れ・離職とも翌月末日まで

届出はハローワークの窓口のほか、電子申請(外国人雇用状況届出システム)でも行えます。在留カードに記載された在留資格・在留期間を正確に転記することが大切です。

社会保険・労働保険

社会保険の加入要件は国籍を問いません。適用事業所であれば、外国人労働者も日本人と同じく次の保険に加入します。

  • 健康保険・厚生年金保険:適用事業所で常用的に働く場合は加入(年金事務所へ資格取得届)
  • 労災保険:労働者を1人でも雇えば原則加入
  • 雇用保険:所定労働時間など一定の要件を満たす場合に加入

なお厚生年金に加入した外国人が一定の要件を満たして帰国した場合、「脱退一時金」を請求できる制度があります。入社時にこの制度の存在を伝えておくと、本人の納得感につながります。

生活・日本語支援

採用後の定着を左右するのが、生活面の支援です。住居の確保、銀行口座の開設、行政手続き、ゴミの分別ルール——日本での生活に不慣れな段階では、こうした一つひとつが大きな壁になります。日本語学習の機会を提供することも、業務の習熟とトラブル防止の両面で効果があります。企業が担う支援の範囲は、後述する在留資格の種類によって変わってきます。

在留資格別に異なる手続きの違い

これまで共通の流れを見てきましたが、実際には在留資格の種類によって追加で発生する手続きや、関わる支援機関が変わります。代表的な3つの類型を整理します。

特定技能(支援計画・登録支援機関)

特定技能1号で外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、職業生活・日常生活・社会生活上の支援を行う「1号特定技能外国人支援計画」の作成と実施が義務づけられています。出入国時の送迎、住居確保の支援、生活オリエンテーション、日本語学習の機会の提供などが含まれます。

この支援業務の全部を、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」へ委託することもできます。委託費は人数や支援内容により異なりますが、1人あたり月額2万〜3万円程度が一つの目安です(税抜・条件により変動)。制度の全体像は特定技能制度とはの記事で詳しく解説しています。

技能実習・育成就労(監理団体・監理支援機関)

技能実習制度では、企業単独型を除き、非営利の「監理団体」を通じて実習生を受け入れます。監理団体は受入企業への監査、実習計画の作成支援、入国後講習などを担います。2027年に施行が予定されている育成就労制度では、この役割を担う機関が「監理支援機関」へと位置づけ直される見込みです(施行時期・詳細は今後の政省令で確定。2026年6月時点)。

これらの制度では、在留資格の手続きや日々の管理の多くを監理団体(監理支援機関)が支援するため、受入企業の事務負担は特定技能とは異なる形になります。制度の違いは育成就労制度とはで整理していますので、技能実習からの切替を検討している企業はあわせてご確認ください。

手続きでよくあるミスと注意点

最後に、外国人雇用の実務でとくに起こりやすいミスを挙げておきます。いずれも「知っていれば防げる」ものばかりです。

  • 在留カードの確認漏れ:採用時に確認したきり、在留期間の満了日を見落としてしまう。更新時期を台帳で管理し、満了の数か月前にアラートを出す運用が有効です。
  • 業務内容と在留資格のミスマッチ:採用後に配置転換した結果、在留資格で認められない業務に就かせてしまう。部署異動の際は在留資格の範囲を再確認します。
  • 雇用状況届出の失念:日本人と同じ感覚で採用手続きを進め、ハローワークへの届出を忘れる。入社手続きのチェックリストに必ず組み込みます。
  • 社会保険の加入漏れ:短時間勤務だからと加入要件を確認しないまま放置する。要件を満たすのに未加入だと、後の調査で指摘されます。
  • 労働条件の説明不足:契約内容を本人が理解しないまま就労を開始し、賃金や残業をめぐるトラブルに発展する。母国語または平易な日本語での説明を徹底します。

採用にかかる費用を事前に把握したい場合は外国人採用のメリットと費用を、介護など業種に特化した採用の流れは介護分野の外国人採用をあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 外国人雇用状況の届出を忘れるとどうなりますか?

外国人雇用状況の届出は労働施策総合推進法にもとづく法的義務です。届出を怠ったり虚偽の内容を届け出たりした場合、30万円以下の罰金の対象となります。雇入れ時・離職時の双方で必要なため、入社・退社手続きのチェックリストに必ず組み込んでおきましょう。

Q2. 在留カードを確認せずに採用してしまった場合のリスクは?

就労が認められていない在留資格の人を働かせると、企業側も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります(入管法第73条の2)。在留資格を知らなかったとしても、確認を怠った過失があれば責任を免れないとされています。採用前の在留カード確認は省略しないでください。

Q3. 留学生をアルバイトで雇うときの注意点は?

留学の在留資格は原則として就労が認められないため、本人が「資格外活動許可」を得ているかを在留カードの裏面で確認します。許可がある場合でも就労時間は原則週28時間以内に制限されます。複数のアルバイトを掛け持ちしている場合は、合算で時間制限を超えないよう注意が必要です。

Q4. 在留資格の申請手続きは自社だけで行えますか?

企業の担当者が本人とともに申請を行うこともできますが、書類が多く審査基準も細かいため、申請取次の届出をした行政書士に委託するケースが一般的です。委託費は1件あたり数万円から十数万円程度が目安です(税抜・案件の難易度により変動します)。海外からの招へいなど複雑なケースほど、専門家への依頼が安心です。

Q5. 外国人にも社会保険は適用されますか?

社会保険の加入要件に国籍の区別はありません。適用事業所で常用的に働く場合は、日本人と同じく健康保険・厚生年金保険に加入します。労災保険・雇用保険も要件を満たせば加入対象です。帰国時には厚生年金の「脱退一時金」を請求できる制度があるため、入社時に説明しておくとよいでしょう。

編集部
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FRM Journal 編集部
外国人材マネジメントの専門家チーム
監理団体・登録支援機関・特定技能・育成就労の実務を専門とする編集チームです。外国人材マネジメント(FRM)の視点で、経営者・担当者がすぐに使える情報を発信しています。
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