介護人材の不足が深刻になるなかで、外国人の採用を本格的に検討する施設が増えています。一方で、「どの在留資格を使えばよいのかわからない」「日本語や介護の要件が複雑で踏み出せない」という声も少なくありません。介護分野は、複数の在留資格が並行して使える数少ない業種であり、それぞれ対象者・要件・在留期間が大きく異なります。

本記事では、介護業界で外国人を採用したい事業者(施設長・人事担当)に向けて、利用できる在留資格の全体像、それぞれの違いと選び方、採用から受け入れまでの流れ、現場でよくある課題、費用の目安までを、介護現場の目線で整理します。制度は通知や改正で変わる部分があるため、最終的な適用判断は出入国在留管理庁・厚生労働省の最新情報で確認することを前提に、まずは全体像をつかんでいただく内容です。

なお、外国人採用の進め方を業種横断で俯瞰したい方は、姉妹記事の「外国人採用ガイド」も参照すると理解が深まります。

介護業界で外国人を採用できる在留資格

2026年6月時点で、介護の現場で外国人が就労できる主な在留資格は、特定技能「介護」、在留資格「介護」(介護福祉士)、EPA(経済連携協定)に基づく受け入れ、そして技能実習です。加えて、技能実習に代わる育成就労が2027年4月に運用開始予定で、介護分野での新たな受け入れルートとして準備が進んでいます。それぞれ「誰を」「どんな要件で」「どのくらいの期間」受け入れられるかが異なります。まずは一覧で全体像を把握しましょう。

在留資格 主な対象 主な要件 在留期間の目安
特定技能「介護」 即戦力として働ける外国人 介護技能評価試験+介護日本語評価試験+日本語能力試験(N4相当以上)の合格など。技能実習2号からの移行ルートもあり 1号は通算5年が上限(さらに長期の就労は介護福祉士取得後に在留資格「介護」へ移行)
育成就労(介護分野) 未経験から育成して定着を目指す外国人 就労開始前後の日本語・介護の段階的な要件(N5相当からの育成を想定)。技能実習に代わる新制度で、2027年4月運用開始予定 原則3年程度の育成期間を経て特定技能等へ移行
在留資格「介護」 介護福祉士の国家資格を持つ外国人 介護福祉士の資格取得(養成施設ルート・実務経験ルートなど) 更新により長期就労が可能(在留期間の上限なし)
EPA(経済連携協定) インドネシア・フィリピン・ベトナムからの介護福祉士候補者 協定に基づく入国・就労。一定期間内に介護福祉士国家試験の合格を目指す 候補者期間(4年程度)+合格後は資格者として継続就労

このうち、2026年6月時点で未経験者を採用する入口として現実的なのは、特定技能「介護」と技能実習です。EPAは送り出し国や受け入れ枠が限られ、在留資格「介護」は介護福祉士資格を前提とします。育成就労(介護分野)は2027年4月の運用開始予定で、今後は技能実習に代わる主要ルートになる見込みです。なお、各要件の細部や試験の取り扱いは制度・通知で定まるため、最新の基準を要確認としてください。

特定技能「介護」

特定技能「介護」は、一定の日本語力と介護の知識・技能を試験で確認したうえで、即戦力として受け入れる在留資格です。介護技能評価試験と介護日本語評価試験に加え、日本語能力試験(N4相当以上)の合格などが求められます。技能実習2号を良好に修了した人は、これらの試験が免除されて移行できるルートもあります。特定技能制度そのものの位置づけは「特定技能とは」で詳しく解説しています。

特定技能「介護」(1号)の在留期間は通算5年が上限です。介護分野には特定技能2号が設けられていないため、より長期の就労を見据える場合は、就労しながら介護福祉士の資格を取得し、在留資格「介護」へ移行するルートが基本となります。特定技能の1号・2号の基本的な考え方は「特定技能1号と2号の違い」もあわせて参照してください。

育成就労(介護分野)

育成就労は、技能実習に代わる新しい受け入れの枠組みで、未経験の外国人を一定期間かけて育成し、特定技能などへの移行を前提とする制度です。介護分野でも、就労開始前後に日本語(N5相当からの育成を想定)と介護の基礎を段階的に身につける設計になっています。「定着」を制度目的に据えている点が特徴で、長く働いてもらいたい施設と相性が良い枠組みです。育成就労の全体像は「育成就労制度とは」で確認できます。

在留資格「介護」(介護福祉士)

在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格を持つ外国人が対象です。介護福祉士養成施設を卒業するルートや、実務経験を経て国家試験に合格するルートなどがあります。資格者であるため即戦力性が高く、在留期間の更新により長期就労が可能です。育成就労やEPAで入国した人が資格取得後にこの在留資格へ移っていく、というキャリアの出口にもなります。

EPA(経済連携協定)

EPAは、インドネシア・フィリピン・ベトナムとの経済連携協定に基づき、介護福祉士候補者を受け入れる仕組みです。候補者は就労・研修を続けながら、一定期間内に介護福祉士国家試験の合格を目指します。送り出し国や受け入れ調整機関を通じた手続きが必要で、枠も限られるため、特定技能・育成就労と比べると受け入れのハードルは高めです。

在留資格ごとの違いと選び方

4つの在留資格は「どれが優れているか」ではなく、「自施設の状況に合うのはどれか」で選ぶものです。判断の軸になるのは、日本語要件、技能・資格要件、在留期間、そして夜勤・人員配置上の扱いといった現場運用の観点です。代表的な観点で整理します。

観点 特定技能「介護」 育成就労(介護) 在留資格「介護」
日本語要件 N4相当以上+介護日本語評価試験 N5相当から段階的に育成 資格取得を通じて高い水準
技能・資格 介護技能評価試験の合格(または実習修了) 未経験可・現場で育成 介護福祉士の国家資格が前提
在留期間 1号は通算5年が上限(在留資格「介護」への移行で長期就労) 育成期間後に移行を前提 更新により上限なし
即戦力性 高い(入職時から一定の技能) 育成前提(中長期で戦力化) 非常に高い

選び方の目安としては、すぐに現場で動ける人材が必要なら特定技能、時間をかけて自施設の文化に合う人を育てて定着させたいなら育成就労、有資格者を中核に据えたいなら在留資格「介護」が候補になります。多くの施設は、育成就労や特定技能で受け入れた人材が経験を積み、介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ移行していく、という長期のキャリアパスを描いて組み合わせています。

なお、夜勤や人員配置基準上の取り扱いは、在留資格や就労開始からの期間によって条件が設けられることがあります。たとえば一部の制度では、就労開始から一定期間は夜勤や配置基準への算入に条件が付くケースがあるため、最新の基準を要確認としてください。

介護で外国人を受け入れる流れ

採用を決めてから実際に現場で働いてもらうまでには、いくつかの段階があります。在留資格の選定から受け入れ後の配置基準の確認まで、全体の流れを押さえておくと、どこに時間がかかるか、どの専門家に相談すべきかが見えてきます。手続きの細部は「外国人雇用の手続き」もあわせてご覧ください。

1. 在留資格の選定

まず、自施設のニーズ(即戦力か育成か、必要人数、想定する勤務形態)を整理し、どの在留資格で受け入れるかを決めます。ここを曖昧にしたまま進めると、後の募集・試験・申請の要件が定まらず、手戻りが発生します。複数の在留資格を併用する場合も、人ごとにどの資格で受け入れるかを明確にします。

2. 募集・人材の確保

登録支援機関や送り出し機関、人材紹介会社などを通じて候補者を募集します。育成就労やEPAでは送り出し国側の手続きが関わるため、信頼できる仲介機関の選定が重要です。特定技能では、すでに日本国内にいる技能実習修了者などからの採用ルートもあります。

3. 試験・要件の確認

選んだ在留資格に応じて、介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語能力試験などの合格状況や、資格・実習修了の有無を確認します。要件を満たしているかをこの段階で確実に押さえておくことが、申請後の不許可リスクを下げる鍵になります。

4. 在留資格の申請

必要書類を整え、出入国在留管理庁へ在留資格認定証明書の交付申請(海外から呼び寄せる場合)や在留資格変更許可申請(国内にいる人の場合)を行います。雇用契約書、施設の体制を示す書類、本人の要件を証する書類などが必要で、登録支援機関や行政書士の支援を受けるのが一般的です。

5. 受け入れ・配置基準の確認

入国・入職後は、生活オリエンテーション、住居の確保、社会保険の手続きなどを進めつつ、現場での配置を行います。このとき、人員配置基準上どのように算入できるか、夜勤を任せられるのはいつからか、といった運用上の条件を確認します。配置基準や夜勤の扱いは制度・通知で定まるため、最新の基準を要確認のうえ、無理のないシフト設計から始めるのが安全です。

「自施設にはどの在留資格が合うのか整理したい」「受け入れ体制づくりから相談したい」という方は、外国人材管理の無料相談をご活用ください。

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介護現場でよくある課題と対応

在留資格を整えて受け入れても、現場での定着は別の課題です。介護は利用者の生活と命に関わる仕事であり、コミュニケーションや信頼関係の比重が他業種より大きい点に特徴があります。よくある課題と対応の方向性を整理します。

日本語・コミュニケーション

介護現場では、申し送り、記録、利用者との会話、緊急時の報告など、言葉が直接ケアの質に影響します。入職時の日本語力に幅があるため、専門用語や略語の用語集を整えたり、記録様式をやさしい日本語に見直したりする工夫が有効です。日本語学習を勤務時間内に組み込む施設もあります。完璧を求めるより、「現場で必要な言葉から段階的に」という発想が定着につながります。

定着・離職防止

せっかく採用しても早期に離職しては、採用コストも育成も無駄になります。定着のためには、相談しやすい体制(母国語で相談できる窓口や先輩職員のメンター制度)、キャリアの見通し(介護福祉士取得や在留資格「介護」への道筋)、生活面の支援(住居・通院・行政手続き)を一体で設計することが重要です。育成就労が「定着」を制度目的に掲げているように、受け入れ側の支援姿勢が成否を分けます。

利用者・家族の理解

外国人スタッフがケアにあたることに、利用者やその家族が最初は戸惑うこともあります。事前の丁寧な説明、スタッフ本人の人柄が伝わる機会づくり、日本人職員との連携体制の明示などで、多くの場合は時間とともに信頼が育ちます。実際、丁寧で誠実な対応が利用者から高く評価される例も多く、過度に身構える必要はありません。施設として「チームで支える」という姿勢を示すことが安心につながります。

採用・受け入れにかかる費用の目安

費用は在留資格や仲介機関、人数によって大きく変わるため、ここで示すのはあくまで相場の目安(いずれも税抜)です。実際の金額は条件で変動するため、複数の機関から見積もりを取って比較することをおすすめします。

  • 人材紹介・送り出し関連費用: 採用1名あたり数十万円程度が一つの目安です。送り出し国や紹介ルートによって幅があります。
  • 登録支援機関への支援委託費: 特定技能では支援を委託する場合、1名あたり月額で数千円〜数万円程度が目安です。
  • 在留資格申請の専門家費用: 行政書士などに申請を依頼する場合、1件あたり数万円〜十数万円程度が目安です。
  • 日本語教育・研修費用: 自施設で教育を行うか外部に委託するかで大きく変わります。

これらに加えて、住居の準備や生活立ち上げの実費もかかります。費用構造とメリットを含めた採算の考え方は「外国人採用のメリットと費用」で詳しく扱っています。なお、上記の金額はいずれも目安であり、制度改正や為替・人件費の動向によって変動します。最新の相場は各機関に直接ご確認ください。

介護以外の業種、たとえば建設分野での受け入れ費用や進め方と比較したい場合は「建設業の外国人採用」も参考になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 介護の資格がない外国人でも雇えますか?

はい、雇用できます。特定技能「介護」は介護福祉士などの国家資格は不要で、所定の技能・日本語の試験合格が要件です。育成就労(介護分野)は未経験から育成する制度のため、無資格・未経験の人を受け入れて現場で育てる前提です。一方、在留資格「介護」は介護福祉士の資格が前提となります。

Q. 外国人スタッフに夜勤を任せられますか?

夜勤は可能ですが、在留資格や就労開始からの期間によって条件が設けられることがあります。一部の制度では就労開始から一定期間は夜勤に条件が付く場合があるため、最新の基準を要確認のうえ、まずは日勤での習熟を経てから夜勤に移行する運用が安全です。

Q. 介護の人員配置基準上、外国人スタッフはどう扱われますか?

在留資格や就労開始からの経過期間に応じて、配置基準への算入の可否や条件が定められている場合があります。配置基準の取り扱いは制度・通知で変わり得るため、受け入れ前に出入国在留管理庁・厚生労働省の最新情報や所管自治体の窓口で確認してください。

Q. 採用してから働き始めるまでどのくらいかかりますか?

在留資格や海外からの呼び寄せか国内採用かによって異なりますが、募集から在留資格の申請・許可、入国・入職までを含めると、数か月単位の準備期間を見込むのが一般的です。早めに在留資格を選定し、要件確認と書類準備を並行して進めることで、全体の期間を短縮できます。

Q. どの在留資格から始めるのがよいですか?

すぐに現場で動ける人材が必要なら特定技能「介護」、時間をかけて自施設に合う人を育てて長く働いてもらいたいなら育成就労(介護分野)が出発点になりやすい選択です。最終的には自施設の人員状況・育成体制・想定するキャリアパスを踏まえて判断するのがよく、迷う場合は登録支援機関や専門家への相談をおすすめします。

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編集部
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FRM Journal 編集部
外国人材マネジメントの専門家チーム
監理団体・登録支援機関・特定技能・育成就労の実務を専門とする編集チームです。外国人材マネジメント(FRM)の視点で、経営者・担当者がすぐに使える情報を発信しています。
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