「人手が足りない。外国人材の採用も検討すべきだろうか」——多くの企業の経営者や採用担当者が、いまこの問いに直面しています。一方で、「言葉は通じるのか」「手続きが大変そう」「費用はどのくらいかかるのか」といった不安から、一歩を踏み出せずにいる方も少なくありません。
外国人採用は、人手不足の解消という大きなメリットがある一方で、相応の準備とコストを必要とする経営判断です。勢いだけで進めても、受け入れ体制が整っていなければ早期離職につながり、かえって負担が増えることもあります。
本記事では、外国人を採用するメリットとデメリットを企業目線で整理し、在留資格別の費用相場の目安、活用できる助成金の方向性、そしてデメリットへの備え方までを体系的に解説します。導入の是非を判断するための材料として、ぜひお役立てください。なお、具体的な手順は外国人採用ガイドでも全体像をまとめていますので、あわせてご覧ください。
外国人採用が増えている背景
外国人採用を検討する企業が増えている最大の理由は、深刻化する人手不足です。厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」によれば、日本で働く外国人労働者数は近年も増加傾向が続いていると報告されています(2026年時点・数値は集計時期により変動します。最新の数値は厚生労働省の公表資料をご確認ください)。
背景にあるのは、少子高齢化による生産年齢人口の減少です。特に製造、建設、介護、宿泊、外食といった分野では、日本人の採用だけでは必要な人員を確保しきれない状況が広がっています。求人を出しても応募が集まらない、採用できても定着しない——こうした課題に直面した企業が、選択肢のひとつとして外国人採用に目を向けるようになっています。
加えて、在留資格制度の整備も後押しになっています。専門的な知識を活かす「技術・人文知識・国際業務」(技人国)、一定の技能を持つ人材を受け入れる「特定技能」、2027年に施行が予定される「育成就労」など、目的に応じた受け入れの枠組みが用意されつつあります。それぞれの制度の概要は特定技能とはや育成就労制度とはの記事で詳しく解説しています。
外国人を採用する5つのメリット
外国人採用は、単なる「人数の穴埋め」にとどまらない価値を企業にもたらします。代表的な5つのメリットを見ていきましょう。
メリット1: 人手不足の解消につながる
最も直接的なメリットは、慢性的な人手不足の解消です。日本人の応募が集まりにくい職種・地域でも、外国人材であれば一定の母集団を確保できるケースがあります。働く意欲の高い若い世代の人材と出会いやすい点も、現場の活力につながります。業種別の採用動向は、介護分野の外国人採用や建設分野の外国人採用の記事でも整理しています。
メリット2: 長期戦力として定着が期待できる
適切な支援体制のもとで受け入れた外国人材は、長期にわたって戦力となることが期待できます。特定技能2号や技人国など、在留期間の更新や家族帯同が可能な在留資格もあり、本人がキャリアを築きながら働き続けられる道筋があります。企業にとっては、採用・教育に投じたコストを回収しやすくなるという利点があります。
メリット3: 職場の活性化と多様性の向上
異なる文化的背景を持つ人材が加わることで、職場に新しい視点が生まれます。既存の従業員にとっても、教える・伝えるという経験を通じて業務の標準化やマニュアル整備が進み、結果として組織全体の生産性向上につながることがあります。多様な人材が働きやすい環境づくりは、日本人従業員の定着にも好影響を及ぼします。
メリット4: 海外展開の素地になる
外国人材は、母国の言語・文化・商習慣に通じています。将来的に海外市場への展開を視野に入れる企業にとって、社内に多言語・多文化の人材がいることは貴重な経営資源です。インバウンド需要への対応や、海外取引先とのコミュニケーションにおいても強みになります。
メリット5: 制度活用の選択肢が広がる
特定技能、育成就労、技人国など、複数の在留資格制度が整備されたことで、企業は自社の業務内容や採用方針に合った受け入れ方を選べるようになりました。育成就労の場合、企業がどのように受け入れ準備を進めるかは育成就労の企業受け入れガイドで具体的に解説しています。制度を理解して使い分けることで、自社に合った人材戦略を描けます。
外国人採用の5つのデメリット・留意点
メリットがある一方で、外国人採用には固有の難しさもあります。あらかじめ把握しておくことで、対策を講じやすくなります。
デメリット1: 言語・文化の違いによるコミュニケーション
最も多くの企業が直面するのが、言語と文化の壁です。日本語能力には個人差があり、作業指示やルールが正確に伝わらないことがあります。また、時間に対する感覚、報告・連絡・相談の習慣、宗教上の配慮など、文化的な違いへの理解も欠かせません。やさしい日本語の活用や、多言語のマニュアル整備が現実的な対策になります。
デメリット2: 在留資格・雇用手続きの負担
外国人を雇用する際には、在留資格の確認、必要に応じた申請、入社後の各種届出など、日本人採用にはない手続きが発生します。在留期限の管理を怠ると不法就労につながりかねず、企業側の責任が問われます。手続きの全体像は外国人の雇用手続きの記事で確認できます。事務負担を見越した体制づくりが必要です。
デメリット3: 採用・受け入れにかかるコスト
外国人採用には、紹介手数料や支援委託費など、日本人採用とは異なる費用が発生します。在留資格や受け入れルートによって金額の幅は大きく、事前の試算が欠かせません。費用の目安は次の章で整理します。
デメリット4: 定着・転籍のリスク
受け入れ後の定着は、外国人採用の成否を左右します。労働条件や職場環境への不満、孤立感などから早期に離職・転籍するケースもあります。採用して終わりではなく、入社後のフォローや相談体制まで含めて設計することが重要です。
デメリット5: 受け入れ体制の整備が前提になる
外国人材を迎えるには、住居の確保、生活オリエンテーション、教育担当者の配置など、受け入れ体制の整備が前提となります。これらを軽視すると、本人が安心して働けず、メリットを十分に得られません。体制づくりに必要な工数とコストを、計画段階で見込んでおく必要があります。
外国人採用にかかる費用相場の目安【在留資格別】
外国人採用の費用は、選ぶ在留資格や受け入れルート、地域、依頼する支援内容によって大きく変わります。以下はあくまで一般的な相場の目安であり、金額を保証するものではありません。実際の費用は個別に見積もりを取り、内訳を確認することをおすすめします。
| 在留資格 | 主な初期費用の目安(税抜) | 主な継続費用の目安(税抜) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 特定技能 | 紹介手数料・初期手続きで数十万円程度が目安 | 登録支援機関への支援委託費が月数万円程度 | 一定の技能・日本語能力を持つ人材。即戦力を期待しやすい |
| 育成就労 | 送出・受入機関への費用で数十万円程度が目安 | 監理・支援にかかる費用が月数万円程度 | 2027年施行予定。育成と就労を両立する新制度 |
| 技人国 | 人材紹介を使う場合は理論年収の一定割合が目安 | 在留期間更新時の手続き費用など | 専門・技術職。直接採用なら紹介手数料を抑えられる場合も |
上記の金額はいずれも概算の目安です。実際には、在留資格・地域・支援内容によって金額が変動します。たとえば同じ特定技能でも、海外から呼び寄せるのか国内で採用するのか、支援を全部委託するのか一部を自社で行うのかによって、総額は大きく異なります。
費用を比較する際は、「初期費用」だけでなく「継続費用」も含めた総額で考えることが大切です。月額の支援委託費は在留期間を通じて発生するため、長期で見れば初期費用を上回ることもあります。複数の機関から見積もりを取り、何にいくらかかるのかという内訳まで確認したうえで判断しましょう。
活用できる助成金・支援制度
外国人採用に伴うコスト負担を軽減するために、活用できる可能性のある助成金や支援制度があります。ただし、制度の名称・要件・支給額は改廃が頻繁にあり、年度によって内容が変わります。ここでは一般的な方向性のみをお伝えします。最新の要件は必ず厚生労働省や各自治体の公式情報でご確認ください。
代表的なものとして、従業員の処遇改善や正社員化を支援する「キャリアアップ助成金」、人材育成に関する助成制度などが挙げられます。これらは外国人材に限定したものではありませんが、要件を満たせば外国人従業員に関しても対象となる場合があります。
また、自治体によっては、外国人材の受け入れや日本語教育、住居支援などに独自の補助制度を設けているケースもあります。本社や事業所のある地域の制度を調べてみる価値があります。
助成金は「もらえる前提」で資金計画を立てると、不支給だった場合に資金繰りが苦しくなります。あくまで補助的な位置づけと考え、支給は確定してから織り込むのが安全です。申請には期限や要件があるため、社会保険労務士など専門家への相談も選択肢になります。
デメリットへの備え方
外国人採用のデメリットは、事前の準備によって多くが軽減できます。ここでは「支援体制」「定着施策」「コスト管理」の3つの観点から、考え方の基本を整理します。
支援体制を整える
言語・文化の壁や手続きの負担に対しては、支援体制の整備が有効です。やさしい日本語や多言語でのマニュアル整備、通訳・翻訳ツールの活用、相談しやすい窓口の設置などが基本となります。登録支援機関や監理支援機関などの外部パートナーを活用すれば、自社だけで抱え込まずに済みます。
定着施策に投資する
早期離職・転籍を防ぐには、入社後のフォローが鍵になります。定期的な面談、生活面のサポート、キャリアパスの提示など、本人が「ここで働き続けたい」と思える環境づくりが定着につながります。教育担当者を明確に決め、孤立させない工夫が大切です。
コストを管理する
費用面では、初期費用と継続費用を分けて把握し、複数の見積もりを比較することが基本です。助成金は確定してから織り込み、過度に期待しない。在留期限や更新時期を一元管理し、手続き漏れによる予期せぬコストやリスクを防ぐ。こうした地道な管理が、結果的に総コストの抑制につながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 外国人採用はどの在留資格から検討すればよいですか?
自社の業務内容と求める人材像によって異なります。一定の技能を持つ即戦力を求めるなら特定技能、専門・技術職なら技人国、育成と就労を両立させる中長期の受け入れなら育成就労が候補になります。まずは各制度の概要を比較し、自社に合うものを絞り込むことをおすすめします。
Q2. 採用にかかる費用は総額でどのくらい見ておけばよいですか?
在留資格・ルート・地域・支援内容によって幅が大きく、一概には言えません。初期費用に加えて月額の支援委託費などの継続費用が発生するため、長期の総額で試算することが重要です。複数の機関から見積もりを取り、内訳を確認したうえで判断してください。金額はすべて税抜の概算目安であり、変動します。
Q3. 日本語があまり話せない人材でも採用できますか?
在留資格によって求められる日本語能力の水準は異なります。採用は可能でも、業務遂行や安全面を考えると、やさしい日本語の活用や多言語マニュアル、教育担当者の配置といった受け入れ体制が前提になります。本人の習熟度に応じた支援設計が欠かせません。
Q4. 助成金は必ず受け取れますか?
いいえ。助成金には要件や審査があり、申請しても支給されない場合があります。また制度の内容は年度ごとに変わります。資金計画は助成金に依存せず、支給が確定してから織り込むのが安全です。最新の要件は公式情報でご確認ください。
Q5. 受け入れ後すぐに辞められないか心配です。どう防げばよいですか?
早期離職を防ぐには、入社後のフォロー体制が重要です。定期面談、生活サポート、相談しやすい窓口、キャリアパスの提示などを通じて、本人が安心して働ける環境を整えましょう。採用前に労働条件や職場環境を丁寧に説明し、ミスマッチを減らすことも有効です。
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