結論
特定技能の受入費用は、初期費用(採用・入国・手続の一時費用)と月額・年額で継続する費用(支援・在留管理・生活支援など)に分けて積み上げ、1人当たり・年間・3年総額で見ると判断しやすくなります。金額は採用ルート(国内・海外)、分野、委託の有無で大きく変わるため、相場の一括提示より「費目のもれをなくして自社で見積もる」ことが重要です。
本記事は、特定技能外国人を受け入れる企業の担当者に向けて、費用の計算式、初期費用と継続費用の内訳、自社支援と委託の総額比較、採用ルート・分野による差、計算表と見積書の確認ポイントを、出入国在留管理庁の公開情報に基づいて整理します。特定技能に限定して扱い、在留資格を横断した外国人採用全体の費用は外国人採用の費用相場で扱います。
受入費用の計算式
受入費用は、次の式で捉えると全体像を見失いません。
受入費用 = 初期費用(一時) + 月額費用 × 在籍月数 + 年次費用(更新等)
費用は性質で3つに分けて考えます。制度で金額が定まる公的手数料(在留諸申請の手数料など)、事業者ごとに異なる民間相場(登録支援機関の委託費、送出・紹介にかかる費用など)、そして自社で発生する自社人件費・実費です。この区別をせずに「1人あたり〇〇円」とまとめると、比較や交渉ができなくなります。制度の全体像は特定技能とはもあわせて確認してください。
なお、支援に要する費用を特定技能外国人本人に直接・間接に負担させることはできません。見積もりの前提として押さえておきます。詳しい根拠は出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援」を参照してください。
初期費用の内訳
初期費用は、採用から受け入れ開始までに一度だけかかる費用です。主な費目は次のとおりです。海外から新規入国で受け入れる場合と、国内にいる外国人を採用する場合で、発生する費目が変わります。
| 費目 | 区分 | 国内採用 | 海外採用 |
|---|---|---|---|
| 紹介・送出にかかる費用 | 民間相場 | 紹介手数料(発生する場合) | 送出・紹介にかかる費用 |
| 在留資格変更許可申請(国内)/在留資格認定証明書交付申請(海外) | 手続 | 変更申請 | 認定申請+査証 |
| 在留諸申請の手数料 | 公的手数料 | 該当する手数料 | 該当する手数料 |
| 健康診断・各種書類の準備 | 実費 | あり | あり |
| 渡航費・入国時の送迎 | 実費 | 原則不要 | あり |
| 住居の初期費用(敷金・家具家電等の補助) | 実費 | あり | あり |
| 事前ガイダンス・生活オリエンテーションの準備 | 自社人件費/実費 | あり | あり |
手続の要否と手数料は、出入国在留管理庁「特定技能に関する手続」で最新の様式・手数料を確認してください。金額は制度改正で変わり得るため、本記事では具体額を断定せず、費目のもれ防止に用いてください。
毎月・毎年かかる費用
受け入れ後は、支援と雇用の継続に伴う費用が毎月・毎年かかります。
- 登録支援機関への委託費(委託する場合):月額の支援委託費。民間相場で、支援範囲・人数・地域により差があります。
- 自社支援の人件費(自社支援・一部委託の場合):支援担当者・責任者が支援に充てる時間分の人件費。
- 通訳・翻訳費:相談対応や面談での通訳費用。
- 賃金・法定福利費:日本人と同等以上の報酬に、社会保険・労働保険の事業主負担が加わります。
- 定期届出・在留期限管理の事務:定期届出の作成、在留期限の更新申請などにかかる事務・手数料。
- 日本語学習・生活支援の継続費用:教材・教室・交流機会などの提供費用。
賃金は費用というより雇用の根幹ですが、総額を見るときは必ず含めます。委託費の相場観は登録支援機関の費用相場を参考にしつつ、複数社から同じ条件で見積もりを取って比較してください。
自社支援と委託のTCO比較
支援を委託するか自社で行うかで、継続費用の構成が変わります。年間・3年の総額(TCO)で比較すると判断しやすくなります。自社支援と委託の要件・向き不向きは特定技能は自社支援できる?で詳しく解説しています。
| 費目 | 区分 | 委託(年額) | 自社支援(年額) |
|---|---|---|---|
| 支援委託費(月額×12) | 民間相場 | __円 | 0円 |
| 支援担当者・責任者の人件費 | 自社人件費 | __円(連携分) | __円 |
| 通訳・翻訳費 | 民間相場/実費 | (含む/別途)__円 | __円 |
| 定期届出・更新申請の事務・手数料 | 公的手数料/実費 | __円 | __円 |
| 生活・日本語支援の継続費 | 実費 | __円 | __円 |
| 年間合計(賃金・法定福利費を除く) | — | __円 | __円 |
| 3年総額(初期費用+年間×3) | — | __円 | __円 |
国内採用・海外採用・分野別の差
同じ特定技能でも、次の要因で費用が変わります。
- 採用ルート:海外からの新規入国は、送出にかかる費用・渡航費・入国時送迎が加わります。国内在住者の採用は、在留資格変更が中心で、渡航費は原則かかりません。
- 分野・業務:分野によって、事前に必要な試験や、業界固有の受入ルールがあり、準備の手間が変わります。
- 人数・地域:人数が増えると1人当たりの支援コストは下がりやすい一方、拠点が分散すると訪問・通訳の負担が増えます。
- 支援体制:委託か自社かで継続費用の構成が変わります(前章のTCO比較参照)。
「1人当たり費用」を他社と比べるときは、これらの前提が同じかを必ず確認してください。前提が違えば金額はそのまま比較できません。
予算化の進め方は、次の順序が実務的です。まず、受け入れる人数・採用ルート(国内/海外)・委託の有無を決めます。次に、本記事の初期費用表と継続費用表に、複数社から取った見積もりや自社の人件費を記入します。金額は「確定」「見積もり」「未確定」の3段階で色分けしておくと、交渉や社内承認の際に、どこがまだ動くのかが一目で分かります。最後に、初年度(初期費用+年間費用)と、2年目以降(年間費用のみ)を分けて示します。初年度だけを見ると割高に見えますが、初期費用は一度きりなので、複数年で均すと1年あたりの負担は下がります。社内で予算を通すときは、この「初年度」と「平年度」を分けて説明すると、費用の性質が伝わりやすくなります。
分野による差も押さえておきます。分野ごとに、受け入れ前に必要な試験や、業界固有の受入ルール・協議会への加入などが定められている場合があり、準備の手間や費用に影響します。募集前に、自社の分野で何が必要かを確認しておくと、後から想定外の費用が出るのを防げます。
費用計算表の使い方と見積書の確認ポイント
前章までの表に自社の数字を記入すると、初期費用・年間・3年総額・1人当たりが把握できます。見積もりを受け取ったら、次の点を確認します。
- ☐ 月額に含まれる支援業務の範囲が明記されているか(含まれない業務は何か)
- ☐ 初期費用と月額費用が分けて記載されているか
- ☐ 通訳・交通・同行・時間外対応などの追加料金の条件が書かれているか
- ☐ 人数が増減した場合、拠点が変わった場合の料金が示されているか
- ☐ 公的手数料(申請手数料など)と、委託費・民間費用が区別されているか
- ☐ 支援費用を本人に負担させる内容になっていないか
- ☐ 契約期間・解約予告・中途解約時の費用が明記されているか
- ☐ 見積の税区分(税抜/税込)と有効期限、作成日が明記されているか
相場に言及する資料を見るときは、調査日・税区分・対象業務が示されているかを確認してください。これらが不明な「相場」は、そのまま自社の予算根拠にはできません。
相見積もりは、少なくとも複数の候補から、同じ条件(人数・支援範囲・地域・対応言語)で取ります。条件をそろえないと、安く見える見積もりが実は支援範囲が狭いだけ、ということが起こります。見積書を比べるときは、「月額に含まれる業務」を横並びにして、含まれない業務にいくらかかるかまで確認します。特定技能では支援体制に関する基準があるため、単純な価格競争ではなく、支援の質と総額のバランスで選ぶことが、結果的に離職や届出漏れのコストを抑えます。自社支援に切り替える選択肢も含めて、複数年での総額で判断してください。委託か自社かの判断軸は特定技能は自社支援できる?にまとめています。
計算の進め方の例:まず、受け入れ人数と採用ルート(国内か海外か)を決めます。次に、初期費用の表に、紹介・送出にかかる費用、手続の手数料、健康診断、渡航・送迎、住居の初期費用を、自社が見積もれる範囲で記入します。続いて、月額の表に、委託費(委託する場合)または自社支援の人件費、通訳費、生活・日本語支援の継続費を記入し、12倍して年額にします。最後に、初期費用と年額を足して初年度総額を出し、人数で割れば1人当たりの目安が見えます。3年総額は、初期費用に年額×3を足して求めます。金額が未確定の欄は空欄のままにし、見積もりを取ってから埋めれば、抜けのない予算になります。
予算化と比較のコツ:社内で予算を通すときは、「1人あたりいくら」ではなく、初期費用・年間・3年総額の3つの数字で示すと、意思決定者が判断しやすくなります。複数の登録支援機関から見積もりを取る場合は、想定人数・支援範囲・対応言語・地域といった前提を同じ書式でそろえて依頼し、年間総額で比較します。前提が違う見積もりを金額だけで比べると、安く見える方が実は追加費用で高くつくことがあります。自社支援と委託で迷う場合は、費用だけでなく、担当者を継続的に確保できるか、支援の質を保てるかもあわせて判断してください。委託と自社支援の判断は特定技能は自社支援できる?で詳しく整理しています。
よくある質問
Q. 特定技能の受け入れは1人あたりいくらですか?
採用ルート、分野、委託の有無、地域、人数で大きく変わるため、一律の金額は示せません。本記事の計算表で、初期費用と継続費用を費目ごとに積み上げ、自社の条件での総額を出すことをおすすめします。
Q. 公的手数料と民間費用は何が違いますか?
公的手数料は、在留諸申請の手数料など制度で金額が定まるものです。民間費用は、登録支援機関の委託費や送出・紹介にかかる費用など、事業者ごとに異なるものです。見積もりでは両者を分けて確認します。
Q. 支援の委託費を、外国人本人に負担させてよいですか?
いいえ。支援に要する費用を、特定技能外国人本人に直接または間接に負担させることはできません。給与からの控除や別名目の徴収になっていないかを確認してください。
Q. 海外採用と国内採用で費用はどれくらい違いますか?
海外からの新規入国では、送出にかかる費用・渡航費・入国時の送迎などが加わるため、初期費用が国内採用より増える傾向があります。具体額はルートや国により異なるため、複数の見積もりで比較してください。
Q. 見積もりを安く見せる資料に注意点はありますか?
月額だけを強調し、初期費用・追加料金・通訳や交通の実費が別枠になっている場合があります。年間総額と3年総額で、含まれる範囲を揃えて比較してください。
参考にした公式情報(一次資料)
最終事実確認:2026年7月21日。本記事の制度・手続に関する記述は、上記の公式一次情報に基づいて整理しています。法定義務と推奨対応、公的手数料と民間相場、施行済み制度と2027年4月施行の育成就労など将来施行の制度は分けて記載しています。制度運用は更新されるため、届出・申請の前に最新の公式情報をご確認ください。内容の誤りにお気づきの場合は編集部までご連絡ください。
費用計画と受け入れの進め方を相談する
受入費用の試算や、委託か自社支援かの判断について、現在の条件を確認しながら整理します。