結論|「合格したかどうか」だけでは、進捗の停滞に気づけません

  • 外国人社員の日本語学習は、本人の自習に委ねられる部分が大きく、担当者が変わると引き継ぎが途切れやすい領域です。
  • 測るべき項目は①受験の期限 ②到達の推移(スコア帯) ③再受験と学習継続の3つです。この3項目を記録の対象にすることで、合否だけでは見えない停滞に早めに気づけます。
  • 育成就労では、受験させたことの証明資料の保管が制度上求められています(育成就労計画の履行状況に関する管理簿・参考様式第4-2号)。この公的な記録に、社内の管理台帳を重ねる形が実務的です。
  • 本記事は一般的な管理の考え方を扱います。加点⑨・労働時間の扱いなど、継続学習の制度的な論点は「A2目標講習の後に合格率を上げる継続学習」で解説しています。

根拠:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」(4-55〜4-56頁)、技能実習法第39条第2項(最終確認日:2026-09-18)

外国人社員を雇用する企業から聞かれる悩みの1つに、「日本語学習の進み具合が、試験の直前になるまでよく分からない」というものがあります。学習そのものは本人任せになりやすく、担当者の異動や配置転換のタイミングで引き継ぎが途切れることも一般的に起こり得ます。本記事は、個々の企業の状況を断定するものではなく、進捗を測るための3つの管理項目を一般論として整理し、記録の持ち方を具体的に示すものです。

現場で起きやすいこと

次のような状況は、特定の企業に限った特殊な事情というより、記録の持ち方が定まっていない場合に一般的に起こりやすい傾向として捉えられます。

  • 担当者が異動・退職すると、口頭やメモでのやり取りに頼っていた学習状況の引き継ぎが途切れる
  • 学習の進め方が本人任せになっており、実際にどれだけ学習が進んでいるかを企業側が把握していない
  • 次の試験が近づいてから、前回の受験結果や学習状況を確認し、準備が間に合わないことに気づく

いずれも、断定的に「よくある」と言い切れる統計があるわけではありませんが、記録が個人の記憶や口頭のやり取りだけに依存していると起こりやすい構造です。

測る項目|①受験の期限 ②到達の推移 ③再受験と学習継続

進捗を「見える」状態にするために測る項目は、次の3つに整理できます。

項目内容詳しい解説
①受験の期限1年目・3年目の受験義務、実施回数の基本頻度育成就労の日本語試験はいつ・何回受けさせるか
②到達の推移JFT-Basic等のスコア帯の変化、模試の結果JFT-Basicのスコア帯運用
③再受験と学習継続不合格後の再受験の有無、学習が止まっていないかA2目標講習の後に合格率を上げる継続学習

①は「いつまでに受けさせる必要があるか」という期限の管理、②は「合否ではなく点数がどう動いているか」という推移の管理、③は「学習が途切れていないか」という継続性の管理です。3つのうちどれか1つだけを見ていると、残りの2つで停滞が起きても気づけません。

記録の持ち方

育成就労では、育成就労外国人に1年目試験・目標試験を受験させたことの証明資料(受験票の写し等)を、育成就労計画の履行状況に関する管理簿(参考様式第4-2号)とともに育成就労実施者が保管することとされています(育成就労制度運用要領4-55〜4-56頁)。この公的な保管義務を土台にしつつ、社内で複数名の状況を横断的に見るための管理台帳を持つと実務的です。台帳の列は、次のような項目に対応させると3つの管理項目をそのまま記録できます。

  • 対象者名
  • 直近の受験日・試験名
  • 直近のスコア・判定
  • 次回受験予定日
  • 学習の最終実施日

合格を証明する書面(合格証等)は、監理支援機関や育成就労実施者が保管することなく、速やかに本人へ手交することとされています(同4-56頁)。台帳には「合格した事実と日付」を記録すれば足り、合格証そのものを組織側で保管する必要はありません。

記録の列と記入例

台帳の列を具体的に決める際は、後述する早見シートの受験計画シートと列をそろえておくと、記入した内容をそのまま転記できます。氏名は仮名(Aさん・Bさんなど)にするか、社内の管理番号に置き換えて記載してください。

氏名(仮名)受験日試験名スコアと判定帯次回予定日学習の最終実施日備考
Aさん2026-06-10JFT-Basic168点(A1)2026-08-102026-08-30前回比+12点
Bさん2026-05-15JFT-Basic172点(A1)2026-07-152026-06-01学習の最終実施日から60日超
Cさん未受験2026-09-30(予定)2026-09-10受験申込みが未了

上表は記入例であり、架空の数値です。実際の記録は、受験させたことの証明資料(受験票の写し等)を参考様式第4-2号とあわせて保管する運用(運用要領4-55〜4-56頁)と重複しないよう、社内台帳は要約情報にとどめる形が実務的です。

月1回の点検手順

台帳を作っただけでは進捗は「見える」状態になりません。月1回、次の手順で台帳を見直すと、停滞に早めに気づきやすくなります。

  1. 対象者ごとに、次の受験期限までの残り月数を確認する
  2. 前回受験からのスコアの推移(前回比)を確認する
  3. 学習の最終実施日が30日を超えている対象者を抽出する
  4. 次回受験日を仮予約する(JFT-BasicはCBTのため随時予約が可能)
  5. 上記の一覧を監理支援機関と共有する

この5ステップは、対象者が数名であれば口頭確認でも回せますが、人数が増えるほど、台帳の列を機械的に見直すだけで済む形にしておいたほうが、点検自体を続けやすくなります。特定の月だけ点検して終わりにするのではなく、毎月同じ手順を繰り返すことに意味があります。

停滞のサイン3つと初動

次の3つは、学習が停滞している可能性を示すサインとして一般的に挙げられるものです。個々の原因はさまざまであり、以下は特定の統計に基づくものではなく、一律の原因を断定するものでもありません。

  • サイン1:受験申込みが期限直前まで行われていない。 初動としては、申込み状況を確認し、必要であれば早めの受験枠を確保する、といった対応が一般的に考えられます。
  • サイン2:同じ試験でスコアがほぼ横ばいのまま2回続いている。 初動としては、学習方法や学習時間の使い方を本人と確認する、といった対応が一般的に考えられます。
  • サイン3:学習の最終実施日の記録が更新されないまま古くなっている。 初動としては、学習が実際に継続しているかどうかを確認する、といった対応が一般的に考えられます。

ここで挙げた初動は一般的な対応の方向性であり、具体的な学習支援の設計(加点⑨の要件、就労時間中に行う場合の労働時間の扱い)は本記事では扱いません。「A2目標講習の後に合格率を上げる継続学習」をご確認ください。

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見込み点への反映

台帳で記録した受験者数・合格者数は、育成就労の「優良な育成就労実施者」の評価項目(項目Ⅰ)のうち、④A1合格率・⑤A2合格率・⑦2年目終了までのA2合格者割合の試算材料になります。項目Ⅰ全体(50点満点)の試算には、再受験率(②)や講習以外の学習支援の有無(⑨)など、台帳の記録以外の情報も必要です。人数を入力すると試算できるツールを、「優良な育成就労実施者の配点」の記事に用意しています。試算結果は運用要領の配点表に当てはめた見込みであり、認定の判断は外国人育成就労機構が行います。

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監理支援機関と共有する項目

監理支援機関には、実習監理・監理支援を行う実施者が育成就労外国人の技能等の評価を行うに当たり、必要な指導及び助言を行う役割があります(技能実習法の現行規定である第39条第2項と同趣旨の枠組み)。育成就労では、受験させたことの証明資料(受験票の写し等)を、育成就労計画の履行状況に関する管理簿(参考様式第4-2号)とともに育成就労実施者が保管することとされています(運用要領4-55〜4-56頁)。この保管対象と重なる範囲で、次の項目を月次で共有できる状態にしておくと、指導・助言の材料として使いやすくなります。

  • 受験の期限(次回受験予定日、1年目・3年目の期限までの残り月数)
  • 直近のスコアと判定帯
  • 学習の最終実施日
  • 停滞のサイン(前節の3項目)に該当する対象者の有無

共有の頻度・方法は個々の監理支援機関との取り決めによりますが、月1回の点検手順(前節)と共有のタイミングを合わせると、記録を二重に作らずに済みます。なお、講習以外の日本語学習支援を優良要件の加点として扱う要件(同時双方向であること)や、就労時間中に学習支援を行う場合の労働時間の扱いは、本記事では扱いません。「A2目標講習の後に合格率を上げる継続学習」で解説しています。

よくある質問

なぜ「気づいたら受験期限が迫っていた」ということが起きるのですか?

日本語学習は本人の自習に委ねられる部分が大きく、担当者の異動や配置転換のタイミングで引き継ぎが途切れやすいという事情が一般的に指摘されます。学習の状況が個人任せの記憶や口頭のやり取りだけで管理されていると、次の受験の時期が近づいて初めて状況を把握する、という流れになりがちです。これは特定の企業や個人の問題というより、記録の持ち方が定まっていない場合に起きやすい一般的な傾向として捉えるのが適切です。

3つの管理項目とは何ですか?

①受験の期限(1年目・3年目の受験義務、基本頻度)、②到達の推移(JFT-Basic等のスコア帯・模試の結果)、③再受験と学習継続(再受験の有無、学習が止まっていないか)の3つです。この3項目を記録の対象にすることで、合否だけでは見えない学習の状態を継続的に把握できます。

記録はどのように残せばよいですか?

育成就労では、受験させたことの証明資料(受験票の写し等)を、育成就労計画の履行状況に関する管理簿(参考様式第4-2号)とともに育成就労実施者が保管することとされています(育成就労制度運用要領4-55〜4-56頁)。この公的な保管義務に加えて、対象者・直近の受験日・スコア・次回受験予定日・学習の最終実施日を一覧できる社内の管理台帳を持っておくと、複数名の状況を横断的に確認しやすくなります。

自社の見込み点はどう試算できますか?

育成就労の優良な育成就労実施者の評価項目(項目Ⅰ)のうち、④A1合格率・⑤A2合格率・⑦2年目終了までのA2合格者割合は、受験者数・合格者数から試算できます。項目Ⅰ全体(50点満点)の試算には、再受験率(②)や講習以外の学習支援の有無(⑨)など、受験者数・合格者数以外の情報も必要です。自社の人数等を入力して試算するツールを「優良な育成就労実施者の配点」の記事に用意しています。試算結果は運用要領の配点表に当てはめた見込みであり、認定の判断は外国人育成就労機構が行います。

監理支援機関とはどこまで共有すればよいですか?

監理支援機関には、実習監理・監理支援を行う実施者が育成就労外国人の技能等の評価を行うに当たり、必要な指導及び助言を行う役割があります(技能実習法の現行規定である第39条第2項と同趣旨の枠組み)。受験の期限、スコアの推移、学習の停止の3項目を定期的に共有できる状態にしておくと、指導・助言のタイミングを逃しにくくなります。共有の頻度・方法は個々の監理支援機関との取り決めによります。

加点⑨や学習支援の労働時間の扱いは、どこで詳しく解説していますか?

講習以外の日本語学習支援を優良要件の加点として扱う要件(同時双方向であること)、就労時間中に学習支援を行う場合の労働時間の扱いは、「A2目標講習の後に合格率を上げる継続学習」で詳しく解説しています。本記事では、進捗を把握するための管理項目に焦点を当てています。

公式出典と未確定事項

  • 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」(4-55〜4-56頁)
  • 技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)第39条第2項(監理団体の指導・助言義務)

未確定・個別確認が必要なもの

  • 本記事で紹介した「進捗が見えなくなる」現場の状況は一般論であり、特定の統計に基づくものではありません
  • 本記事は制度の一般的な説明であり、個別の記録運用の設計・審査・認定可否の判断は行いません

この記事の確認情報

公開日:2026-09-18/最終事実確認日:2026-09-18/編集・事実確認:FRM Journal編集部

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FRM
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FRM Journal 編集部
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