結論|A1相当講習は認定校「就労のための課程」100時間以上が基本形、当分の間は登録日本語教員による講習(4要件)でも代替できます

  • 育成就労では、就労開始前までにA1相当の日本語能力の試験に合格するか、認定日本語教育機関の「就労のための課程」でA1相当講習を100時間以上受講する必要があります(育成就労制度Q&A Q56・Q64)。未合格のまま入国する場合は、入国後講習の中でA1相当講習を受けます。
  • 当分の間の経過措置として、登録日本語教員による講習でもA1相当講習として認められます。要件は、目標がA1相当であること・100時間以上であること・教員1人に同時20人以下であること・対面以外はオンラインで同時かつ双方向に行うことの4点です(規則附則第3条第1項)。
  • 「A1相当」は日本語教育の参照枠の水準を指す言い方で、どの試験が該当するかは分野別運用方針で個別に定まります。「JLPT N5=A1相当」という一律の対応が法令で決められているわけではありません。
  • 経過措置の期間は、規則附則第3条では「当分の間」としか定められていません。出入国在留管理庁は「施行後5年間を目途とする当面の間」と説明していますが、これは運用上の見込みで法令上の期限ではありません。2029-03-31は別制度(現職日本語教員の資格取得の経過措置)の期限で、この講習の期限ではありません。

根拠:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」、出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」、出入国在留管理庁「日本語教育機関の講習提供状況一覧表(令和8年6月時点)について」(最終確認日:2026-09-07)

育成就労制度(2027-04-01施行)では、就労開始前までにA1相当の日本語能力を身につけさせる義務が新たに設けられました。技能実習の入国後講習にも日本語科目はありましたが、到達目標の水準・講師の資格・同時受講人数の上限・オンラインの条件は定められていませんでした。技能実習の入国後講習の設計については「技能実習の入国後講習ガイド」をご覧ください。本記事は、監理団体(監理支援機関)の事務局長・担当者を対象に、A1相当講習の要件、認定日本語教育機関ルートと登録日本語教員による経過措置ルートの違い、オンライン実施の条件、経過措置の期間、実施責任と委託の範囲、費用の負担経路を、出入国在留管理庁の一次資料に沿って掘り下げます。日本語要件全体の3段階(入国前・入国後・就労開始後3年間)は「育成就労の日本語要件」で整理していますので、全体像を先にご確認ください。

A1相当講習とは何か

育成就労外国人は、就労開始前までにA1相当の日本語能力の試験に合格するか、文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」でA1相当講習を100時間以上受講する必要があります(育成就労制度Q&A Q56・Q64)。試験合格が必須ではなく、講習修了という選択肢があるのが特徴です。未合格のまま入国する場合は、この100時間を入国後講習の中で受けることになります(次のセクションで扱います)。

ここで注意したいのは、「A1相当」という言い方の性格です。これは「日本語教育の参照枠」が定める水準の名称であり、JLPT(日本語能力試験)やJFT-Basic(日本語基礎テスト)のどの級・どの判定がこれに該当するかは、分野ごとに定められる分野別運用方針に委ねられています(運用要領4-40〜43頁、外国人育成就労機構Q&A)。「N5がA1相当、N4がA2相当」という組み合わせが広く使われていますが、これを一律の対応として法令が定めているわけではありません。自団体が受け入れる分野の分野別運用方針で、実際にどの試験のどの級・判定が指定されているかを確認する必要があります。分野別運用方針そのものについては「育成就労 分野別運用要領とは」で解説しています。

入国後講習の中での位置

未合格のまま入国する場合、A1相当講習100時間以上は、入国後講習全体の中に組み込まれます。入国後講習の全体時間数は、申請時点でA1相当の試験に合格しているかどうかと、入国前講習を受けているかどうかで次の4通りに分かれます(運用要領4-40〜41頁)。

申請時点のA1合否入国前6か月以内の入国前講習入国後講習の時間数
未合格なし320時間以上(うち日本語のA1相当講習を100時間以上含む)
未合格160時間以上受講160時間以上
合格なし220時間以上
合格110時間以上受講110時間以上

入国後講習は、日本語科目のほかに(1)本邦での生活一般に関する知識、(2)法的保護に必要な情報(8時間以上)、(3)本邦での円滑な技能の修得に資する知識の4科目すべてを実施する必要があります(規則第13条第2項第7号ロ、運用要領4-44〜46頁)。時間数の定めがあるのは、未合格者の日本語科目(A1相当講習100時間以上)と法的保護科目(8時間以上)で、他の科目は団体が必要な時間数を定めます。

なお、申請時点でA1相当の試験にすでに合格している場合、入国後講習の日本語科目は「個別に必要とする時間数」とされており、この科目については認定日本語教育機関で実施する必要はありません(運用要領4-44頁の表)。これから解説する認定校ルート・登録日本語教員ルートの要件は、未合格者が受けるA1相当講習100時間以上に関するものです。

基本形|認定日本語教育機関「就労のための課程」

A1相当講習の基本形は、文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」です。ただし、この課程を置く機関の数は、2026年9月7日時点でまだ限られています。出入国在留管理庁が2026年6月時点で全国の日本語教育機関に照会した講習提供状況一覧によると、「就労のための課程」を置く認定日本語教育機関は全国で3校、いずれも東京都内です。内訳は、「提供可能」と回答したのが1校、残り2校は「提供する方向で検討」という段階でした。

認定日本語教育機関の「就労のための課程」には、遠隔授業に関する上限があります。文化庁の資料は、対面に相当する効果がある同時双方向の遠隔授業を総授業時数の4分の3まで実施できるとしています(認定日本語教育機関認定基準第25条第2項・第3項、告示第4条第1項)。100時間の講習であれば、通常は少なくとも4分の1(25時間相当)は対面(またはそれに相当する実施方法)が必要になると解されます。ただし、同基準第23条に基づく「特別の日本語教育課程」として実施する場合は、講習の全部を対面以外の方法によって受講することも可能です(運用要領4-42頁)。認定日本語教育機関の次回の認定ラウンドは申請が2026年11月中旬の見込みで、就労課程を置く機関が増えるかどうかは、それ以降に確認できます。

経過措置|登録日本語教員による講習

認定校の供給が限られていることを踏まえ、当分の間の経過措置として、登録日本語教員による講習でもA1相当講習として認められます。その場合の要件は次の4点です(規則附則第3条第1項、運用要領4-42〜43頁)。

  • 講習の目標がA1相当であること(分野別運用方針でA1相当を超える水準を定める分野は、その水準)
  • 講習の時間が100時間以上であること
  • 登録日本語教員1人に対して、同時に講習を受講する生徒が20人以下であること
  • 対面以外で実施する場合は、インターネット環境を整え、オンラインで同時かつ双方向に行われるものであること

録画教材やeラーニングを見せるだけの形は、「同時かつ双方向」には当たりません。一方で、同時双方向であれば、地方の団体でも都市部の登録日本語教員による講習を受けられることになります。ここで一次資料の範囲では確定できない点が2つあります。1つは、認定日本語教育機関の就労課程にある「遠隔授業4分の3まで」という上限が、この登録日本語教員ルートにも準用されるかどうかです。もう1つは、全面オンライン(対面時間ゼロ)で100時間を完結できるかどうかです。運用要領・Q&Aに明記された要件は「同時かつ双方向」「20人以下」「100時間以上」のみで、割合規定そのものは見当たりませんが、準用の有無を明言した記載も確認できていないため、断定は避けます。実施を検討する際は、委託予定の登録日本語教員または教育機関に、この点を個別に確認することをおすすめします。

講習の内容を設計する参考資料として、出入国在留管理庁・文部科学省は令和7年度の「育成就労制度における日本語講習モデルカリキュラム開発等事業」で開発するモデルカリキュラムを、令和8年度中に公表する予定としています。2026年9月7日時点では未公表のため、公表後にあらためて内容を確認する必要があります。

経過措置はいつまでか

登録日本語教員による経過措置ルートの期間は、規則附則第3条では「当分の間」とだけ定められています。出入国在留管理庁は、講習提供状況一覧のページで次のように説明しています。

「育成就労法施行後5年間を目途とする当面の間の経過措置として、認定日本語教育機関による『就労のための課程』でなくとも、登録日本語教員による講習で、教師1人に対して生徒が20人以下であることなどの一定の要件を満たしたものでも認める」(出入国在留管理庁)

この「5年間を目途」は、法令が定めた確定的な期限ではなく、運用上の見込みとして読むのが正確です。混同されやすい点として、2029年3月31日という日付があります。これは、日本語教育機関認定法に基づき、現職の日本語教員が登録日本語教員の資格を取得するための別制度の経過措置期限であり、育成就労の入国後講習を登録日本語教員が代替実施できる期限とは条文上別のものです。両者を同じものとして扱わないよう注意してください。

実務上は、経過措置がいつ終わるかを正確に予測することはできません。委託先を選ぶ段階では、当面は登録日本語教員による講習で運用しつつ、認定日本語教育機関の就労課程が近隣に開設された場合には切り替えられるよう、委託契約の期間や解約条件を柔軟にしておくといった一般的な備えが考えられます。

A1相当講習の実施方法と講師の当てを整理する

公表資料に基づく制度要件と準備論点の一般的な整理(記入見本(一般例)、講習実施計画の整理シート、証跡のチェックリスト)を1冊にまとめた無料資料をご用意しています。講師や教育機関の探し方、経過措置の要件を自団体の計画に落とし込む論点を30分で整理したい方は、日本語講習の相談もご利用ください。

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誰が実施し、何を委託できるか

監理型育成就労では、入国後講習の実施主体は監理支援機関です(規則第13条第2項第7号イ)。規則は「自ら又は他の適切な者に委託して」実施すると定めており、運用要領はその範囲を具体的に整理しています。監理支援機関が自ら行うべき業務は入国前講習及び入国後講習の企画立案、委託することが可能な業務は監理支援機関が企画した講習の講師の業務です(運用要領5-86〜87頁)。つまり、A1相当講習を認定日本語教育機関や登録日本語教員に委託することはできますが、講習の目標・内容・実施者を決め、実施状況を記録し、計画認定申請書に書く責任は監理支援機関に残ります。

講師が未定のまま申請できるかは一次資料に明記がなく、機構への確認が必要です。日本語講習の講師・教育機関の探し方、一覧表の読み方は「日本語講習の講師が見つからないとき」に、申請書第3面の記入方法は「育成就労計画認定申請書の日本語教育欄の書き方」にまとめています。

費用の負担経路

A1相当講習を含む入国後講習の費用は、監理型では監理支援機関が支出し、監理支援費の一項目(講習費)として受入企業に実費で請求できます。規則が定める講習費の範囲は、監理支援機関が支出する施設使用料、講師及び通訳人への謝金、教材費、育成就労外国人に支給する手当、講習を委託して行う場合の委託費などです(育成就労法第28条第2項、施行規則第56条)。監理支援機関が上乗せして利益を得ることはできません。監理支援費全体の構成については「監理支援費とは」で解説しています。

講習の後|1年以内の中間的評価

A1相当講習を受けさせた後も、義務は終わりません。育成就労実施者は、育成就労の開始から1年以内に、育成就労の目標に対応するA1相当水準の試験を受験させる中間的評価の仕組みがあります(運用要領4-54〜55頁)。これは「受験させる義務」であって「合格させる義務」ではなく、既に合格している場合は受験させる必要はありません。合格しなくても直ちに違反にはなりませんが、目標を達成したことにはなりません。

講習の実施状況は、入国後講習実施記録(参考様式第4-7号)として残します。この様式は外国人育成就労機構の様式一覧にWordファイルとして公表されていますが、記載例(記入例)は2026年9月7日時点で掲載されていません。受講証明書とあわせて保管しておく必要があります(運用要領4-43頁)。

分野の例外|介護など上乗せ基準がある分野

ここまでの「A1相当・100時間」は一般則です。分野別運用方針で上乗せ基準を定める分野では、目標水準と時間数が変わります。たとえば介護分野は、「介護分野における育成就労制度の運用に関する方針」第三1に基づき「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上を用い、入国後講習の日本語科目は240時間以上とされています(上乗せ基準告示 第1条第3号イ)。適用条件・例外は同方針で確認してください。自団体の受入れ分野に上乗せ基準があるかは「育成就労 分野別運用要領とは」と「介護分野の上乗せ基準」で確認してください。

よくある質問

A1相当講習は認定日本語教育機関でなければ受けられませんか?

いいえ。基本形は文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」ですが、当分の間の経過措置として、登録日本語教員による講習でも一定の要件を満たせば認められます(規則附則第3条第1項)。要件は、目標がA1相当であること、講習時間が100時間以上であること、教員1人に対して同時に受講する生徒が20人以下であること、対面以外はオンラインで同時かつ双方向に行うことの4点です。

登録日本語教員による講習はオンラインだけで完結できますか?

対面以外で実施する場合は、インターネット環境を整え、オンラインで同時かつ双方向に行われるものであることが条件です。録画教材やeラーニングの視聴だけでは要件を満たしません。オンラインの扱いは3区分です。(a)認定日本語教育機関の「就労のための課程」は通常、同時双方向の遠隔授業を総授業時数の4分の3までとされています(認定基準第25条第2項・第3項)。(b)ただし、同基準第23条に基づく「特別の日本語教育課程」として実施する場合は、講習の全部を対面以外の方法によって受講することも可能です(運用要領4-42頁)。(c)登録日本語教員による経過措置ルートは、対面以外で実施する場合はオンラインで同時かつ双方向に行うことが要件で、4分の3のような割合の上限は一次資料に明記がなく、(a)の基準が準用されるかも確認できていません。

登録日本語教員による講習の経過措置はいつまで使えますか?

規則附則第3条は「当分の間」とのみ定めており、法令上の具体的な終了期日はありません。出入国在留管理庁は講習提供状況一覧のページで「育成就労法施行後5年間を目途とする当面の間の経過措置」と説明していますが、これは運用上の見込みであり、法令が定めた期限ではありません。なお2029年3月31日という日付が語られることがありますが、これは現職の日本語教員が登録日本語教員の資格を取得するための別制度の経過措置期限であり、この講習の経過措置の期限ではありません。

A1相当講習は何時間、いつまでに受けさせる必要がありますか?

就労開始前までに、A1相当の日本語能力の試験に合格するか、認定日本語教育機関の「就労のための課程」でA1相当講習を100時間以上受講するかのいずれかです(育成就労制度Q&A Q56・Q64)。未合格のまま入国する場合は、入国後講習の中でA1相当講習(100時間以上)を受けることになります。

講習の講師選びや実施記録は誰の責任になりますか?

監理型育成就労では、入国前講習・入国後講習の企画立案は監理支援機関が自ら行うべき業務とされ、委託できるのは監理支援機関が企画した講習の講師の業務に限られます(運用要領5-86〜87頁)。実施状況は入国後講習実施記録(参考様式第4-7号)として残し、受講証明書とあわせて保管します。

公式出典と未確定事項

未確定・個別確認が必要なもの

  • 登録日本語教員による経過措置ルートに、認定日本語教育機関の遠隔授業の上限(4分の3)が準用されるかは一次資料に明記なし
  • 登録日本語教員による経過措置ルートで、全面オンライン(対面時間ゼロ)で100時間を完結できるかは断定できない
  • 経過措置の終了時期(法令上は「当分の間」。入管庁は「5年間を目途」と説明するが運用上の見込み)
  • 入国後講習実施記録(参考様式第4-7号)の記載例(様式原本は機構の様式一覧に公表済み。記載例は2026-09-07時点で未掲載)
  • 日本語講習モデルカリキュラム(令和8年度中に公表予定、2026-09-07時点で未公表)

この記事の確認情報

公開日:2026-09-07/最終事実確認日:2026-09-07/編集・事実確認:FRM Journal編集部

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FRM Journal 編集部
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