結論|「受けさせる義務」であって「合格させる義務」ではありません。ただし辞退は不利に扱われます
- 「育成就労の目標」となる技能試験は、3級の技能検定・これに相当する育成就労評価試験(専門級)・特定技能1号評価試験のいずれかから、分野別運用方針が定める組み合わせに応じて設定されます。1年目試験は、この目標に対応する基礎級相当の水準です(運用要領4-53〜4-54頁)。
- 受験させる義務であって合格させる義務ではありません。一次資料が明記する再受験義務の不存在は、本人意向による転籍の要件との関係における「1年目技能試験」に一度不合格となった場合についての記述であり(同4-55頁)、目標試験や日本語試験にまで一律に適用されるものではありません。本人が受験を辞退した場合や申込みの時期を逸した場合は「やむを得ない事由」に含まれず、優良要件の合格率計算では不利に扱われます(同4-123頁)。
- 受験費用(手数料・交通費・材料費)は育成就労実施者又は監理支援機関が負担し、本人負担は不可。受験に要する時間は労働時間に該当し、欠勤・有給消化での対応は認められません(同4-55〜4-56頁)。
- JFT-Basicは2026年8月から、A1=145〜174点/A2.1=175〜199点/A2.2(旧A2)=200〜250点の3段階判定です(国際交流基金公式)。
根拠:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」(4-53〜4-56頁、4-122〜4-124頁)、法務省「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」(令和7年3月11日)、国際交流基金「JFT-Basicのお知らせ」(最終確認日:2026-09-18)
育成就労外国人が受ける試験は、技能実習と同じ「試験を受けさせて評価する」枠組みを引き継ぎつつ、名称と要件が変わります。監理支援機関・受入企業の担当者が最初につまずきやすいのは、この試験を「合格させなければならないもの」と誤解し、進捗管理の焦点が個人の合否そのものに寄ってしまうことです。実際に運用要領が求めているのは、受験の機会を確実に提供することと、その記録を残すことです。本記事は、育成就労の技能試験(初級・専門級)と日本語試験(A1・A2)の受験義務、費用負担、記録の残し方、JFT-Basicのスコア運用を一次資料に沿って整理し、進捗管理で見えなくなりやすい3つの項目をまとめます。日本語要件全体の3つの時点(入国前・入国後・就労開始後)は「育成就労の日本語要件」、入国前のJFT-Basic合格の考え方は「JFT-Basic入国前合格」で先にご確認ください。
育成就労の技能試験・日本語試験の全体像
「育成就労の目標」は、分野別運用方針で定められた技能試験と日本語能力の試験のいずれにも合格することであり、育成就労実施者は3年間の育成就労終了までに、この目標となるいずれの試験も受験させる義務があります(既に合格している場合は受験させる必要はありません、運用要領4-53頁)。技能試験については、①修得させる技能に係る3級の技能検定、②これに相当する育成就労評価試験、③修得させる技能に係る特定技能1号評価試験のいずれかが、分野別運用方針が定める組み合わせに応じて目標として設定されます(同頁)。
| 時点 | 技能試験 | 日本語試験 |
|---|---|---|
| 1年目試験(育成就労開始から1年以内) | 技能検定基礎級等(目標に対応する水準) | A1相当 |
| 目標試験(3年間の育成就労終了までに) | 3級技能検定、相当する育成就労評価試験(専門級)、指定された特定技能1号評価試験等(分野別運用方針の定めによる) | A2相当(分野によりA2.2相当以上等の上乗せあり) |
技能実習の基礎級→随時3級→随時2級という3段階に対し、育成就労評価試験は初級・専門級の2段階のみと定義されています(同4-53〜4-54頁)。現行の技能実習にあった随時2級に相当する第3段階への言及は運用要領・試験の方針のいずれにも見当たりません。技能実習の技能検定への不合格が育成就労の優良要件に与える影響、および技能実習実績の算入可否は「技能実習生が技能検定に不合格になったら」で解説しています。日本語試験を「いつ・何回」受けさせるかという受験義務の細部(1年以内のA1受験、A2目標、申込の主体)は「育成就労の日本語試験はいつ・何回受けさせるか」で個別に整理しています。本記事は、その受験義務を前提に、進捗を管理する側の視点で「何を見ていれば手戻りが起きないか」を扱います。
受けさせる義務であって、合格させる義務ではない
育成就労実施者に課されているのは「受験させる義務」であり、「合格させる義務」ではありません。運用要領は次のように整理しています。
「育成就労外国人が本人意向の転籍をする際の要件として...これら要件を充足するため、育成就労実施者において、1年目技能試験に一度不合格となった場合に、2回目を受験させる義務はありません。」(育成就労制度運用要領4-55頁)
この記述は、本人意向による転籍の要件との関係において、「1年目技能試験に一度不合格となった場合」について、2回目の受験義務がないことを明記したものです。目標試験(3年目試験)や日本語試験にまで一律に「再受験義務がない」と拡張して読むことはできません。とはいえ、運用要領は全体として「受験させる義務」を課すにとどまり、「合格させる義務」を課してはいません。目標試験(3年目試験)に合格しないまま育成就労を終了した場合、特定技能1号への移行を希望するなら、その制度独自の要件(日本語能力試験N4相当以上またはJFT-Basic A2相当以上、分野別の技能評価試験)を別途満たす必要があります。育成就労の受験義務そのものと、特定技能1号への移行要件は別の制度であるという整理を、受入企業への説明で混同しないようにしてください。
一方で、受験を本人が辞退した場合は不利に扱われます。優良な育成就労実施者の合格率計算にあたって、「やむを得ない事由」の定義は次のとおりです。
「『やむを得ない事由により受験できなかった』とは、本来なら受験の対象となるものの、受験申請を行ったにもかかわらず、育成就労実施者の責めによらない理由により受験できなかった場合などをいいます。育成就労外国人自身が受験を辞退した場合や、受験の申込みの時期を逸し、受験できなかった場合は含みません。」(同4-123頁)
つまり、本人が「受けたくない」と辞退した場合や、申込みの時期を逃した場合は、合格率計算の分母からは除外されず、そのまま残ります。「受けさせれば良い」ではなく「辞退させない・申込み時期を逃させない」運用こそが実務の核心です。
費用は誰が払うか・受験時間は労働時間
費用と時間の扱いは、運用要領で明確に定められています。
- 費用:受験手数料、交通費、材料費等については、育成就労外国人に負担させることとせず、育成就労実施者又は監理支援機関が負担しなければなりません(同4-56頁)。
- 時間:育成就労の開始から1年目までに受験が必要な試験や、目標として定めた試験を受験させることは、育成就労法令上で定められた育成就労実施者の義務であり、受験に要する時間は労働時間に該当します。受験日を欠勤扱いとすることや、有給休暇を取得させた上で受験させることは認められません(同頁)。
申込みの主体についても整理されています。機構が行う受験手続支援(試験実施機関への取次ぎ・合否結果の迅速な把握)は、監理支援機関(単独型育成就労の場合は育成就労実施者)からの申請に基づき、あらかじめ本人の同意を得たうえで行われます(同4-55〜4-56頁)。
公表資料に基づく制度要件と準備論点の一般的な整理(受講・受験管理台帳、証跡チェックリストなど)を1冊にまとめた無料資料をご用意しています。公表資料の一般的な読み方や、社内で集めておく記録項目の整理を30分でご希望の方は、日本語講習の相談もご利用ください。個別案件への当てはめ、書類の作成・添削は行いません。
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記録|受験票の写しの保管と、合格証は本人へ
受験させたことの証明は、次のように整理されています。
「前記のとおり、育成就労実施者は育成就労外国人に1年目試験及び育成就労の目標となる試験を受験させる義務がありますが、当該試験を受験させたことの証明資料(受験票の写し等)については、育成就労計画の履行状況に関する管理簿(参考様式第4-2号)とともに育成就労実施者において保管するようにしてください。」(同4-56頁)
一方、合格を証明する書面の扱いは逆です。
「育成就労外国人が技能試験を受験後に、監理支援機関(単独型育成就労の場合は育成就労実施者)が試験実施機関から当該外国人の技能検定等又は特定技能1号評価試験の合格を証明する書面を受領した場合は、監理支援機関や育成就労実施者が保管することなく、速やかに当該外国人本人へ手交してください。」(同頁)
つまり、「受けた記録」は組織側が管理簿とともに保管し、「合格した証明」は本人に速やかに渡して組織側は保管しないという非対称なルールです。この違いを取り違えると、監査対応や優良要件の申請作業で混乱が生じます。
JFT-Basicのスコア帯運用
日本語試験の進捗を「合格・不合格」の二値だけで見ていると、次の水準までの距離が見えなくなります。JFT-Basicは2026年8月の改定で、点数の意味がより明確になりました。
| 判定 | スコア帯 | 目安 |
|---|---|---|
| 判定なし | 10〜144点 | — |
| A1 | 145〜174点 | 1年目試験の水準に対応 |
| A2.1 | 175〜199点 | — |
| A2.2(旧A2) | 200〜250点 | 目標試験(3年目)の水準に対応 |
JFT-BasicはCBT方式で随時実施され、結果はテスト当日に画面表示され、受験後5営業日以内に正式な判定結果通知書が発行されます(国際交流基金公式)。合否だけでなく、この点数の推移を個人ごとに記録しておくと、「あと何点でA2.1に届くか」「前回より点数が下がっていないか」を早い段階で把握できます。JFT-Basicの受験料・国内会場数は、公式ページの範囲では確認できていません(未確定)。
技能試験・日本語試験とも、試験実施側に求められる実施頻度の基本があります。日本語試験は、就労開始前は年2回以上、1年経過時までは2か月に1回以上、3年経過時までは6か月に1回以上の頻度で受験機会を確保することを基本とし、技能評価試験(1年目試験)は監理支援機関又は育成就労実施者の要請に応じ随時実施することを基本としています(「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」-11頁、【2026年3月時点】)。これは試験実施側が確保すべき機会の頻度であり、育成就労外国人一人ひとりに同じ頻度での受験を義務付けるものではありません。個人ごとの受験義務は、1年目試験・目標試験(3年目試験)という2つの期限で管理します。
見えなくなる3つの項目
個人別の進捗を「合格したか・していないか」だけで見ていると、次の3つが見えなくなります。この3つを揃えて管理することが、育成就労の試験進捗管理の核心です。
| 管理項目 | 見るべきもの | 見えなくなると起きること |
|---|---|---|
| ①受験の期限 | 1年目試験・目標試験(3年目)という個人ごとの期限(試験実施側の実施頻度の基本〈2か月に1回・6か月に1回等〉を参考に、受験のタイミングを計画する) | 申込みの時期を逃し、「やむを得ない事由」に当たらない不利な扱いになる |
| ②到達の推移 | JFT-Basicのスコア帯、模試の結果の推移 | 合否だけを見ていると、「あと少しで届く人」と「まだ遠い人」の違いが把握できない |
| ③再受験と学習継続 | 初回不合格者のうち再受験した人の割合、学習支援の継続状況 | 本人が受験を辞退したり学習が止まったりしていることに気づけない |
③の再受験率は、優良な育成就労実施者の配点でも加点対象です(基礎級程度の技能試験の再受験率、100%または再受験の該当者がいない場合に加点)。日本語試験にも同種の考え方があてはまります。監理支援機関が自団体の受入企業に配れる形で、この3項目をまとめた記録シートを持っておくことをお勧めします。
この3項目は、氏名・入国日・受入分野といった基本情報と並べて、個人別に月次で更新する一覧にまとめておくと、担当者が交代しても引き継ぎやすくなります。育成就労計画の履行状況に関する管理簿(参考様式第4-2号)と突き合わせておけば、優良な育成就労実施者の申請時に必要な受験・合格の実績を、あらためて洗い出す手間も減らせます。監理団体・監理支援機関が複数の受入企業を横断して見る場合は、企業ごとの一覧を束ねるだけで、団体全体の傾向(受験期限が近い人数、A2.1到達者の割合など)も把握しやすくなります。
よくある質問
育成就労の技能試験・日本語試験は、合格しないとどうなりますか?
育成就労実施者が負うのは「受験させる義務」であり「合格させる義務」ではありません。一次資料が明記する再受験義務の不存在は、本人意向による転籍の要件との関係における「1年目技能試験」に一度不合格となった場合についての記述で(運用要領4-55頁)、目標試験や日本語試験にまで一律に適用されるものではありません。目標試験(3年目試験)に合格しないまま育成就労を終了した場合、特定技能1号への移行にはその制度独自の要件(日本語能力試験N4相当以上またはJFT-Basic A2相当以上、分野別の技能評価試験)を別途満たす必要があります。個別の在留手続きの判断は行政書士等にご確認ください。
1年目試験と3年目試験(目標試験)は何が違いますか?
1年目試験は、育成就労開始から1年以内に受験させる中間的評価で、目標に設定した技能試験・日本語試験のうち基礎級相当・A1相当の水準です。目標試験(3年目試験)は、3年間の育成就労終了までに受験させる、目標技能(3級技能検定・相当する育成就労評価試験・特定技能1号評価試験等、分野別運用方針の定めによる)・A2相当の最終水準です(運用要領4-53〜4-55頁)。どちらも受験義務であって合格義務ではありません。
受験を本人が辞退した場合、どう扱われますか?
優良な育成就労実施者の合格率計算では不利に扱われます。運用要領は「育成就労外国人自身が受験を辞退した場合や、受験の申込みの時期を逸し、受験できなかった場合」は『やむを得ない事由』に含まれないと明記しています(運用要領4-123頁)。つまり、辞退した本人は合格率計算の分母に残ったままになります。
受験費用と受験時間はどう扱われますか?
受験手数料・交通費・材料費は、育成就労外国人に負担させることとせず、育成就労実施者又は監理支援機関が負担しなければなりません。受験に要する時間は労働時間に該当し、受験日を欠勤扱いとすることや有給休暇を取得させた上で受験させることは認められません(運用要領4-55〜4-56頁)。
JFT-Basicのスコアはどう見ればよいですか?
JFT-Basicは2026年8月から、10〜250点のスコアでA1=145〜174点、A2.1=175〜199点、A2.2(旧A2)=200〜250点の3段階判定に変更されています。145点未満は判定なしとなります(国際交流基金公式)。合否だけでなく、点数の推移を見ることで、次の水準までの距離や学習の停滞を早く把握できます。
受験の記録は誰がどう保管しますか?
受験させたことの証明資料(受験票の写し等)は、育成就労計画の履行状況に関する管理簿(参考様式第4-2号)とともに、育成就労実施者が保管します。一方、合格を証明する書面を試験実施機関から受領した場合は、監理支援機関や育成就労実施者が保管することなく、速やかに本人へ手交します(運用要領4-55〜4-56頁)。
見込み点を試算する → 受験者数・合格者数を入力すると、優良な育成就労実施者の項目Ⅰ(日本語28点・技能22点)の見込み点をその場で計算できる無料ツールです(登録不要)。
公式出典と未確定事項
- 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」(4-53〜4-57頁、4-116〜4-128頁)
- 法務省「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」(令和7年3月11日、第4、-9-〜-11-頁)
- 国際交流基金「JFT-Basicのお知らせ」「JFT-Basicとは」
未確定・個別確認が必要なもの
- JFT-Basicの受験料・国内会場数は、公式ページの範囲では確認できていません
- 随時2級相当が育成就労で不要になることの一次資料上の明示的な記載は確認できていません。「育成就労評価試験は初級・専門級の2段階のみと定義されている」という事実にとどめています
- JLPTの申込期間・試験日は年により変わるため、最新の日程は日本語能力試験公式サイトでご確認ください
- 分野別運用方針が定める上乗せ基準(A2相当を超える水準等)は、受入分野ごとに個別確認が必要です
この記事の確認情報
公開日:2026-09-18/最終事実確認日:2026-09-18/編集・事実確認:FRM Journal編集部
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