結論|A2目標講習(100時間以上)の機会を提供する義務は、監理支援機関ではなく育成就労実施者(受入企業)が負います

  • 育成就労実施者(受入企業)には、育成就労の目標である日本語能力の試験を受験させるまでの間に、育成就労外国人がA2目標講習(100時間以上)を受講する機会を提供する義務があります(運用要領4-49頁)。3年間の育成就労期間中にこの機会を与えなかった場合は、育成就労計画の認定の取消し等の対象になります(同4-50頁)。
  • A2相当の日本語能力の試験に既に合格している場合、または入国前講習・入国後講習で既に所定の講習を終えている場合は、A2目標講習を受講する機会を提供する義務はありません(同4-49頁)。
  • 就労期間中にA2目標講習を行う場合は、目標とする日本語能力に係る講習履修状況等申告書(参考様式第1-35号)で計画認定申請時に申告します(規則第13条第2項第8号関係、同4-50頁)。
  • 受講時間を労働時間とすることは義務ではありません(同4-49頁)。費用については、運用要領は育成就労実施者に負担を求める一方、育成就労制度Q&A(Q66)は「育成就労実施者又は監理支援機関」において措置を取るとしています。監理支援費として実費請求できるかは、一次資料の範囲では確定できていません(照会中)。

根拠:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」(4-49〜4-50頁)、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(Q66)、外国人育成就労機構「参考様式第1-35号 目標とする日本語能力に係る講習履修状況等申告書」(最終確認日:2026-09-08)

育成就労制度(2027-04-01施行)では、育成就労外国人は3年間の育成就労期間中に、特定技能1号水準(日本語教育の参照枠でA2相当)の日本語能力の修得が求められます。このために設けられているのが、A2相当を目標とする講習(以下「A2目標講習」)を100時間以上受講できる機会を提供する仕組みです。入国後講習で受けるA1相当講習(詳しくは「入国後A1相当講習100時間の要件」)とは、実施のタイミングも義務の主体も異なります。本記事は、監理支援機関の担当者と、受入企業へ説明する立場の方を対象に、誰が義務を負うか、免除される場合、申告の方法(参考様式第1-35号)、労働時間としての扱い、費用の負担経路を、出入国在留管理庁の一次資料に沿って整理します。日本語要件全体の3段階(入国前・入国後・就労開始後3年間)は「育成就労の日本語要件」で先にご確認ください。

誰の義務か|監理支援機関のA1相当講習とは主体が違います

まず整理しておきたいのは、A1相当講習とA2目標講習では、機会を提供する義務を負う主体が異なるという点です。A1相当講習は入国後講習の一部として監理支援機関(監理型の場合)が実施主体になりますが、A2目標講習は育成就労実施者(受入企業)が機会を提供する義務を負います(運用要領4-49頁)。この違いを最初に押さえておかないと、受入企業への説明のときに主語が入れ替わってしまいます。

項目A1相当講習(入国後講習)A2目標講習(配属後)
機会を提供する義務の主体監理支援機関(監理型の実施主体)育成就労実施者(受入企業)
実施の時期入国後、就労開始前育成就労期間中(3年間)
講習時間100時間以上100時間以上
講習実施者(基本形)認定日本語教育機関「就労のための課程」認定日本語教育機関「就労のための課程」
経過措置登録日本語教員による講習(教員1人に20人以下、オンラインは同時双方向)登録日本語教員による講習(同左の4要件)
できないこと試験合格・講習修了なしに就労開始させること受験させる義務はあるが、合格させる義務ではない。労働時間扱いは義務ではない
申告・記録省令様式第1号第3面、入国後講習実施記録(参考様式第4-6号・第4-7号)省令様式第1号第3面、または参考様式第1-35号(就労期間中に行う場合)

A1相当講習を含む申請書の記載欄については「育成就労計画認定申請書の日本語教育欄の書き方」で解説しています。

要件|A2相当・100時間以上・教員1人20人以下・オンラインは同時双方向

A2目標講習は、文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」が基本形です。ただし、当分の間の経過措置として、文部科学大臣の登録を受けた登録日本語教員の資格を持つ者による講習でも認められます。その場合は、次の4要件を満たす必要があります(附則規則第3条第2項、運用要領4-49頁)。

  • 講習の目標がA2相当であること(分野別運用方針でA2相当を超える水準を定める分野の場合は、その水準)
  • 講習の時間が100時間以上であること
  • 登録日本語教員1人に対して同時に講習を受講する生徒が20人以下であること
  • 対面以外で授業を実施する場合は、インターネット環境を整えて、オンラインで同時にかつ双方向に行われるものであること

この4要件は、A1相当講習の経過措置ルートとまったく同じ枠組みです。実施にあたっては、「令和7年度育成就労制度における日本語講習モデルカリキュラム開発事業」により開発される日本語講習モデルカリキュラム(令和8年度中に公表予定)も参照することとされていますが、2026年9月8日時点では未公表です。

提供義務がない場合

次の2つのいずれかに該当する場合は、育成就労実施者はA2目標講習を受講する機会を提供する義務を負いません(運用要領4-49頁)。

「A2相当の日本語能力の試験に合格している場合はA2目標講習を受講する機会を提供する義務はありません。また、入国前講習又は入国後講習において、既に所定の講習を終えている場合にも、A2目標講習を受講する機会を提供する義務はありません。」(出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領」4-49頁)

つまり、①A2相当の試験に既に合格している場合と、②入国前講習または入国後講習の中で既に100時間以上のA2目標講習を終えている場合の2通りです。次のセクションで扱う参考様式第1-35号の選択肢は、この2通りに加えて「これから就労期間中に受講する」場合を合わせた3択構成になっています。

いつ・どこで行い、どう申告するか

A2目標講習の受講予定は、実施のタイミングによって申告先の様式が変わります(運用要領4-50頁)。

  • 入国前講習または入国後講習で行う場合は、省令様式第1号第3面等の入国前・入国後講習実施(予定)表を用います。
  • 就労期間中に行う場合は、目標とする日本語能力に係る講習履修状況等申告書(参考様式第1-35号)(規則第13条第2項第8号関係)を用いて、育成就労計画の認定申請時に申告します。

参考様式第1-35号の1欄は、次の3つの選択肢のうち該当するものを1つ選ぶ構成です(機構公表の様式原本から抜粋)。

「1 目標とする日本語能力に係る講習の履修状況等について
□① A2相当の日本語能力の試験に合格している
□② 入国後講習の修了の日まで(入国前を含む)に、A2相当の目標講習を100時間以上履修する
□③ 入国後講習修了後、育成就労の終了の日までにA2相当の目標講習を100時間以上履修する」

③を選択した場合は、2欄の「A2相当の目標講習の実施予定」に、育成就労の年目ごとの実施計画を記入します。表の列見出しは、年目/講習実施者の氏名又は名称/実施場所(施設名・所在地等)/講習実施者の資格・免許/実施期間/実施時間数で、①年目から⑥年目までの行と合計時間の行があります。認定日本語教育機関または登録日本語教員により実施される場合は、「講習実施者の資格・免許」欄にその旨を、「実施時間数」欄に講習の目標(水準)を記載することとされています。様式の注意書きによると、日常的に数時間ずつ学習を進めるなど全ての日程を記載することが難しい場合は、通算期間における年次計画等の履修スケジュールを記載する扱いも認められています。

A2目標講習の受講が完了した場合は、その旨の資料(認定日本語教育機関からの受講証明書等)を、育成就労計画の履行状況に係る管理簿(参考様式第4-2号)とともに、育成就労実施者において保管してください(運用要領4-49頁)。

なお、認定申請時に申告した受講予定日等と実際の受講日等が異なって実施された場合、その旨を機構に報告する必要はありません。ただし、次の点には注意が必要です。

「3年間の育成就労期間中に育成就労外国人に必要なA2目標講習の受講機会を与えなかった場合には、育成就労計画の認定の取消し等の対象となります。」(同運用要領4-50頁)

予定日のずれは許容される一方、機会そのものを与えないことは許容されません。運用要領は「講じなければならない措置」の例として、講習に係る事務手続や講習費用等の負担(講習主体の選定・契約・費用負担)、講習受講のための環境整備(オンライン環境の用意等)、講習受講を妨害しないことを挙げています。単に業務に従事させ、試験の受験機会を与えるだけでは足りないとされている点にも注意してください。

A2目標講習の説明資料と実施計画を整理する

公表資料に基づく制度要件と準備論点の一般的な整理(参考様式第1-35号の記入見本(一般例)、講習実施計画の整理シート、受入企業向けA2目標講習 説明1枚)を1冊にまとめた無料資料をご用意しています。公表資料の一般的な読み方や制度要件、社内で集めておく情報の整理を30分でご希望の方は、日本語講習の相談もご利用ください。個別案件への当てはめ、書類の作成・添削は行いません。

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労働時間として扱うか

A2目標講習の受講時間を労働時間とすることは義務ではなく、必ずしも就労時間内に行わなければならないものでもありません(運用要領4-49頁)。この点はA1相当講習と同様の扱いです。

ただし、これは「労働時間として扱ってはいけない」という意味でも、「必ず労働時間になる」という意味でもありません。受講時間が当然に労働時間となるわけではありませんが、参加を義務付け、使用者の指揮命令下で受講させるなど業務として行う場合は労働時間となり、賃金の支払の対象になります。運用要領も、雇用契約に基づく就労開始後に育成就労実施者が講習を実施する場合について、「育成就労外国人の参加を強制して業務として行う場合は、労働基準法上の労働時間として賃金の支払対象となる」としています(運用要領4-47頁)。個別の判断は、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

費用は誰が負担するか

費用の負担についても、A1相当講習とは前提が異なる可能性がある点に注意が必要です。運用要領は、育成就労実施者に次のことを求めています。

「育成就労実施者には、育成就労の目標である日本語能力の試験を受験させるまでの間に、育成就労外国人がA2目標講習を受講する機会を提供する義務があります。育成就労実施者には、育成就労外国人の希望に応じ、講習を受講させる場合の講習費用を負担し、かつ、適切に講習を受講する環境を整えることが求められます。」(運用要領4-49頁)

一方、出入国在留管理庁の育成就労制度Q&A(Q66)は、日本語能力向上のために必要な措置について「育成就労実施者又は監理支援機関において、費用の負担を含め」対応いただく、という書き方をしています。運用要領上、育成就労実施者には講習費用の負担が求められます。監理支援機関が支払主体となる場合の最終的な負担関係や、監理支援費として請求できる範囲は、一次資料の範囲では確定できておらず、照会中です。

ここで、A1相当講習と混同しやすい論点があります。A1相当講習を含む入国後講習の費用は、監理型では監理支援機関が支出し、監理支援費の一項目(講習費)として受入企業に実費で請求できます(育成就労法第28条第2項、施行規則第56条)。この講習費は、施設使用料、講師及び通訳人への謝金、教材費、育成就労外国人に支給する手当、講習を委託して行う場合の委託費などが例示されています。

これに対して、A2目標講習は多くの場合、入国後講習が終わった後の就労期間中に行われるものです。この就労期間中のA2目標講習の費用を、施行規則第56条が定める監理支援費の講習費として実費請求できるかどうかは、条文の例示に明記がなく、一次資料の範囲では確定できていません。監理支援機関がこの費用を監理支援費として計上できるかどうかは、現時点では照会中の論点として扱っています。監理支援費全体の構成は「監理支援費とは」で、受入企業側の費用全体の見取り図は「育成就労の受入費用」でそれぞれ解説しています。

受入企業へどう説明するか

監理支援機関の実務としては、受入企業への配属前後のタイミングで、少なくとも次の項目を説明しておくことが、後日の行き違いを防ぐうえで有用と考えられます。

  • 義務の主体:機会を提供する義務を負うのは受入企業自身であること
  • 時間:A2目標講習は100時間以上であること
  • 時期:育成就労期間3年間のいつまでに行うか(申告した予定と実際の受講日にずれがあっても機構への報告は不要だが、機会そのものは必ず与える必要があること)
  • 労働時間の扱い:受講時間が当然に労働時間となるわけではないが、参加を義務付けて業務として行う場合は労働時間となり、賃金支払いの対象になること。個別の判断は社会保険労務士等への確認が必要なこと
  • 費用:誰が講習費用を負担するか、監理支援機関との契約でどう定めるか
  • 免除される場合:A2相当の試験に合格している場合、または入国前・入国後講習で既に終えている場合は改めての機会提供は不要であること
  • 記録:受講状況をどの様式(省令様式第1号第3面または参考様式第1-35号)で申告・記録するか。受講完了後は、受講証明書等を育成就労計画の履行状況に係る管理簿(参考様式第4-2号)とともに保管すること

これらの説明を1枚にまとめた資料として、後述する無料の日本語講習キットには、受入企業向けA2目標講習の説明資料を収録しています。

分野の例外|介護分野はA2.2相当以上

ここまでの「A2相当・100時間以上」は一般則です。分野別運用方針で上乗せ基準を定める分野では、目標水準が変わります。たとえば介護分野は、「介護分野における育成就労制度の運用に関する方針」第三1に基づき、日本語教育の参照枠のA2.2相当以上を用いるとされています。適用条件・例外は同方針で確認してください。自団体の受入れ分野に上乗せ基準があるかは「介護分野の上乗せ基準」で確認してください。

よくある質問

誰がA2目標講習の機会を提供する義務を負いますか?

育成就労実施者(受入企業)です。監理支援機関が実施するA1相当講習(入国後講習)とは義務の主体が異なります。育成就労の目標である日本語能力の試験を受験させるまでの間に、A2目標講習を受講する機会を提供する義務があります(運用要領4-49頁)。3年間の育成就労期間中に機会を与えなかった場合は、育成就労計画の認定の取消し等の対象になります(同4-50頁)。

A2目標講習の機会を提供しなくてよい場合はありますか?

あります。A2相当の日本語能力の試験に既に合格している場合、また入国前講習又は入国後講習において既に所定の講習を終えている場合は、A2目標講習を受講する機会を提供する義務はありません(運用要領4-49頁)。

A2目標講習はどのように申告しますか?

入国前講習又は入国後講習で行う場合は、省令様式第1号第3面等の入国前・入国後講習実施(予定)表を用います。就労期間中に行う場合は、目標とする日本語能力に係る講習履修状況等申告書(参考様式第1-35号)を用いて、育成就労計画の認定申請時に申告します(運用要領4-50頁)。同号の1欄は、(1)A2相当の日本語能力の試験に合格している、(2)入国後講習の修了の日まで(入国前を含む)にA2相当の目標講習を100時間以上履修する、(3)入国後講習修了後、育成就労の終了の日までにA2相当の目標講習を100時間以上履修する、の3択から該当するものを1つ選択します。

A2目標講習の受講時間は労働時間として扱う必要がありますか?

義務ではありません。受講時間を労働時間とすることは必須ではなく、必ずしも就労時間内に行う必要もありません(運用要領4-49頁)。ただし、受講時間が当然に労働時間となるわけではなく、参加を義務付け、使用者の指揮命令下で受講させるなど業務として行う場合は労働時間となり、賃金の支払の対象になります(運用要領4-47頁)。個別の判断は社会保険労務士等にご確認ください。

A2目標講習の費用は誰が負担しますか?

制度上、機会を提供する義務を負うのは育成就労実施者(受入企業)です。運用要領は、育成就労外国人の希望に応じて講習を受講させる場合の費用を負担し、受講環境を整えることを育成就労実施者に求めています(4-49頁)。育成就労制度Q&Aは、費用の負担を含む必要な措置を「育成就労実施者又は監理支援機関」において取るとしています(Q&A Q66)が、監理支援機関が支払主体となる場合の最終的な負担関係や、監理支援費として請求できる範囲は、一次資料の範囲では確定できておらず照会中です。A2目標講習の費用を監理支援費の一項目として受入企業に実費請求できるかは、施行規則第56条が定める講習費の例示に明記がなく、一次資料の範囲では確定できていません(照会中)。

公式出典と未確定事項

  • 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」(附則規則第3条第2項、4-49〜4-50頁)
  • 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(Q66)
  • 外国人育成就労機構「目標とする日本語能力に係る講習履修状況等申告書(参考様式第1-35号)」(規則第13条第2項第8号関係)
  • 育成就労法第28条第2項、育成就労法施行規則第56条(監理支援費・講習費の範囲)
  • 法務省・厚生労働省「介護分野における育成就労制度の運用に関する方針」(第三1)

未確定・個別確認が必要なもの

  • A2目標講習の費用を、施行規則第56条が定める監理支援費の講習費として受入企業に実費請求できるかは、条文の例示に明記なく照会中
  • 登録日本語教員による経過措置ルートに、認定日本語教育機関の遠隔授業の上限(4分の3)が準用されるかは一次資料に明記なし(A1相当講習と同様の未確定論点)
  • 就労時間内に受講させる場合の賃金・割増賃金の考え方は労務判断のため、本記事では扱わない(社会保険労務士等に確認が必要)
  • 日本語講習モデルカリキュラム(令和8年度中に公表予定、2026-09-08時点で未公表)

この記事の確認情報

公開日:2026-09-08/最終事実確認日:2026-09-08/編集・事実確認:FRM Journal編集部

本記事は制度の一般的な説明であり、報酬を得て業として官公署に提出する書類を作成すること等には行政書士法その他の法令による制限があります。当編集部(当社)は個別の申請書の作成・添削・記載内容の判断、労務・税務に関する個別の判断を行いません。個別案件については行政書士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。内容の誤りや更新漏れは編集部へ訂正をご連絡ください

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