結論|人数が少なくても講習の時間数は変わりません。合同クラスの企画立案・実施責任は団体ごとに残ります
- 育成就労計画の認定申請時点でA1相当試験の合格を証明できない場合、入国後日本語講習(A1相当)は、入国者が3名でも5名でも100時間以上の実施が必要で、規則上、人数による時間数の短縮はありません(育成就労法施行規則第13条第2項第7号、経過措置は同規則附則第3条第1項)。合格を証明できる場合は、個別に必要な時間数です。
- 「何人以上でないと開講できない」という下限は、一次資料に明記がありません。一方で上限は明確で、登録日本語教員による経過措置ルートでは教員1人に対して同時に受講する生徒が20人以下であることが要件です。
- 各機関が個別に企画し、同一の講師へそれぞれ委託するという構成は考えられますが、複数機関の受講者を1つのクラスにまとめる場合の可否と手続は一次資料に明記がなく、事前に機構へ確認する必要があります。講習の企画立案・実施責任・記録の作成は、各監理支援機関が自団体の受講者について自ら負うという整理になっています(育成就労制度運用要領5-86〜87頁)。
根拠:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」4-43〜44頁・5-86〜87頁、文部科学省「認定日本語教育機関活用促進事業」広報資料(2026年3月公表)(最終確認日:2026-09-08)
この記事の時点情報
制度の根拠:育成就労制度運用要領(令和8年8月版)時点/文部科学省委託事業の実例:2026年3月公表の広報資料に基づく/本記事の最終事実確認:2026年9月8日/次回確認予定:2026年10月1日。
本記事は制度の一般的な説明を目的としたものであり、個別の申請書の作成・添削・記載内容の判断は行いません。「日本語講習の受け皿は都道府県でどれだけ違うか」では、都道府県によって「提供可能」な教育機関の数に大きな差があり、受け皿が乏しい地域があることを確認しました。育成就労の受入人数が3名や5名という少人数の場合、そもそも自団体単独で1クラスを組むこと自体が難しいという別の壁に当たります。本記事では、その少人数の壁を、複数の監理支援機関で合同クラスを組むという方法でどう乗り越えるか、制度上動かせない条件と役割分担を中心に整理します。
少人数だと何が起きるか
育成就労の入国後講習における日本語科目は、「入国後A1相当講習100時間の要件」で解説した通り、育成就労計画の認定申請時点でA1相当試験の合格を証明できない場合、A1相当講習として100時間以上の実施が必要です(認定日本語教育機関の就労のための課程が基本、登録日本語教員による経過措置ルートの場合も同じく100時間以上)。この時間数は受講者の人数によって短縮される規定ではないため、入国者が3名でも5名でも、確保すべき時間数は変わりません。合格を証明できる場合は、日本語科目は個別に必要な時間数となり、必ずしも100時間ではありません。講師を確保し、時間割を組み、教材を用意する手間は、人数が少ないからといって比例して軽くなるわけではないという点が、少人数受入れの監理支援機関が直面する最初の壁です。
ここで気になるのが「何人以上でないと開講できない」という下限の有無です。今回確認した育成就労法施行規則および運用要領の条文には、開講できる人数の下限を定めた規定は見当たりませんでした。制度上、少人数だからという理由だけで開講そのものができないと断定する根拠は、一次資料には明記がありません。断定はできませんが、実務上は委託先の教育機関や登録日本語教員に、少人数でも受託可能かを個別に確認する必要があります。一方、上限は明確に定められています。登録日本語教員による経過措置ルートでは、教員1人に対して同時に受講する生徒が20人以下であることが要件です(育成就労法施行規則附則第3条第1項)。
制度上の枠:合同にするときに動かせない条件
複数の監理支援機関で合同クラスを組む場合も、次の条件は動かせません。
- 登録日本語教員による経過措置ルートでは、講師1人に対して同時に受講する生徒が20人以下であること(育成就労法施行規則附則第3条第1項)。
- 登録日本語教員による経過措置ルートで対面以外の方法で実施する場合は、インターネット環境を整えて、オンラインで同時かつ双方向に行われるものであること(同条項)。
- 録画配信や、受講者が好きな時間に視聴するような一方向のeラーニングは、この講習時間には算入できません。要件はあくまで「同時かつ双方向」であることです。
- 講習の企画立案は監理支援機関が自ら行い、委託できるのは監理支援機関が企画した講習の講師の業務に限られます。育成就労制度運用要領は、この点を次のように整理しています。「入国前講習及び入国後講習については、規則上、『他の適切な者に委託』して実施することが可能であるとしています(規則第13条第2項第7号)。監理支援機関が自ら行うべき業務は入国前講習及び入国後講習の企画立案、委託することが可能な業務は監理支援機関が企画した入国前講習及び入国後講習の講師の業務(適切な者が講師となっている場合に限る。)」(育成就労制度運用要領5-86〜87頁)。
つまり、各機関が個別に講習を企画し、同一の講師へそれぞれ委託するという構成は考えられますが、複数機関の受講者を1つのクラスにまとめて合同実施する場合の可否と手続は一次資料に明記がなく、「講習の企画立案」自体を他団体や委託先にまるごと任せることはできません。合同実施を検討する場合は、事前に機構へ確認してください。
複数機関で1クラスを組むときの役割分担
合同クラスを組む場合、何が団体ごとで、何が共同でよいのかを事前に整理しておくと、後の申請書作成や監査対応で混乱が起きにくくなります。
| 項目 | 誰が行うか |
|---|---|
| 到達目標の設定 | 各監理支援機関が自団体の受講者について決定 |
| 教材と講師の選定 | 各監理支援機関が自団体の受講者について決定(合同クラスでは事前にすり合わせが必要) |
| 講習計画の承認・変更・拒否 | 各監理支援機関がそれぞれ判断 |
| 実施責任 | 各監理支援機関が自団体の受講者について負う |
| 講師の業務の委託 | 各機関が個別に委託(同一講師への委託は可能。複数機関の受講者を1クラスにまとめる合同実施の可否・手続は一次資料に明記がなく要確認) |
| 記録・証跡の作成と保管 | 受講者が所属する監理支援機関ごとに作成・保管 |
| 計画認定申請書 第3面の記載 | 各育成就労実施者(受入企業)が、監理支援機関の指導の下で作成 |
記録・証跡を団体ごとに分ける理由は、入国後講習実施記録に用いる参考様式第4-7号が、監理支援機関の名称と監理支援責任者の氏名を記載する様式になっているためです。様式の詳細は「日本語講習の記録と証跡」で解説しています。同じ教室で同じ講師の授業を受けていても、記録自体は受講者の所属団体ごとに作成し、保管するという整理になります。計画認定申請書の第3面についても、各育成就労実施者(受入企業)が、監理支援機関の指導の下で自らの申請書にそれぞれの実施方法を記載します。
合同クラスを組む前に揃えるもの
合同クラスの候補が複数の監理支援機関の間で見つかった場合、次の項目をすり合わせておく必要があります。
- 母語:講義の理解度に直結するため、揃うほど運営しやすくなります。
- 日本語の水準:目標とする水準(基本はA1相当。分野別運用方針でA1相当を超える水準が定められている育成就労産業分野の場合は、その水準)を揃えます。
- 入国の時期と講習の開始日:入国が数週間ずれるだけでも、講習の開始日を合わせにくくなります。
- 曜日と時間帯:受入企業の勤務体系によって、講習に充てられる曜日・時間帯は団体ごとに異なります。
- 分野の上乗せ基準の有無:介護など、分野別に日本語の上乗せ基準が定められている場合は、その基準がない分野の受講者と同じクラスにまとめられないことがあります。
これらがすべて揃わない場合は、開始月を近い時期にまとめて誤差を吸収する、科目ごとに分けて実施する(日本語科目だけ合同にし、生活知識や法的保護の科目は団体ごとに行う等)、「入国前講習を入国後講習に算入する」制度を使って進度をあらかじめ揃えておく、といった代替策を検討することになります。
公的事業に見る合同の実例
複数の監理団体が関わった合同スキームの実例として、文部科学省「認定日本語教育機関活用促進事業」(2026年3月公表)の報告が参考になります。以下はいずれも第三者の公的事業の事例であり、当社が関与したものではありません。
岡山県のケースでは、認定日本語教育機関(岡山外語学院)と岡山県中小企業団体中央会が連携し、9つの監理団体及び6つの企業の協力を得て、A1・A2レベル100時間のオンラインカリキュラムを新規開発しました。愛知県のケースでは、中間支援団体(一般社団法人国際パートナーシップセンター)が仲介役となり、名古屋国際日本語学校・上山学院日本語学校が教育を提供する形で、形式・頻度の異なる3コース(オンライン月1回・個別対応型、対面週1回・キャリア教育重視、対面週1回)を用意しています。
同事業の広報資料は、現場の声として次のように記しています。「監理団体・企業は価格・導入負担に非常に敏感なため、説明会やアンケートで『最低限の義務対応』『自前指導希望』『トライアル導入』等、ニーズに応じた柔軟なメニュー設計が肝要」。合同クラスを検討する際も、参加する監理支援機関ごとに求める水準や負担感が異なることを前提に、複数の選択肢を用意しておく姿勢が実務上は現実的だといえます。
合同にしても解決しないこと
合同クラスは少人数の壁を乗り越える有力な選択肢ですが、次の点は合同にしても解決しません。
- 講習の企画立案と実施の責任は、各監理支援機関に残ります。
- 証跡は、受講者が所属する監理支援機関ごとに作成・保管する必要があります。
- 分野別の上乗せ基準がある場合、基準の異なる受講者を同じクラスにまとめられないことがあります。
- 受講者の入国が遅れた場合の扱い(開始日をずらすか、途中から合流させるか)を、参加団体間で事前に決めておく必要があります。
進め方の順序
少人数の入国が見込まれる場合、次の順序で検討を進めることをおすすめします。
- 自団体の受入人数・母語・入国予定週を書き出す。
- 近隣の監理支援機関や、地域の中間支援団体(商工会議所・事業協同組合等)に相談する。
- 候補となる講師または教育機関に、同時20人以下での実施可否と、オンラインで実施する場合の条件を確認する。
- 講習計画を各監理支援機関でそれぞれ承認する。
- 記録の様式(参考様式第4-6号・第4-7号等)を団体間で揃えておく。
合同クラスの候補登録、母語・水準・入国時期のすり合わせ方など、公表資料に基づく準備論点を30分で整理する相談枠をご用意しています。金銭のやり取りは発生せず、取消もいつでも可能です。あわせて、申請書第3面の記入見本(一般例)、講習実施計画の整理シート、証跡のチェックリストをまとめた無料資料もご利用いただけます。
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よくある質問
入国者が3名や5名しかいなくても、入国後の日本語講習を実施しなければなりませんか?
育成就労計画の認定申請時点でA1相当試験の合格を証明できない場合は、実施する必要があります。この場合、育成就労の入国後講習における日本語科目は、A1相当講習として100時間以上(登録日本語教員による経過措置ルートの場合も100時間以上)の実施が求められており、規則上、受講者の人数によって必要な時間数が短縮される規定はありません。3名でも5名でも、確保すべき時間数と講師の手間は基本的に変わらないという前提で準備を進める必要があります。合格を証明できる場合は、日本語科目は個別に必要な時間数となります。
「何人以上でないと開講できない」という人数の下限はありますか?
今回確認した規則・運用要領の条文には、開講できる人数の下限を定めた規定は見当たりませんでした。一次資料に明記がないため、断定はできません。一方で上限は明確に定められており、登録日本語教員による経過措置ルートでは、教員1人に対して同時に受講する生徒が20人以下であることが要件です(育成就労法施行規則附則第3条第1項)。人数が少ない場合の開講可否は、委託先の機関や登録日本語教員に個別に確認することをおすすめします。
複数の監理支援機関で合同クラスを組む場合、講習の企画や実施の責任は誰が負いますか?
各監理支援機関が、自団体の受講者について自ら負います。育成就労制度運用要領は、入国前講習及び入国後講習について「他の適切な者に委託」して実施することが可能だとした上で、監理支援機関が自ら行うべき業務は講習の企画立案であり、委託することが可能な業務は監理支援機関が企画した講習の講師の業務に限られると整理しています。各機関が個別に企画し、同一の講師へそれぞれ委託するという構成は考えられますが、複数機関の受講者を1つのクラスにまとめる場合の可否と手続は一次資料に明記がないため、事前に機構へ確認してください。目標設定や講習計画の承認、実施状況の記録は各監理支援機関が自団体分について行い、育成就労計画認定申請書第3面への記載は、各育成就労実施者(受入企業)が、監理支援機関の指導の下で自らの申請書に記載します。
合同クラスを組むために、監理支援機関同士で何を揃える必要がありますか?
少なくとも、受講者の母語、目標とする日本語の水準(A1相当が基本で、分野によって上乗せ基準がある場合はその有無)、入国の時期と講習の開始日、曜日・時間帯の5点をすり合わせる必要があります。これらが揃わない場合は、開始月を近い時期にまとめる、科目ごとに分けて実施する、入国前講習で進度をそろえておくといった代替策を検討することになります。
複数の監理団体が合同で日本語講習を実施した実例はありますか?
第三者の公的事業の実例として、文部科学省「認定日本語教育機関活用促進事業」(2026年3月公表)に、複数の監理団体が関わった合同スキームの報告があります。岡山県のケースでは認定日本語教育機関と岡山県中小企業団体中央会が連携し、9つの監理団体及び6つの企業の協力を得てA1・A2レベル100時間のオンラインカリキュラムを開発しました。愛知県のケースでは中間支援団体が仲介し、形式・頻度の異なる3コースを用意しています。いずれも当社が関与した事例ではありません。
公式出典と未確定事項
- 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」(4-43〜44頁、5-86〜87頁)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
- 文部科学省「認定日本語教育機関活用促進事業 広報資料」(2026年3月公表)
未確定・個別確認が必要なもの
- 複数の監理支援機関の受講者を1クラスにまとめる場合の手続の定め(一次資料に明記なし)
- 入国後講習の開講人数の下限の有無(一次資料に明記なし)
- 監理支援機関をまたぐ合同クラスにおける記録の具体的な書き方・様式の運用
この記事の確認情報
公開日:2026-09-08/最終事実確認日:2026-09-08/編集・事実確認:FRM Journal編集部
本記事は制度の一般的な説明であり、報酬を得て業として官公署に提出する書類を作成すること等には行政書士法その他の法令による制限があります。当編集部(当社)は個別の申請書の作成・添削・記載内容の判断を行いません。個別案件については行政書士・弁護士等の専門家にご相談ください。内容の誤りや更新漏れは編集部へ訂正をご連絡ください。
少人数でのクラスの組み方を相談する
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