結論|漁業の1年目は「漁業・養殖業の育成就労評価試験(初級)」、終了時は現行の「1号漁業特定技能評価試験」です。船上の教育と安全、派遣形態の役割分担を先に決めます
- 漁業の業務区分は「漁業」と「養殖業」の2つで、主たる技能は区分ごとに1つです。分野別運用方針の別表3は、1年目を漁業(養殖業)育成就労評価試験(初級)、終了時を1号漁業特定技能評価試験(漁業・養殖業)と定めています。専門級ではなく、特定技能1号の試験がそのまま育成就労の終了時の目標です。
- 漁業は労働者派遣等育成就労産業分野(農業・漁業の2分野)で、船員派遣の形態も含まれます。派遣形態では派遣元も派遣先も育成就労実施者で、監理支援機関は同一です。漁業では、派遣元は自治体や漁業協同組合等が関与するものに限られ、監理支援機関にも漁業独自の条件があります。
- 教育は、船上の安全衛生を含む技能と日本語を、1年目試験までに組み立てます。日本語は開始前A1相当、転籍時A2.1相当、終了時A2.2相当で、転籍制限期間は1年です。
- 受験させることは実施者の義務、合格させることは義務ではありません。費用は実施者または監理支援機関が負担し、配分は規定されていません。初級の実施機関・受験料・出題内容・開始日は公表待ちで、本文2の囲みにまとめています。
根拠:出入国在留管理庁ほか「漁業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(別紙14)」第三1・3・4、別表3、「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」第4章第5・第15(最終確認日:2026-10-01)
漁業は、育成就労の分野別運用方針で令和9年度からの2年間に2,600人の受入れ見込数が置かれた小規模な分野です(別紙14 第一2(4)ウ)。小規模な分野ほど、漁協や自治体、地域の事業者が関わる仕組みが細かく決まっています。受入企業(漁業者・養殖業者)の責任者と監理支援機関の担当者は、「漁業と養殖業のどちらの区分か」「直接雇用か派遣形態か」「船上での教育と安全を誰が担うか」を、受入れ前に決めておく必要があります。
本記事は、受験者本人の対策ではなく、受けさせる側(受入企業・派遣元・派遣先・監理支援機関)の準備と教育に絞って整理します。分野別運用方針の全体像は育成就労の対象分野一覧、17分野の試験の比較は育成就労の技能試験 17分野一覧で扱っています。水産加工は漁業ではなく飲食料品製造業分野で、飲食料品製造業分野の育成就労の技能試験で整理しています。
漁業で受けさせる試験(1年目・終了時・転籍時)
別紙14の第三1・3が定める、時点ごとの水準は次のとおりです。就労開始前に技能の試験は求められず、日本語だけが対象です。
| 時点 | 技能 | 日本語 |
|---|---|---|
| 就労開始前 | 要求なし | A1相当以上の試験に合格、または認定日本語教育機関等でA1相当の講習を受講 |
| 開始後1年経過時まで | 別表3のc欄(漁業・養殖業育成就労評価試験(初級)) | A1相当以上(合格済みなら再受験は不要) |
| 本人意向の転籍時 | 別表3のc欄に合格していること | A2.1相当以上 |
| 育成就労の終了まで | 別表3のd欄(1号漁業特定技能評価試験) | A2.2相当以上 |
漁業の転籍制限期間は1年です(別紙14 第三3(2))。転籍の仕組み全体は育成就労の転籍ルールで整理しています。
業務区分ごとの試験(別表3)
| 業務区分 | 主たる技能 | 1年目の試験 | 終了時の試験 |
|---|---|---|---|
| 漁業 | 漁船漁業における、漁具の作成・補修、漁具・漁労機器の操作、漁獲物の処理、安全衛生 | 漁業育成就労評価試験(初級) | 1号漁業特定技能評価試験(漁業) |
| 養殖業 | 養殖業における、養殖水産物の取扱い、漁具の作成・補修・管理、漁具の整理・整頓、安全衛生 | 養殖業育成就労評価試験(初級) | 1号漁業特定技能評価試験(養殖業) |
出典:別紙14 別表3(令和8年1月23日閣議決定のPDFを原文で確認。確認日:2026-10-01)
終了時の目標が特定技能1号評価試験になる場合について、運用要領は2つの点を示しています(運用要領4-55〜4-57頁)。
- 1年目に初級を受験させる:育成就労の目標に特定技能1号評価試験を設定する場合は、開始後1年経過時までに、その試験範囲に対応する育成就労評価試験(初級)を受験させる必要があります。
- 1年目の実技の合否が影響しうる:運用要領は、技能試験として特定技能1号評価試験を設定している分野・業務区分では、その試験の受験資格として、1年目試験のうち実技試験の合格を求めているとしています。漁業の終了時の目標はこの形に当たるため、1年目の実技試験は、終了時の受験にも関わる可能性があります(編集部の整理。漁業での具体的な運用は実施要領の公表後に確認が必要です)。
終了時の目標である1号漁業特定技能評価試験はそのまま特定技能1号の技能試験なので、これに合格し、日本語A2.2相当の試験にも合格していれば、特定技能1号の要件を満たします(別紙14 第二1(1))。
試験の中身(公表されている範囲だけ)
1年目の初級(全分野共通の作り)
- 水準:初級は技能検定基礎級と同等の水準を設定する方針です。
- 科目:学科試験と実技試験です。
- 方式:学科はCBTまたはペーパーテスト。実技は製作等作業試験が原則ですが、困難な場合は判断等試験・計画立案等作業試験・実地試験も可能とされています。漁業・養殖業でどの方式になるかは公表待ちです。
- 言語:日本語で実施する場合は、原則としてひらがなの分かち書きにヘボン式ローマ字を併記します。
- 場所:国内で、監理支援機関または育成就労実施者の要請に応じた適切な場所で実施します。
出典:法務省・厚生労働省「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」第2-2、第4(令和7年3月11日。確認日:2026-10-01)
終了時の1号漁業特定技能評価試験(現行の試験)
大日本水産会が実施する試験で、令和6年度の報告書では、国内でCBT方式・判断等試験(日本語)、受験料8,000円、水準は「漁業及び養殖業職種の技能実習評価試験(専門級)と同程度」とされています。合格基準は、筆記試験と実技試験の合計得点が、漁業で6割5分以上、養殖業で7割4分以上です。令和6年度の1号試験の合格率は約60%と評価されています。大日本水産会は、2026年8月から試験名称を「技能測定試験」から「特定技能評価試験」に変更したと案内しており、出入国在留管理庁の実施要領の表題は旧名称のままです。育成就労の終了時にこの試験を受けさせる場合の受験料や日程の扱いは、今回確認できていません。
公表状況(2026-10-01時点)|漁業・養殖業の育成就労評価試験(初級)は、実施要領が未公表です
- 公表待ち:漁業・養殖業の育成就労評価試験(初級)の試験実施要領、実施機関、受験料、出題内容、実技の形式、会場、開始日。出入国在留管理庁の「試験関係」ページ(2026-10-01確認)で漁業の行に掲載されているのは、1号・2号の漁業・養殖業の特定技能の試験の実施要領のみで、育成就労評価試験のものはありません。
- 実施機関の見込み:現行の特定技能試験の実施主体は大日本水産会ですが、育成就労評価試験(初級)も同じ機関が担うかは確認できていません。
- 分野別運用要領:外国人技能実習機構「分野別の情報」ページの漁業の行には、2026-10-01時点で運用要領のリンクがなく、分野別運用方針と上乗せ基準告示(農林水産省告示第575号)だけが掲載されています。漁業は、監理支援機関の許可基準にも上乗せ基準がある5分野の1つで、告示と分野別運用要領の両方の確認を求められています。
- 今回確認できなかった項目:漁業育成就労協議会への加入手続き・構成員の資格、初級の合格率の見込み、終了時の1号試験を育成就労の目標として受験する場合の申込み・日程・受験資格の運用。
公表され次第、この囲みを差し替えます。確認先:17分野一覧/出入国在留管理庁「試験関係」/外国人技能実習機構「分野別の情報」/水産庁「在留資格「育成就労」による新たな外国人材の受入れ」/大日本水産会「漁業特定技能評価試験について」
監理支援機関・派遣元・派遣先の役割(労働者派遣の形態)
漁業は、対象魚種や漁法によって繁忙期・閑散期が異なり、事業者の多くが零細で半島や離島に所在することから、直接雇用に加えて、地域内で労働力を融通する労働者派遣の形態が認められています(別紙14 第三4(2))。船員派遣の形態を含みます。基本ルールは次のとおりです。
- 3者の位置づけ:派遣元事業主等(労働者派遣事業者・船員派遣事業者)は監理支援機関ではなく育成就労実施者で、派遣先も育成就労実施者です。監理支援機関は両者で同一でなければならず、派遣形態は監理型のみ(単独型は不可)です(運用要領4-144〜4-145頁)。
- 就労先の数と期間:就労先は2者以上3者までで、1つの派遣先だけは認められません。3年間の計画を派遣元と派遣先が共同で作成して共同で実施するため、同じ組合せで3年間続けます。派遣先を変える場合は新しい計画の認定が必要で、業務区分(漁業または養殖業)は派遣元・派遣先とも同一です(同4-149、4-151頁)。
- 漁業独自の派遣元の条件:派遣元は、地方公共団体、漁業協同組合、漁業生産組合、漁業協同組合連合会その他の漁業に関連する業務を行っている者が関与するものに限られます(別紙14 第三4(3)ア③、農林水産省告示第3条)。
- 船員派遣の特則:船員派遣の形態では、派遣先責任者講習・派遣元責任者講習といった概念がなく、休業手当についても規定する必要がありません(運用要領4-151、4-155頁)。労働者派遣の形態では、派遣先責任者(または育成就労責任者)の講習受講と、派遣先の責めによる休業時の手当が必要です。
- 派遣先の義務:漁業育成就労協議会とその構成員に対する必要な協力(別紙14 第三4(3)ウ)。
漁業の監理支援機関には、次のような独自の条件があります(別紙14 第三4(3)イ、農林水産省告示第5〜8条)。
- 通信手段:育成就労外国人が乗り組む漁船と監理支援機関との間で、無線その他の通信手段を確保します。
- 漁業区分の監理支援機関:漁業協同組合、または船員職業安定法に基づく船員職業紹介事業の許可を受けた法人です。
- 実施状況の確認:漁業区分では、育成就労指導員から各漁船の実施状況について毎日1回以上(船上で行わない日を除く)無線等で報告を受けて記録し、外国人本人から毎月1回以上(船上で行わない月を除く)文書の提出を受けます。
- 体制:漁業区分の監理支援の実務に従事する常勤の役員・職員は、監理支援する実施者の数を16で除した数と、監理支援する外国人の数を32で除した数のいずれも超える必要があります。
- 協議会:漁業育成就労協議会の構成員になり、協議が調った措置(労働時間・休日・休憩等の待遇を含む)を講じます。
試験と教育に絡む役割を、運用要領の範囲で整理すると次のとおりです。「規定なし」と書いた行は、運用要領に配分が書かれていない項目で、計画と派遣契約で決める事項です。
| 項目 | 派遣元(雇用主・実施者) | 派遣先(実施者) | 監理支援機関 |
|---|---|---|---|
| 育成就労計画 | 共同で作成。派遣元が計画本体をまとめる | 共同で作成。派遣先ごとの別紙を作成 | 計画の作成を指導 |
| 入国後講習 | — | — | 実施者(または委託先)。座学で行い、作業の模擬実践は不可 |
| 船上・現場の体制 | 事業所に応じた育成就労責任者・指導員 | 育成就労指導員・生活相談員の基準に適合 | 無線等の通信手段の確保、毎日・毎月の実施状況の確認(漁業区分) |
| 1年目試験・目標試験を受けさせる義務 | 実施者の義務(派遣元と派遣先の分担は規定なし) | 実施者の義務(同左) | 受験手続支援を機構へ申請(本人の同意が前提) |
| 受験費用・移動費 | 実施者または監理支援機関が負担(配分は規定なし。事前に調整) | 同左 | 同左 |
| 受験日の勤務 | 労働時間として扱う。欠勤・有給にできない | 操業や出港の予定に関わるため、受験日をシフトに組む(編集部の整理) | 日程と会場の調整 |
出典:運用要領 第2章第1(4-40〜4-41頁)、第5(4-55〜4-58頁)、第15(4-144〜4-158頁)、別紙14 第三4(3)、農林水産省告示第575号(確認日:2026-10-01)
派遣料金は、派遣元が負担する賃金・社会保険料のほか事務費等に限るのが相当とされ、外国人のマージン率が他の派遣労働者の平均を上回る場合は、監理支援費等の内訳など合理的な理由が求められます(運用要領4-153頁)。
受入企業(直接雇用の実施者・派遣先)がやること
- 漁業か養殖業かを決める:誰を、どちらの業務区分・主たる技能で受け入れるかを決め、1年目と終了時の試験を一覧にします。
- 船に乗せる人数の上限を守る:漁業区分では、1隻に乗り組む育成就労外国人の数は、乗り組む自社の乗組員(役員・職員。育成就労外国人を除く)の数を超えず、かつ原則6人まで(規則の定める基準に適合する場合は12人)です(別紙14 第三4(3)エ、告示第1条)。
- 協議会の措置と調査に協力する:実施者は、漁業育成就労協議会で協議が調った措置を講じ、協議会や農林水産大臣の調査・指導に必要な協力をします。労働時間・休日・休憩その他の待遇は、協議会で協議が調った事項に基づいて措置します(告示第1〜2条)。
- 評価試験の準備物は、実施要領の公表後に確定する:実技の課題や使う漁具・設備が未公表のため、試験のための設備の購入や改修は公表前に決めません。船上の作業のうち、練習に使える作業の洗い出しまでにとどめます。
- 受験日の予定を組む:受験に要する時間は労働時間であり、欠勤扱いにしたり、有給休暇を取得させて受験させたりすることは認められません。漁期や出港の予定と受験日を、計画の段階で調整します。
- 受験の証明を保管する:受験票の写し等を「育成就労計画の履行状況に関する管理簿」(参考様式第4-2号)とともに保管します。合格証明書面は保管せず、速やかに本人に渡します。
- 不合格のときの方針を決めておく:1年目試験に不合格でも2回目を受験させる義務はありませんが、再受験の機会提供は優良要件の加点項目です。誰の費用で、いつ再受験させるかを先に決めます。
監理支援機関がやること
- 受験手続支援の申請:外国人育成就労機構(2027-04-01に外国人技能実習機構から改称)が、監理支援機関の申請に基づき、試験実施機関への取次ぎや合否結果の把握を行います。あらかじめ本人の同意が必要です。ただし、機構の受験支援は技能検定または育成就労評価試験が対象で、特定技能1号評価試験は除かれます(運用要領7-4頁)。終了時の目標が1号試験になる漁業では、その申込み方法を別途確認します。
- 申込時期を守る:1年経過時までの試験は、認定を受けたら速やかに、遅くとも育成就労開始から6か月後までに申し込みます。終了時までの試験は、開始から1年後を目処に、遅くとも終了の12か月前までです。終了時が特定技能1号評価試験の場合、機構の受験手続支援の対象になるかは運用要領に明記がないため、試験実施機関の案内で申込方法を確認します。
- 船上の実施状況を確認する:上記の毎日・毎月の確認と記録を、監理事業を行う事務所に備え置きます。試験の準備の進み具合も、同じ確認のなかで把握します(編集部の整理)。
- 派遣元・派遣先の両方を監理する:派遣形態では、派遣元と派遣先の双方に対して監査等の監理を行います。派遣契約と計画の整合(休業手当、移動・転居費用の負担、マージン率の説明)も確認します。
- 受入企業ごとの区分表を持つ:進捗の持ち方は技能試験・日本語試験の進捗管理で整理しています。
- 優良な監理支援機関の評価:技能・日本語の修得実績は規則の評価項目に挙げられていますが、配点・基準は運用要領で未公表です。
技能の教育の進め方(1年目試験まで)
合格させる義務はなくても、1年目試験の合格率には減点ラインがあります。合格率を上げる教育を、時期の順に組みます。以下のうち、入国後講習・体制・教材は公的資料に基づく内容、練習の組み方は編集部の整理(一般的な手法)です。
- 入国後講習で土台をつくる(入国直後):日本語、生活一般の知識、法的保護科目(8時間以上)、技能の修得に資する知識の4科目で、業務に従事する前に座学で行います。模擬的な作業の実践やヘルメット着脱・避難訓練は入国後講習として認められないため、船上の安全指導は就労開始後の現場で行います。漁業の入国後講習に、農業のような上乗せの講習要件は、別紙14と告示では確認できませんでした。
- 船上・現場の作業指導(OJT)を主たる技能に結びつける:漁業は漁具の作成・補修、漁具・漁労機器の操作、漁獲物の処理、養殖業は養殖水産物の取扱い、漁具の作成・補修・管理、整理・整頓が主たる技能で、いずれも安全衛生が含まれます。作業名ごとに「誰が、いつ、どの船・施設で教えるか」を一覧にします。漁期や漁法で経験できる作業が偏る場合は、派遣先の組合せや月ごとの配分で、1年間に一連の作業を経験できるようにします。
- 学科は、ひらがな分かち書きの形で慣れておく:初級を日本語で実施する場合は、平仮名の分かち書き+ヘボン式ローマ字併記が原則です。作業や安全の用語を同じ形で見せられる教材にしておくと、受験時の読み取りの負担が減ります(編集部の整理)。
- 公開されている教材を使う:大日本水産会が公開する学習用テキスト(1号特定技能評価試験用。漁業一般、漁業安全、網漁業、釣漁業、養殖業の一般・安全と専門。日本語・インドネシア語・英語等)、1号試験の出題例(サンプル問題)、「トラブル防止に向けた漁業分野における外国人材受入れマニュアル」(2025年3月)と別冊「漁業分野の受入れ事例集」(2026年2月)があります。ただし、これらは特定技能1号評価試験用で、1年目の初級の出題範囲との対応は公表されていません。大日本水産会は、過去問や問題集は作成・販売していないと明記しています。公式の初級用の教材・サンプル問題は公表待ちです。
- 練習の時間と節目をつくる:試験前に学科の学習と実技の復習の時間を、勤務のなかで確保します。月に1回など、作業の習熟を確認する節目を決めて記録しておくと、受験の時期の判断に使えます。学習時間を労働時間として扱うかどうかは、運用要領で今回確認できていないため、雇用条件で明確にしておきます。
- 安全衛生教育と資格・講習を並行させる:漁業分野の育成・キャリア形成プログラム(漁業育成就労協議会、2026-05-28)は、育成就労の期間に、安全衛生教育、安全衛生講習等のほか、普通自動車運転免許、デリックやフォークリフトの免許等の業務に必要な資格・講習を例に挙げています。受入れ予定の作業に必要なものだけを選びます。
日本語の教育
漁業の別紙14には、日本語について分野固有の上乗せ基準の記載は確認できず、共通の3時点(開始前A1相当、転籍時A2.1相当、終了時A2.2相当)が適用されます。漁業の育成・キャリア形成プログラムは、A1相当の試験の例としてJFT-Basic(A1)・JLPT N5、A2.2相当の例としてJFT-Basic(A2.2)・JLPT N4を示しています。
- 開始前〜入国後:A1相当の試験に合格していない場合、入国後講習の日本語科目で、認定日本語教育機関の「就労のための課程」による講習を100時間以上受講します(運用要領4-43〜4-44頁)。詳細はA1講習100時間の要件で整理しています。
- 1年目:1年目までにA1相当の試験を受けさせます(開始前に合格済みなら不要)。船上では、指示の聞き取りと安全に関わる言葉(危険の知らせ、体調の訴え、緊急時の連絡)を最優先にします。
- 転籍の要件:本人意向の転籍にはA2.1相当の合格が必要ですが、転籍制限期間までにA1を超える水準の日本語試験を受験させる義務はありません(運用要領4-56〜4-57頁)。漁業は転籍制限が1年のため、A2.1の学習をいつ始めるかを、受入れ前に決めておきます。
- 終了時:A2.2相当の日本語試験を目標として受験させる義務があります。終了時の技能試験(1号試験)は、日本語で実施される判断等試験(CBT)のため、作業の用語を読んで理解する力が合否に関わります(現行試験の実施方式から見た編集部の整理)。講習の義務と費用はA2目標講習の義務と費用、試験の頻度は育成就労の日本語試験はいつ・何回受けさせるかで整理しています。
現場での教え方:無線や船上では聞き間違いが事故につながります。復唱の習慣、短い指示の型、漁具・設備・作業の名称を実物や写真と組み合わせて教える方法が、一般的に使われます(編集部の整理)。日本語が通じず現場が回らないときの対応は日本語ができない実習生への対応、日本語要件の全体像は育成就労の日本語要件にまとめています。
費用は誰が負担するか
運用要領は、各種試験に要する費用(受験手数料・交通費・材料費等)を、育成就労外国人に負担させず、育成就労実施者または監理支援機関が負担しなければならないとしています。実施者と監理支援機関のどちらが最終的に負担するか、派遣形態で派遣元と派遣先のどちらが負担するかの配分は、運用要領に書かれていません。契約や監理費の設計で決める事項で、監理費の内訳に算入できるかどうかも今回は確認できていません。
派遣形態では、就労先間の移動や転居の費用も、実施者または監理支援機関が負担します。負担者の指定はないため、あらかじめ実施者と監理支援機関の間で調整して明確にするよう、運用要領が求めています(4-156頁)。また、受験料や監理支援費などの負担を理由に報酬を低くすることは許されません(4-91頁)。初級の受験料は公表待ちのため、予算は「公表後に確定」として枠だけ確保します。終了時の1号試験は、現行の国内受験料が8,000円(令和6年度報告書)ですが、育成就労の目標として受験する場合の扱いは確認できていません。
優良要件の減点ラインとの関係
1年目試験(基礎級程度)の合格率が75%未満、終了時の目標技能試験の合格率が50%未満だと、優良な育成就労実施者の項目Ⅰで減点になります。配点の内訳、合格率の分母の数え方、技能実習の実績の持ち越しは、優良な育成就労実施者の配点(項目Ⅰ)で扱っています。派遣形態で、この合格率を派遣元と派遣先のどちらの実績として数えるかは、今回の確認範囲では確認できていません。
3年間の逆算スケジュール
育成就労の開始月を0か月として、運用要領の記載から組み立てた目安です。試験の開催日は未公表のため、「いつまでに申し込むか」を中心に置いています。
| 時期(開始月から) | 技能・教育 | 日本語 |
|---|---|---|
| 開始前 | 技能の試験は要求なし。区分表と派遣の組合せを決める。協議会の措置を確認する | A1相当の試験合格、または講習の受講 |
| 入国直後 | 入国後講習。座学のみ | 入国後講習の日本語科目 |
| 認定後〜6か月以内 | 1年目試験の受験支援を申し込む(遅くとも6か月後まで)。OJTと学科の学習 | 安全に関わる言葉を優先 |
| 12か月まで | 育成就労評価試験(初級)を受験。一連の作業を1年間で経験させる | A1相当(合格済みなら不要) |
| 約12か月 | 終了時試験の申込準備を始める目処。漁業は転籍制限期間が終わる時期 | A2.1(転籍の要件)の準備 |
| 24か月まで(終了の12か月前) | 終了時試験の申込期限の目処(機構の支援の対象かは運用要領に明記なし。試験実施機関の案内で確認)(1号試験の申込みは別途確認) | A2.2に向けた学習 |
| 36か月(終了)まで | 1号漁業特定技能評価試験を受験 | A2.2相当を受験 |
派遣形態では、同じ派遣元・派遣先で3年間続けるため、このスケジュールを3者で共有し、受験日と就労先の漁期・繁忙期が重ならないよう、計画の段階で調整しておきます。
受験時期の逆算表、実技の準備物の確認欄、費用負担の確認欄(実施者・監理支援機関・未定)、日本語の要件をまとめたチェックリストです。全分野共通の逆算表です。漁業の派遣形態での分担は本記事の表を使ってください。
よくある質問
漁業の育成就労では、終了時に専門級ではなく特定技能の試験を受けるのですか?
はい。分野別運用方針の別表3は、1年目を漁業・養殖業それぞれの育成就労評価試験(初級)、終了時を1号漁業特定技能評価試験(漁業・養殖業)と定めています。運用要領は、この形の場合に開始後1年経過時までに対応する初級を受験させる必要があるとしており、1年目の実技試験の合格が終了時の試験の受験資格に関わる可能性があります。具体的な運用は実施要領の公表後に確認が必要です。
漁業の労働者派遣で、派遣元になれるのはどのような者ですか?
派遣元となる労働者派遣事業者(船員派遣事業者を含む)は、地方公共団体、漁業協同組合、漁業生産組合、漁業協同組合連合会その他の漁業に関連する業務を行っている者が関与するものに限られます(分野別運用方針と農林水産省告示第3条)。派遣元も派遣先も育成就労実施者で、監理支援機関は両者で同一でなければなりません。
漁業の育成就労評価試験(初級)の実施機関や受験料は決まっていますか?
2026-10-01時点で、出入国在留管理庁の試験関係ページに掲載されている漁業の実施要領は特定技能の1号・2号試験のみで、初級の実施機関・受験料・出題内容・開始日は公表待ちです。現行の特定技能試験の実施主体は大日本水産会ですが、初級も同じ機関が担うかは確認できていません。終了時の1号試験は、現行の国内受験料が8,000円です(令和6年度報告書)。
漁業の監理支援機関には、どのような独自の条件がありますか?
漁船との無線等の通信手段の確保、育成就労指導員からの毎日の実施状況の報告と外国人本人からの毎月の文書の確認(漁業区分)、漁業育成就労協議会の構成員になること、監理支援の実務に従事する常勤職員数の基準などがあります。漁業区分の監理支援機関は、漁業協同組合または船員職業紹介事業の許可を受けた法人とされています。
更新履歴
更新履歴:2026-10-01 初版公開(別紙14 別表3、農林水産省告示第575号、運用要領、試験の方針、水産庁・大日本水産会の公表資料を原文で確認)。公表待ちの項目は、本文2の「公表状況」の囲みにまとめています。
出典一覧
- 出入国在留管理庁ほか「漁業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(別紙14)」(第一2(4)ウ、第二1・2、第三1〜4、別表1・3。確認日:2026-10-01)
- 農林水産省告示第575号「漁業分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準等」(令和8年4月15日。第1〜9条。確認日:2026-10-01)
- 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領(令和8年8月版)」(第2章第1、第4章第5・第10・第15、第7章第3節。頁は前後1頁の誤差があり得ます。確認日:2026-10-01)
- 法務省・厚生労働省「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」(令和7年3月11日。第3、第4。確認日:2026-10-01)
- 出入国在留管理庁「試験関係」、水産庁「令和6年度漁業技能測定試験実施状況報告書」(確認日:2026-10-01)
- 水産庁「在留資格「育成就労」による新たな外国人材の受入れ」(漁業分野 育成・キャリア形成プログラムを含む。確認日:2026-10-01)
- 外国人技能実習機構「分野別の情報」(分野別運用要領の掲載有無。確認日:2026-10-01)
- 大日本水産会「在留資格「特定技能」漁業特定技能評価試験について」(学習用テキスト、受入れマニュアル、事例集。確認日:2026-10-01)
この記事の確認情報
公開日:2026-10-01/最終事実確認日:2026-10-01/編集・事実確認:FRM Journal編集部
本記事は制度の一般的な説明であり、報酬を得て業として官公署に提出する書類を作成すること等には行政書士法その他の法令による制限があります。当編集部は個別の申請書の作成・添削・記載内容の判断を行いません。個別案件については行政書士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。内容の誤りや更新漏れは編集部へ訂正をご連絡ください。
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